わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2016年05月20日 07:03

認知症を作っているのは誰?(後)

大さんのシニアリポート第44回

 「認知症介護研究・研修東京センターの本間昭センター長らの厚生労働省研究班は2012年度、全国の医師を対象に向精神薬の使用実態調査(回答数約1※記事内容は2015年8月31日時点のもの人)をした。認知症による攻撃的行為に向精神薬を処方していると答えた医師は、認知症専門医の76%、地域のかかりつけ医の67%、興奮には専門医の69%、かかりつけ医の64%だった。(中略)本間さんは、『高齢者には副作用が出やすく、できるだけ向精神薬を使わないようにすべきです。使う場合には一人ひとりの症状を慎重に見極めてほしい』と話す」(「朝日新聞」平成27年5月5日)。研究班は翌年「向精神薬ガイドライン」を公表したが、是枝冴子さんにみられるように、「慎重に見極めてほしい」にはほど遠い診療の仕方が続いている。

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最新式車いす

 このことを踏まえ、昨年末施設に入所された「ぐるり」常連、香川涼子さんについて再度触れておきたい。以前、彼女の入所について、「入所が彼女にとって良かったのか」「家族が自分の都合(介護への手抜きのため)ではなかったのか」と疑問を投げかけたことがあった。脚色せず正直に話す。涼子さんの次女は東京都練馬区にある病院併設の老人ホームに介護士として勤務。そこで、坑認知症薬を投与された入所者の大半が症状を悪化させ、「完全なる“認知症”患者」として病院送りになったのを目の当たりにしていたのだ。だから、認知症だと確信した(涼子さん本人も自認)私が、次女に「医者に診せるべきだ。いい薬ができている」と問い詰めても、拒否したのは当然で、現場でその惨状を体験した次女の判断は正しかったと言わざるを得ない。

 医療機関の問題が大きい。「認知症と家族の会」が、会員500人を対象に2013年に実施した調査がある。「過去5年間に認知症の人が急な体の病気で医療機関を受診した家族305人のうち、3割強の102人が医療機関の対応に『問題があった』と答えた」(「朝日新聞」平成28年2月14日)。そのなかに、「医療スタッフから納得のできないような対応をされた」「認知症を理由に入院を断られた」「診察を拒否された」「入院時、付き添いを求められた」「身体を拘束された」という理不尽な対応に不満を持つ家族の声があった。確かに認知症に対して不勉強な医師が多いのに、金になると思うと、金の亡者に変身する。そのことが医療費増大に拍車をかけ、財政圧迫につながるのに、罪の意識もなく認知症患者を増やすことに躍起となる。

 高齢者を看る家族にも問題がある。介護は間違いなく介護する側の人生までも変えてしまう場合も少なくない。介護に窮した家族が、思いあまって親を殺してしまうという事件もみられる。様々なセーフティネットの存在を知らず、頑なに自分の意思(思い込み)のみで介護する人は、やがて「介護ネグレクト」状態に陥る場合が少なくない。

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 経済的な状態も加味される。「施設への入居」という選択肢もあるが、有料老人ホームは千差万別。数千(百)万円の預託金、毎月数十万円の生活費を支払える人は希だ。比較的軽費な特別養護老人ホームなど、公的な施設を選択することになる。しかし特養は入所が”数年待ち”状態だ。

 2月、埼玉県加須市で開かれた「在宅医療・介護シンポジウム」で、パネリストの医者が述べた言葉が忘れられない。「家族がいうんです。先生、給仕が大変なので、早く胃ろうにしてください。認知症にしてくださいと手を合わせるんですよ」と。胃ろう(胃ろう手術のレセプトの点数が高く、積極的に胃ろうを勧める医者もいる)と認知症が加味されると、要介護度が急上昇。”要介護3”以上になり、特養入所条件の「最低要介護3以上」という条件(正しくは目安)を満たすからだ。結果として「家族が病気を作り、親を捨てる」ことになりかねない。両親を認知症に仕立てあげ、自分は認知症回避のための「脳トレ」に励む。これってどこか矛盾していませんか?

(了)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

 
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