旦過市場の再開発「時間がかかり過ぎている」

市場入り口
市場入り口

90万人割れ目前 20年続く人口減少

 北九州市の人口は、2015年に100万人を割って以降、減少が続いている。25年度の推計人口は90万494人とされ、90万人割れも目前に迫る。それでも、24年度は60年ぶりに492人の転入超過となったことに、市は人口増加対策の成果を謳う。産官学連携の取り組みや、『日本新三大夜景都市』2年連続1位認定をPRするなど、若者のシビックプライドの醸成に注力してきた、その一端がつながっていると考えたいところだろう。

 北九州の表玄関である小倉駅は、1891年の開業で今年135年目だ。山陽新幹線の停車駅であり、北九州モノレールの始発駅が直結する複合ターミナル駅として、24年度の乗員人員は1日約3万3,000人となっている。全国で規模の近い駅を見ると、JR岡山駅(乗員者人員約4万人/日)、金沢駅(乗員者人員約2.5万人/日)などが挙げられる。いずれの都市も再開発が進み、駅前エリアのデザインは、清潔感や開放感を押し出した近代的な設計だ。

 しかし小倉駅では、駅の表玄関にあたるエリアに、昔ながらの細い横道や古い商店街、風俗街などが集中し、どこか猥雑な空気を現在も醸し出している。この昭和レトロな味わいを好む層は少なくないが、地域開発と活性化へ向けて行政が掲げる「コクラ・クロサキ リビテーション」が進行するなか、市民は変化しようとしている小倉の姿に、どのような思いを抱いているのか。小倉駅エリア再開発の構造を見るうえで象徴的な存在となる旦過市場で、地域の人々の声を聞いてみた。

遅々として進まぬ旦過市場の再開発

旦過市場川側
旦過市場川側

    大正時代から続く旦過市場は古い木造建築物が密集する一帯であり、これまで3度の火事に見舞われている。一度目は1999年9月。駅側の入り口付近に位置するスーパー、丸和(現・ゆめマート)が火元となる火災が発生し、隣接する神嶽川沿いの12店舗(約1,250m2)が消失した。その後、2022年には4月と8月の2回にわたって火災が発生。市場の大部分が消失した。

火災消失地
火災消失地

    川の氾濫による浸水被害を繰り返した地域でもあることから、市場全体の整備を目指して、12年から行政と地元による話し合いがスタートしたものの、関係者数が多いことから計画が頓挫した経緯もある。24年に、旦過地区再整備事業における「旦過地区A建物」の2~4階の公募売却方針が固まったが、もともとの構造の複雑さに加えて建設コストの高騰が重なり、遅延している。

 老朽化もあり再整備は待ったなしの状況ではあるが、レトロな商店の風景を中心とした観光資源が失われることを惜しむ声もある。しかし、店舗を運営している人々に再整備の是非を問うと「今さらだ」と口をそろえた。では、古き良き雰囲気を残せば良いのか、との問いには「そんな簡単な問題ではない」と口を閉ざす人もいた。

 鮮魚店を営む50代の男性は、「時間がかかり過ぎている。整備後の商業施設で、自分たちが希望する敷地面積を十分に確保できるかどうかもはっきりしていない」と苦々しげな表情を見せた。「行政との話し合いのたびに内容が変わる」状況が続き、将来の見通しが立たないのだという。「迅速に工事を進めて、安心して商売ができるようにしてもらいたい」と語気を強める。

 惣菜店で働く40代の女性は、「昭和の雰囲気が失われるのはたしかに惜しい。地元に住む高齢の方々は、市場のある街並みを懐かしんで訪れているだろう」としながらも、「昔を知らない若い世代は、新しい姿になってもすんなり受け入れてくれるのではないか」と希望を見せた。その横で、20代と思しき観光客たちは、商店内の写真を撮ったり、地元の味覚を楽しんだりと思い思いに過ごす。消失したエリアにつくられた仮設の「青空市場」では、路上に設置されたテーブル席でランチを楽しむ人の姿があり、市場としての価値の根強さを感じさせられる。

(左)旦過市場内/(右)青空市場
(左)旦過市場内/(右)青空市場

4億円下げて再公募
旦過市場A地区商業施設

 福岡県小倉総合庁舎(小倉北区城内)の敷地有効活用における公募(23年)では、事業者からの応募はあったものの、「収支が合わない」と辞退され、不成立となった。行政側は「時期は不明だが、建築費等に係る市況や業界の状況も踏まえつつ、改めて検討を行いたい」とする。
 24年7月には、コクラ・クロサキリビテーション第1弾として、IT企業誘致と若者の定着を目指したオフィスビル建設促進策により「BIZIA小倉」(小倉北区魚町3)が完成した。取材時点で入居率100%。

(左)A地区/(右)BIZIA小倉
(左)A地区/(右)BIZIA小倉

 旦過市場BC地区に完成予定のビルに開設される、北九州市立大学の「情報イノベーション学部(仮称)」との連携に期待がかかるが、資材高騰などにより、27年4月の完成が8カ月ほど遅れる見通しとなっている。市としては、小倉駅から旦過市場までのエリアを「街区が細分化され地権者が多く合意形成のハードルが高い」地区であるとしながらも、BIZIA小倉に続いて「小倉京町センタービル」「さぎん北九州ビル」などが建築中であり、老朽化したビルの建替えが着実に進んでいることを足がかりに、IT企業の集積を狙う。今年度は「公共空間の再編に向けた官民連携プロジェクトの検討や試行を加速」させるとし、エリア全体の価値の底上げを図り、民間投資を呼び込みたい考えだ。

 再整備の総事業費が、当初の23億円から57億円へと倍以上に膨らむなかで、旦過市場の商業施設2~4階については、今年4月に価格を4億円引き下げ、8億510万円で再度の公募に踏み切った。公募の申込締切は5月20日で、優先交渉権者の決定は6月末を予定している。これは「物価高や金利上昇など最新の状況を踏まえた鑑定評価を基に算出した価格」で、公募を担当する課は「説明会には8事業者の参加をいただいた。手応えを感じている」とし、「安全かつ魅力ある市場の完成を目標に、多くの事業者からの提案に期待したい」と話した。

【白石涼子】

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