2024年12月10日( 火 )

経営を教えていただいた盛和塾~アスカコーポレーション(株)(前)

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 本社工場の壁には、社名にも負けない大きな文字で「お元氣様です」と書かれている。そこは直方市の地域経済と雇用を支える企業、アスカコーポレーション(株)である。主要産業を支えるめっき業界に身を置いて50年の阪和彦代表に話を聞いた。

(聞き手:弊社代表 児玉直)

 ――まず始めに、毎週メルマガを読ませていただいております。元プロ野球選手の鉄人衣笠氏との親交も深いそうですね。

アスカコーポレーション(株) 阪 和彦 代表<

アスカコーポレーション(株) 阪 和彦 代表

 阪 衣笠氏とは地元が同じでして、実は小学時代は水泳に取り組んでいて、野球を始めたのは中学からなんです。中学時代は同じチームで野球をしていましたが、向こうは花型選手で、部員も多かったことから一度も話をしたことがありませんでした。盛和塾、稲盛和夫塾長の勉強会に参加していたときに、衣笠氏と再会することができました。今では、東京や福岡で食事する仲になっています。

 ――ご出身は京都だと聞きましたが。

 阪 もともと学生時代はお世辞にも、「いい学生」ではありませんでした。先生や学校と、何度も衝突しました。両親にも苦労をかけましたが、更生させるため、母親は本当に必死でした。その後、地元で小さなメッキ工場をやっていて、ある時上田鍍金(株)の会長に声をかけられ、上田鍍金に入社することになりました。18歳からなので、この仕事はもう50年になります。

 ――現在のアスカコーポレーション(株)の成り立ちはどのようなものだったのですか。

 阪 地元京都でオムロンの協力会社として、上田鍍金の子会社で事業を行っていました。直方市が炭坑で栄えた町を活性化するため、企業を誘致しようとしていた時に、オムロンの進出と同時に、やってきました。九州にない技術を持っている弊社に要請があり、実現したのです。公害問題もクローズアップされ始めた時代に、オムロンの水準で仕事をさせていただき、それが認められるようになりました。最初はほとんどオムロンの仕事だったものが、次第に周辺または九州全域に仕事が広がっていきました。その後、三菱の工場移転を機に、半導体にも進出して、現在があります。社名の由来は、就職採用の話を高校の先生にする際に、それまでの社名「上田鍍金工業所」では人が集まらないと言われたのです。そこで、カタカナに改名しようと、社内で社名を募集しました。2年の準備期間を経て、「アスカ」に決定しました。

 ――平成に入り、半導体の業界は業績の波が激しい時代がありました。当時はどのような経営状態だったのですか。

 阪 ここにやってきたばかりの頃は、月々の売上が400~500万円ぐらいで推移していました。社員も5名ほどで小規模でした。そこから少しずつ拡大して、現在は売上高が18億円ほど。仕入れて売るわけではなく、加工賃だけの売上です。めっきの業界は10年毎に大きな変革が起こります。オムロンと同時に、京都から直方へ移転してきた協力会社は25社。それが今残っているのは3社ほどです。それほど激変している業界にあります。オムロン自体が大きく変化しながら、事業を継続されているわけですから、周辺業者も対応していかねばなりません。1社専属では、やはり生き残っていけないわけです。弊社はオムロン専属だった時代がありましたが、その後は販路を広げたからこそ生き残ることができたと思います。中国や東南アジアを主体に海外展開する大手メーカーさんもたくさんいます。弊社もグループとしてインドネシア、マレーシア、上海や蘇州にも進出しています。

 ――研究開発にもかなり力を入れているようですね。

 阪 開発を手がけているのは、10数名のグループです。ありがたい話で、人材は福岡県内の高専から、ご紹介いただいております。女性も多いのですが、結婚を機に退職する場合もあり、会社としては判断の難しいところです。育てた人材をいかに定着させるかは今後の経営課題になります。上田鍍金(株)グループとして、メッキの加工賃で売上高は68億円。海外へは弊社自らが進んで進出したわけではなく、取引先に声をかけられて付いていきました。零細企業がお客さまなしに、海外進出するのはハードルが高すぎます。今後の国際戦略も、取引先の動向に合わせて、対応していく方向で進めていきます。

 ――この業界に、新規参入する企業は少ないのでは?

 阪 参入は難しいでしょうね。実際、メッキ業は少人数の家内工業が9割を超えていると思います。メッキ専業で、100名もの従業員を抱えているのは弊社ぐらいじゃないでしょうか。規模が大きくなると、プレスや金属加工なども手がけるようになります。そうしないと、安定した経営は難しいのです。環境保護の観点が見直され、排水基準が整備される前は景気のよい同業者は多かったです。その後、排水施設を整備しないといけなくなり、その時代は終わりました。

(つづく)
【文・構成:東城 洋平】

<COMPANY INFORMATION>
アスカコーポレーション(株)
代 表:阪 和彦
所在地:福岡県直方市大字下境字黍田427-8
設 立:1971年1月
資本金:3,200万円
売上高:(15/5)約17億7500万円
URL:http://aska-plating.co.jp

 
(後)

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