2024年04月28日( 日 )

企業研究・渡辺パイプ(株)~さらなる販路拡大を目指す資材商社の雄(後)

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 全国主要都市に営業拠点を構え、管財商社としてトップクラスの業績を誇る渡辺パイプ(株)。未上場ながら2016年3月期の連結決算で売上高2,464億2,765万円の事業規模を持つ。しかも、地方の管材、電材業者を傘下に加え事業の確立を目指している。九州地区における取り込みも活発化しており、既存の地方業者との競争は激しくなりそうだ。

既存のノウハウを生かす戦略

 同社の主たる事業は従来から手掛ける管・設備などの資材販売である。事業は住まいに関する商材の提供を行う「水と住まい事業」と農業関連の「グリーン事業」に分けられている。水と住まい事業」では管材、建材、電材、住設などの商材販売を行い、全国トップクラスの販売網を構築し、文字通りの主力事業である。同社が全国各地に進出しえたのは、この事業があってこそ、である。そのなかで「グリーン事業」は、総合グリーンデベロッパーと名乗っているように、ビニールハウスの建設やビニールの供給から自社農場の運営や植物の種の販売に至るまで、農業に関するさまざまな事業を展開している。全体から見て大きな比率はないが、長年管材を取り扱ってきたノウハウを生かし、これからの日本の農業を支える大きな礎石となるだろう。

談合への関与が表面化

 同社は2009年12月、全国管工事業協同組合連合会と「災害時における復旧活動の応援協力に係わる覚書」を締結している。災害等の発生時にライフライン復旧のための資材供給を円滑に行うことを目的としており、全国の管工事組合とともに、早期に災害復旧ができる協力体制を築いていこうというものである。だが、東日本大震災で被害を受けた農業用ビニールハウスなどの復旧工事をめぐる入札で、談合を繰り返したとして、17年2月16日付で公正取引委員会が同社を含む5社に対して独占禁止法の規定に基づき、排除措置命令および課徴金納付命令がなされた。5社合計の課徴金額は約6億円。この談合事件に同社の名前が挙がっており3,144万円の課徴金額が出されている。復興にかかわることだけに残念な話である。

管材・電材、建設関連の地場業者をグループ傘下へ

 全国主要都市に営業拠点を設け、矢継ぎ早にネットワークを形成して全国トップクラスの管材商社となった同社。2000年代に入ったころから、事業方針や事業承継に問題を抱える地方の管材・電材の商社を積極的にグループに取り入れはじめた。九州・福岡地区においては管工機材・住宅設備機器・土木資材の販売を手がける三幸機器(株)(長崎県諫早市)、電機工事材料の販売を行うクサノ電材(株)(福岡県粕屋町)が傘下へ。総合商社として全国展開を図りたい同社との思惑が一致しており、今後もこの路線での事業拡張は行われていくと見られる。反面、地場の既存業者にとっては強力な競争相手の進出となる。

 設立直後は関東地区を中心に管材を中心とした販路拡大を行なってきたが、現在においては全国規模で電材や建設業にも従事する総合商社と変化しつつある同社。今後の動向に注目が集まる。

(了)
【道山 憲一】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:渡辺 元
所在地:東京都中央区築地5-6-10
九州支店:福岡県糟屋郡粕屋町仲原2654-1
設 立:1957年4月
資本金:100億9,918万円
売上高:(16/3連結)2,464億2,765万円

 
(中)

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