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2016年03月03日 07:03

ドナルド・トランプ候補はなぜ「強い」のか(5) SNSI中田安彦レポート 

副島国家戦略研究所(SNSI)研究員 中田 安彦

 もう1つの大きな現象は、アメリカ人が強いリーダーを求めているということだろう。ブッシュ大統領は戦争を主導した大統領だが、トランプが指摘するように「国民を騙してイラク戦争に追い込んだ」ことから評判が悪い。嘘をつく政治家が嫌われるのは、圧倒的多数の米国民がヒラリー・クリントン前国務長官を「不誠実な政治家」と答えていることからもわかる。見かけはともかく、実態は、ブッシュもクリントンもウォール街にがんじがらめになった政治家でもある。
 そういう企業の献金にがんじがらめになっている政治家ではなく、本当の意味でのリーダーシップを国民の一部の層は熱狂的に求めている。それが、レーガン大統領の選挙スローガンである「偉大なアメリカの復興」をそのまま掲げて登場したトランプ候補だったわけである。

アンドリュー・ジャクソン(右)<

アンドリュー・ジャクソン(右)

 ただ、トランプ候補の源流はレーガンだけではなく、もっと古いアメリカの歴史に探ることができるという意見もある。アパラチア山脈地域東部のテネシー州を拠点に活動し、第7代大統領になったアンドリュー・ジャクソン(民主党)に、ドナルド・トランプの世界観はそっくりだとする興味深い分析が、つい最近のニューヨーク・タイムズの論説欄に現れた。一言で言えば、悪い意味で「ワイルドな世界観」の持ち主であるということだ。論説によれば、トランプが、保守派が重視する政治問題である妊娠中絶とか健康保険についての発言に一貫性がない(むしろ民主党候補ではないかという柔軟性を見せる)と他候補から批判されているように、独立系民主党員だったジャクソンもまた、首尾一貫性にはあまりこだわらなかった。また、彼もまた金持ちのグループに属し、それでいながら大金持ちの敵対者として出馬しているのだ。また、トランプが移民規制やイスラム教徒の米国からの追放を訴える過激さを見せるのと同様に、ジャクソンも黒人奴隷主であり、強固なアメリカン・インディアンの迫害者であった。完全に同一というわけではないが、2人はそっくりだというのだ。
 米政治学者のウォルター・ラッセル・ミードによると、アメリカの外交姿勢は荒っぽいジャクソン主義以外に、理想主義を特徴にするウィルソン主義、リバータリアンに代表される分権的なジェファーソン主義、中央集権主義によって富国強兵を図ろうとするハミルトン主義の4つに大別されると言われる。ブッシュ政権は「ジャクソンとウィルソン主義の中間」、オバマ政権は「ハミルトン主義とウィルソン主義の中間」と言えるだろう。仮にトランプが大統領になるとすれば、ジャクソン主義を体現した政権をつくることになると予測できる。

 ただ、2016年の世界は危険に満ちている。オバマ政権が、シリア政策でロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席に対して、常に後手に回ってしまったという紛れもない認識が、共和党支持者の間にはある。奇しくもプーチン大統領は、トランプを交渉相手として対等に評価するようなコメントを出している。トランプもプーチンを尊敬している、という。たしかに、宗教保守のクルズや、若く好青年でネオコン派から主流派までの支持もあるルビオでは、国内ウケは良いかもしれないし、アメリカベッタリ主義者の安倍晋三首相程度の政治家が相手であれば、苦労はしないだろう。しかし、副大統領が誰になるかにもよるが、プーチンや習近平と対等に交渉できるとは思えない。

 こうして見ていくと、アメリカのエスタブリッシュメントの人脈やクリントン元大統領の設立した財団の活動を通じて世界のエリートと裏側のことも含めた関係を築くなどそれなりのバックがあるヒラリーか、ジャクソン主義者の企業経営者のトランプで今の世界情勢を考えると、初めて天秤が釣り合うのかもしれない。ただ、トランプ候補の日本についての意見を聞いていると、彼の対日認識は、レーガン政権当時の対日通商摩擦が華やかなりし頃とまったく変わっていないようで、心配ではある。

 共和党の候補者選びはまだまだ続く――。

(了)

<プロフィール>
nakata中田 安彦(なかた・やすひこ)
1976年、新潟県出身。早稲田大学社会科学部卒業後、大手新聞社で記者として勤務。現在は、副島国家戦略研究所(SNSI)で研究員として活動。主な研究テーマは、欧米企業・金融史、主な著書に「ジャパン・ハンドラーズ」「世界を動かす人脈」「プロパガンダ教本:こんなにチョろい大衆の騙し方」などがある。

 
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