香川県公共工事談合が示す「地域慣行」の危うさ 受注調整が空洞化させる公共入札

 公正取引委員会は、香川県が発注する土木一式工事をめぐり、入札参加業者29社が受注予定者を決めるなどして競争を制限していたとして、排除措置命令と課徴金納付命令を行った。課徴金総額は4億4,177万円に上る。高松市内を4地区に分け、施工場所の地区に所属する業者が優先的に受注を希望し、他社が高値入札や不参加で協力するという仕組みだった。本件は香川県の事案にとどまらず、地方の公共工事市場に参加する事業者らにとって重い教訓を含んでいる。

29社が関与、課徴金は4億円超

 6月25日、公正取引委員会は、香川県が発注する特定土木一式工事の入札参加業者に対し、独占禁止法違反で排除措置命令および課徴金納付命令を行った。

 違反事業者は29社で、このうち20社が排除措置命令の対象となり、27社が課徴金納付命令の対象となった。課徴金総額は4億4,177万円。対象となったのは、香川県が総合評価方式による一般競争入札で発注する、高松市を施工場所とする土木一式工事のうち、同県からA等級に格付けされた単体企業を入札参加者とする工事だった。

 公取委によると、29社は遅くとも2021年5月27日以降、受注機会の均等化と受注価格の低落防止を図るため、受注予定者を決定し、それ以外の業者は受注予定者が受注できるよう協力する旨を合意していた。

高松市を4地区に分けた「すみ分け」

 今回の事案で特徴的なのは、高松市をA、B、C、Dの4地区に分け、事業者ごとに本店所在地を基準として所属地区を定めていた点だ。

 発注された工事の施工場所がどの地区にあるかによって、その地区に所属する業者が優先的に受注を希望する。受注希望者が1社であれば、その業者を受注予定者とする。複数社が希望した場合は、施工場所、過去に受注した工事との継続性、その年度の受注実績などを勘案し、業者間の話し合いで受注予定者を決めていた。

 さらに、受注予定者が提示する入札価格は受注予定者自身が定め、他の業者はそれより高い価格で入札するか、入札に参加しないことで協力していた。表面上は一般競争入札であっても、実質的には地域内で受注者を事前調整する仕組みが構築されていたことになる。

香川県

「地域の顔なじみ」が談合の温床に 一方で内部崩壊リスクも

 地方の公共工事市場では、入札参加者が地元業者に限られやすい。とくに土木一式工事は、災害対応、道路維持、河川整備、上下水道関連工事など、地域に根差した施工体制が求められる。このため、発注自治体と地場建設業者の関係は長期的・継続的になりやすく、業者同士も互いの得意分野、施工能力、地域的な縄張りを把握している。

 こうした地域密着性は、災害対応力や施工品質の維持という面では重要だ。しかし同時に、顔なじみの業者間で「今回はあちら」「次はこちら」といった暗黙の順番意識が生まれやすい。今回の香川県事案は、まさにこの地域慣行が制度的な入札競争を空洞化させた典型例といえる。談合は必ずしも、密室で悪質な合意文書を交わすような古典的なかたちだけで行われるわけではない。地域、過去の受注実績、継続工事、施工場所などを理由に、受注者の「自然な順番」を業者間で共有するだけでも、競争を制限する合意になり得る。

 今回の対象工事は、総合評価方式による一般競争入札だった。総合評価方式は、価格だけでなく技術力や施工実績、地域貢献などを評価する仕組みであり、単純な最低価格競争を避けるために導入されている。しかし、総合評価方式であっても、入札参加者同士が受注予定者を決めてしまえば、制度の趣旨は失われる。むしろ、技術点や地域要件、過去実績が評価に組み込まれることで、参加者が固定化し、業者間の相互理解が深まりやすい側面もある。

 また、今回指摘を受けた事業者の一覧を見ると、一部事業者には課徴金減免制度や調査協力減算制度が適用されている。これは、談合に参加していた事業者が公取委に情報提供することで、課徴金の減免を受けたことを意味する。

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 公取委は近年、道路清掃、点検業務、イベント運営、機械式駐車装置、保険、給食、ワクチン、都市ガスなど、多様な分野の入札談合・受注調整事件で措置を行っている。公共工事に限らず、発注者と受注者、あるいは受注者同士の関係が固定化しやすい分野では、競争制限のリスクが常に存在する。

 資材価格や人件費の上昇、人手不足などにより、建設業界を取り巻く環境は厳しさを増している。こうした局面では、過度な価格競争を避けたいという心理が働きやすく、結果として地域内の慣行や横並び意識に流れやすくなる面もある。

 だからこそ、発注者、受注者の双方に求められるのは、「これまで通り」という慣行を漫然と続けるのではなく、入札の透明性と競争性を絶えず点検する姿勢である。今回の香川県事案は、地方の公共工事市場において、地域密着性と公正な競争をどう両立させるかを改めて問いかけている。

【寺村朋輝】

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