国の税収84兆円台へ 物価高と企業収益が押し上げ、減税論議にも影響

6年連続で過去最高へ

 2025年度の国の一般会計税収が84兆2,000億円程度となり、6年連続で過去最高を更新する見通しとなった。24年度に比べて約9兆円の増加となる。政府は直近の見通しで、25年度税収を80兆6,980億円と想定していたが、実績はこれを大きく上回る見込みとなった。税収はコロナ禍後の企業収益回復や物価上昇を背景に増加基調が続いており、今回の見通しはその流れを一段と鮮明にした。

 内訳をみると、消費税は24年度から約1兆円増の26兆円、所得税は約4兆円増の25兆3,000億円、法人税は約3兆8,000億円増の21兆7,000億円となる見込みだ。いずれも主要税目が税収全体を押し上げた。

法人税は企業業績、所得税は定額減税の反動

 今回の税収増で目立つのは法人税の伸びだ。輸出関連企業や大企業を中心に企業収益が堅調に推移したことが、法人税収を押し上げた。円安や価格転嫁の進展により、売上高や利益を伸ばした企業も多く、税収面にもその影響が表れた。

 所得税については、賃上げによる給与所得の増加に加え、24年度に実施された定額減税の反動も大きい。24年度は政策的に税収が押し下げられていたため、その影響が剥落した25年度は見かけ上の増加幅が大きくなった。

 消費税も物価上昇の影響を受けた。消費税は消費額に対して課されるため、物価が上がれば、実質的な消費量が大きく伸びなくても税収は増えやすい。底堅い個人消費に加え、食品や日用品、サービス価格の上昇が税収増に寄与したとみられる。

「税収好調」と「生活実感」のズレ

 ただし、税収増を単純に「経済好調」とだけ見ることはできない。今回の税収増には、物価上昇による名目額の膨張が大きく関わっている。消費税は物価が上がるほど税収が増えやすく、所得税も賃金上昇によって課税所得が増えれば税収が伸びる。法人税も、企業が価格転嫁によって利益を確保すれば増加する。

 一方で、家計の側から見れば、物価高は生活費の増加そのものだ。賃金が上がっても、食品、光熱費、住宅関連費、サービス価格の上昇に追いつかなければ、生活実感は改善しにくい。つまり、国の税収は増えているのに、国民の負担感は軽くならないというズレが生じている。この点が、今後の政治論議で重要になる。政府にとっては税収増だが、納税者にとっては、物価高によって消費税負担が増え、賃上げによって所得税負担も増える構図に見える。いわば、インフレによる「自然増収」が進んでいるともいえる。

減税論議への影響

 政府内では、27年4月に飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる案も検討されている。税収の増加基調が明確になれば、家計支援や減税を求める声は強まりやすい。ただし、税収の上振れ分がそのまま減税財源になるわけではない。決算上の余剰金は、国債償還や防衛力強化などに充てられる仕組みがあり、恒久的な減税を行うには、安定財源をどう確保するかという問題が残る。

 また、消費税率の引き下げは家計支援策として分かりやすい一方、社会保障財源との関係も避けて通れない。高齢化にともない社会保障費は増加を続けており、一時的な税収上振れだけで恒久減税を判断すれば、将来の財政運営に影響を残す可能性がある。

問われるのは税収増の使い道

 今回の税収増は、日本経済がデフレ的な停滞から、物価と賃金が動く局面に移ったことを示している。その意味では、長く続いた税収低迷からの転換と見ることもできる。しかし同時に、物価高によって家計が圧迫されるなかで国の税収だけが伸びる構図は、政治的な不満を生みやすい。税収が増えたのであれば、国債償還、防衛費、社会保障、子育て支援、減税、地方財政のどこに優先的に配分するのか。政府には、これまで以上に明確な説明が求められる。

 税収84兆円台という数字は、財政余力の拡大を示す一方で、国民負担の増加を映す鏡でもある。今後の焦点は、税収が増えたこと自体ではなく、その増収を誰のために、どのように使うのかに移っていく。

【寺村朋輝】

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