2024年05月03日( 金 )

シリーズ・金融機関淘汰の時代がやって来た(10)~九州地銀行の16年9月期(中間)決算を検証する(3)

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 まずは預貸金残高を検証していくことに。別表1を見ていただきたい。

表から見えるもの

1.預金残高順位について
◆預金残高は前年と比較して順位の変動はなかった。
 九州地銀(18行)の総預金残高は、43兆3,670億円(前年比+1兆3,634億円)。
 第1位は福岡銀行の9兆5,283億円。第2位は西日本シティ銀行の7兆6,961億円。第3位は肥後銀行の4兆4,620億円。第4位は鹿児島銀行の3兆6,643億円。第5位は大分銀行の2兆8,129億円。この5行の合計は28兆1,6366億円で、全体の64.9%を占めており、上位行による寡占化が進んでいる。

◆年率が一番高いのは北九州銀行で9.1%。前年比+858億円の1兆306億円となっており、初の1兆円台乗せとなった。2011年10月に設立から5年が経過。当初23店舗でスタ-トしたが現在36店舗となっており、店舗の新設が貢献しているようだ。
・次に高いのは肥後銀行の7.9%で、それに続くのは熊本銀行の7.1%。両行とも熊本地震による公的資金の滞留が大きな要因と見られる。

◆気になるのは、いずれも第二地銀の下位4行。第15位の豊和銀行(前年比+47億円)。第16位の福岡中央銀行(+67億円)。第17位の長崎銀行(-48億円)。第18位の佐賀共栄銀行(+7億円)。特に西日本FHが発足したばかりの長崎銀行にとって、マイナスでのスタ-トは厳しい状況といえるのではないだろうか。

2.貸出金残高順位について
◆貸出金残高は前年と比較して順位の変動があった。昨年第4位だった鹿児島銀行が前年比+2,192億円の2兆9,378億円となり、同じ九州FG傘下の肥後銀行を抜いて第3位に躍進。第4位の肥後銀行は前年比+1,792億円の2兆9,340億円。16年3月期は▲334億円だったが、▲38億円まで戻したものの、二期連続の負け越しは、グル-プ内の力関係に微妙な変化をもたらす数字といえるかもしれない。

◆来年4月にふくおかFGと経営統合する予定の十八銀行は、昨年第8位だったが、今年は前年比+572億円の1兆5,044億円となり、前年比+97億円の親和銀行(1兆4,659億円)を抜き、第7位の座を確保。2018年に両行は合併を予定している。うがった見方かもしれないが、十八銀行は合併が有利になるように、潜航して顧客の囲い込みを図っているように思えるのだ。
 ただ預貸率は57.7%で、九州地銀(18行)のうち最低であり、森信親金融庁長官の言にある「捨てられる銀行」にならないための、さらなる努力が求められているのではないだろうか。

◆ここで気になるのは大分県の大分銀行と豊和銀行の2行。
 大分銀行の貸出金は、前年比-40億円の1兆7,766億円。第6位の宮崎銀行は、前年比+580億円の1兆7,648億円となっており、その差はわずか118億円。はたして大分銀行が巻き返すのか。それとも宮崎銀行が一気に逆転するのか。当面目が離せない状況といえよう。
 豊和銀行は前年比-113億円の3,974億円となり、4000億円の大台から転落している。大分県に本店がある地銀2行ともがマイナスとなっており、地域経済も大きな問題を孕んでいるといえそうだ。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

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