2024年04月19日( 金 )

人口とともに増え続ける市債残高 久留米・楢原市政に疑問符(前)

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 福岡県南部の中心都市として発展した久留米市。社会ニーズの変化に合わせて、商業都市からベッドタウンへ、九州北部エリアにおける存在意義が変化した。「日本一住みやすいまち・久留米」の実現を掲げる楢原市政だが、交通の利便性が決して良いとはいえない、JR駅と西鉄駅の中間に、大型集客拠点施設(久留米シティプラザ)を建設し、その一方で、集合住宅の欠陥における市民の責任追及には徹底して抗うなど、実のところ、市民目線を著しく欠いた市政運営ではないかとの見方が強まっている。

人口減・高齢化で進む都市部への人口集中

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 「久留米市」は1889年4月の市町村制施行で誕生し、筑後地方の中心都市として発展した。近年も人口は増加傾向にあり、2005年2月に三井郡北野町、三潴郡三潴町・城島町、浮羽郡田主丸町を編入したことで30万人を突破。08年4月に中核市に移行し、現在に至る。17年4月1日現在の推計人口は30万4,387人。

 最近では、九州新幹線の全線開通(11年3月)もあり、福岡市のベッドタウンとしての性格が強まっている。久留米市では、転入者を増やす施策として、15年7月から、中古住宅を含む住宅購入者で、3年以上の定住意思があることなどを条件に最大30万円の補助金を交付する「久留米市転入ファミリー定住奨励補助金」を設置。また、同補助金の交付対象世帯に36カ月を限度とする「通勤定期利用補助金」も設けている。加えて、「久留米ふるさと特別大使」に就任した同市出身の女優・田中麗奈さんが、まちの住みやすさをPRし、移住を呼びかけるなど、若年世代やファミリー層への働きかけに注力している。

 ただし、これらの施策が奏功し、人口増になっているとは言い難い。人口減少かつ高齢化が進む現代において、都市部への人口集中は必然ともいえる現象だ。人口減で人口が集中する都市部でも住まいを得る機会が増えていることで、より生活の利便性が高い地域へ移住する人の流れがあることは、久留米市に限った話ではない。たとえば、15年国勢調査で人口減ワースト2位の長崎市(1万4,000人減)のように、単一自治体のなかで商業施設が集中する市中心部への移住が進んでいる都市もある。そのようななか、より転入者を増やしていくためには、一時的な支援よりも住環境の整備、雇用の創出、教育・福祉の拡充を図っていくことが重要ではないだろうか。久留米市も、その点は重々承知のようで、市政課題のなかには、「住みやすいまちづくり」のため、それらのテーマが列挙されている。問題は、限られた財源のなかでの優先順位だ。

借金も増加の一途 優先施策への疑問

 国だけでなく、多くの地方自治体が財政難にあるなか、久留米市も例にもれず、財政状況は決して良いわけではない。市債残高(表Ⅱ参照)は、増加傾向にあり、17年度予算で1,459億円となっている。負債増加の要因は臨時財政対策債(臨財債)。財政難にある国が交付できない地方交付税の代わりとして地方自治体が発行できる地方債だ。償還費用は、後の地方交付税で措置されることになっているが、周知の通り、国の財政の立て直しは進んでおらず、増え続ける臨財債に返済の見通しは立っていない。このようななか、市債残高を抑制・減少するには、市予算を切り詰めていかなければならない。施策の選択と集中が不可欠だ。市債残高の推移を見ると、09~13年度では、臨財債以外の市債発行を抑制していた様子がうかがえる。特筆すべきは15年度、臨財債以外の市債で100億円増加している点。同年度では、本特別号で取り上げた「久留米シティプラザ」のほか、ごみ処理施設「宮ノ陣クリーンセンター」の建設といった大型プロジェクトが実行されている。さまざまな施策の優先順位が問われるなか、これら大型施設の建設という選択が、「日本一住みやすいまち・久留米」の実現を目指す現・楢原市政の方針と整合性があるものかどうか。久留米市民は、注意深く観察していく必要があるだろう。

(つづく)
【山下 康太】

 

(後)

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