2024年04月26日( 金 )

インターネットにも広がる卑劣な情報操作の罠

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。植草氏はメディアの偏向報道に対する危機感を露わにするが、インターネットにもその動きが広まっていると懸念する。〝汚染〟された情報のなかから真実の情報を探り当て、投票行動に反映させるように呼び掛ける。


 7月10日の選挙は「安倍政治の是非」を問う選挙である。「安倍政治の是非」を問う一つの項目に経済政策がある。これも選挙争点のひとつになるが、これだけで選挙を判断してよいわけがない。
 原発
 憲法=安全保障
 TPP
 基地
 経済
 の五つの問題があるのだ。

 NHKの政治部を代表する人物はニュース番組の解説のなかで、「与野党の政策に違いがない」などというふざけた発言を示したが、日本の主権者が戦わなければならない相手は「メディア」でもある。原発、憲法、TPP、基地、経済の五つの問題があり、いずれも日本の未来を左右する重大問題である。そして、この五つの問題について、安倍政権と安倍政権対峙勢力との間に、正反対の主張が存在する。
 原発:推進 対 廃止
 憲法:戦争推進 対 平和主義維持
 TPP:参加 対 不参加
 基地:建設強行 対 建設阻止
 経済:格差推進 対 格差是正
 という対立がある。「政策が似ている」などという論評はあり得ない。

 これらの重要争点における対立の原点は、
 資本主義 対 民主主義
 である。資本主義というのは1%の利益の追求であり、民主主義というのは99%の利益の追求だ。資本主義 対 民主主義 の対立図式で政治を理解することが必要だ。そして、1%の資本主義が、99%の資本主義に勝つための武器が、
 情報操作=メディア・コントロール
 である。1%の側は、メディアを支配し、情報を統制しない限り、99%の勢力に負ける。そこで、1%の勢力は、マスメディアを完全支配するが、これだけでは足りない。インターネットという情報空間が生まれており、この空間をも支配しなければ、1%が99%に勝つことができない。

 6月19日に開催された「ネット党首討論」はインターネット上の空間に対する既得権勢力の支配を鮮明に浮かび上がらせた。この企画の中心に位置したのが、株式会社ドワンゴだが、こうした存在が、政治的公正、中立をまったく確保していない。司会に古市憲寿なる人物を起用して、偏向した党首討論を実施した。NHKも偏向しているが、ドワンゴが企画する企画も十分に偏向している。その古市氏が生活の党と山本太郎となかまたち代表の小沢一郎氏に対して、極めて幼稚な対応を示した。

 この一件だけで古市氏の起用がなくなるのは当然のことだが、既得権勢力に汚染され、支配されている日本の情報空間では、こうした下劣な存在が温存される。主権者は1%の勢力による情報操作、情報誘導、メディア支配に抗って、正しい判断を下し、正しい行動を示さなければならない。マスメディアのみならず、インターネットの情報空間も十分に汚染されていることを知っておかねばならない。

 人間にもいろいろな種類がある。それを大きく分類すると二つに分かれる。ひとつは、自分の利益を優先する種類の人間。もうひとつは、自分の利益よりは、ものごとの筋道を優先する種類の人間。それぞれの生き方だから、それはそれでいい。しかし、自分の利益を優先する種類の人間は、はたから見ていて見苦しい。見苦しくても、何を言われようとも、自分の利益になるなら構わないと考える種類の人間だ。最近は、お笑いの世界のなかにも、この種類の人間が増えている。たしかに、それをやれば出番も増えるし、所得も連動して増えるから、そちら
になびく人間が増えるのは分かるが、はたから見ていると、やはり見苦しい。

 これに対して、筋を通すタイプの人間が減った。減ったと言うより、筋を通すタイプの人間が、メディアから排除されていると言った方が正確だろう。筋を通すタイプの人間は、排除され、現世利益からは遠ざかっているが、このタイプの人間は、それを基本的に良しとしている。そして、目先の利益だけを追い求めて、魂を売り払っても、何とも感じない種類の人間を悲しい存在だと感じている。

 大事なことは、ものを見る目を養うことだ。本当によくものが見えてくると、権力や金に群がり、こびへつらう、米つきバッタのような存在が見苦しいと感じてくる。テレビに出て、権力に阿り、権力にひざまづく言説を撒き散らして、何の痛痒も感じない感性の麻痺した状態に陥り、ひたすら茶坊主に徹する人々が溢れている。しかし、この種類の人間ばかりが増殖すれば、必ず道を誤ることになる。時代は必ず変わる。悪道に大きくそれれば、必ず、正道に立ち帰るときが来るはずである。その日は近いだろう。

 「お天道さまが見ている」は小沢一郎氏がいつも口にする言葉だが、長い目で見れば、必ず「お天道さまが見ていて」道は変わるのだ。これだけ悪道にそれているのだから、正道に回帰する日は遠くないはずである。目先の欲得に囚われ、権力に迎合し、権力の僕になる種類の人間は悲しい存在だ。この国の未来、人々の幸福を考えるのが政治の役割であって、自分の利益、目先の利益だけを追い求めるのは、とりわけ、政治のあるべき姿の対極にある行動である。

 「今だけ、金だけ、自分だけ」の「三だけ主義」がはびこる日本。これが日本社会をダメにしている元凶である。下劣が支配する情報空間から距離を置いて、長い目で見て、必ず立ち帰る「正道」を見据えて、主権者が誤りのない判断を下してゆかねばならない。7月10日の選挙に向けて、大事なことは、この国の未来を左右する五つの重要争点について、自分なりの判断を持つこと。そして、その判断を確実に実行する、明確でブレない政党、候補者に一票を託すこと。メディアはマスメディアもインターネットも汚染されている。そうした汚濁にまみれた情報空間の中から、清冽な地下水の水脈を見つけ出し、その水脈から真実の情報を得て、選挙に挑まなければならない。主権者の目が曇らなければ、現在の悪道を正すことができるはずだ。

※続きは6月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1468号「「三だけ主義」で衰退する泥沼ニッポンの再生」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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