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2017年09月08日 15:32

文明国・日本に「奴隷制度」が存在する?(前)

(一財)DEVNET JAPAN 明川文保 代表理事

 日本で働く外国人の数が、2016年に初めて100万人を超えた。飲食業や建設業をはじめ、低賃金・重労働の業種に日本人は集まらず、外国人の助けなくしては成り立たない。一方で、外国人労働者を都合よく「使い捨て」にする、悲惨な「奴隷労働」の実態が明らかになった。米国の公聴会で「日本には人権無視の奴隷制度が存在する」と指摘され、2012年以降、国連は、様々な報告書を通じて「日本は技能実習制度を廃止し、外国人労働者を適正に処遇する雇用制度に見直すように」という提言を行っている。2015年秋には、劣悪な労働環境で働く外国人が駆け込む「シェルター(避難所)」が、縫製工場が点在する、岐阜県羽島市にできた。駆け込んだ実習生は既に延べ150人を超えた。日本は本当に文明国家なのか。

 本年11月1日に、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律「技能実習法」が施行される。ここ数年一貫して、日本の「技能実習制度」の実態に警鐘を鳴らし続けてきたDEVNET(国連経済社会理事会(ECOSOC)がカテゴリー1に認定するNGO組織)アジア地域本部総裁、日本支局・(一財)DEVNET JAPAN の明川文保代表理事に聞いた。

経済発展を担う『人づくり』に寄与という崇高な理念

 ――いよいよ、「技能実習法」が本年11月1日から施行されます。本日はこれまでの経緯と問題点、その未来などについてお聞きしたいと思います。
 まずは、少し歴史をさかのぼって、「技能実習制度」ができた時のお話からお聞かせいただけますか。

(一財)DEVNET JAPAN 明川文保 代表理事

 明川文保氏(以下、明川) 外国人技能実習制度は1993年に創設され、同年4月に「技能実習制度推進事業運営基本方針」が公示されています。当初は、「研修生」という身分で入国し、一定水準のスキルを獲得した後、企業と雇用関係を締結し、実務経験を積むという仕組みでした。その後、2010年に、入管法の改正と合わせて、制度の抜本的再編が実施されました。改正後は、「技能実習生」という資格で入国、当初から労働者という身分で企業と雇用契約を結び、途中で技能実習1号から2号に移行するというプロセスを踏む形に変わりました。同時に技能実習期間が3年に延長されました。

 重要なのはこの制度の理念です。昨今、日本の技能実習制度は「人権無視の奴隷制度」とアメリカの公聴会や国連でたびたび指摘され、日本のマスコミでも大きな話題となっています。しかし、外国人技能実習制度の当初の理念は「我が国で培われた技能、技術または知識を開発途上地域へ移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う『人づくり』に寄与する」というとても崇高なものだったのです。

 財団法人国際研修協力機構(JITCO)が研修生・技能実習生の受入れを行う民間団体・企業等や諸外国の送出し機関・派遣企業に対し、総合的な支援・援助や適正実施の助言・指導を行いました。また、研修生・技能実習生に対し、その悩みや相談に応えるとともに入管法令・労働法令等の法的権利を保障し、研修・技能実習の成果向上、研修生・技能実習生の受入れ機関と送出し機関等を支援する役割を担いました。

「飲ませろ、食わせろ、抱かせろ」とエスカレート

 ――とても崇高な理念ですね。JITCOは法務・外務・厚生労働・経済産業・国土交通の5省共管により1991年に設立された財団法人です(2012年4月に内閣府所管の公益財団法人に移行)。それなぜ、このように「奴隷制度」と指摘されるような最悪の事態になってしまったのですか。

 明川 それは、制度ができて間もなく、技能実習生の送り出し国、受け入れ国・日本の双方に「悪の連鎖」とでも言うべき事態が起こってしまったからです。
 この日本の技能実習制度に最初に注目したのは隣国の中国でした。93年は鄧小平の「白猫黒猫論」(1962年)からすでに約30年が経過していましたが、当時中国はまだ発展途上の段階にありました。先進国の日本に行って技術を学び、その技術を持って帰国、自国で活かすという発想を持っていたのです。この発想に金儲けが結びつき、技能実習生を手引きするブローカーが中国各地で跋扈していきます。次第にその動きに中国共産党員も絡み、実習生も沿岸部の大都市からスタートして、内陸部の都市、さらに大陸奥地まで拡大していくのです。

 崇高な理念でスタートした日本の「技能実習制度」でしたが、受け手の日本でも悪の連鎖で、全国各地に悪徳な監理団体、実習実施者が跋扈していくことになります。日本は当時すでに少子高齢化社会に突入、飲食業や建設業をはじめ、いわゆる3K職場に代表される、低賃金・重労働の業種は日本人が集まらず、外国人の助けなくしては成り立たなくなっていました。つまり、需要はいくらでもあったのです。
 そのため、受け手である日本の監理団体幹部が中国側ブローカーに要求する金額がどんどん大きくなっていきました。訪中の飛行機代、ホテル代の負担は勿論、その他に「飲ませろ、食わせろ、抱かせろ!」などと、天井知らずの要求となっていきました。例えば、1人につき、最低で20万円、最高で150万の仲介料を要求しました。それを大きな監理団体(日本には現在約2,000の監理団体が存在する)では、下部機構を含めて年間約1万人紹介するのです。その数字がどれだけ大きなものになるかすぐお分かり頂けると思います。
 当然、中国側のブローカーは支払うことができません。そこで、「仲介料」や「保証金」などの名目で、法外な金額にも拘わらず、全て「技能実習生」の負担になりました。
 事情を理解できていない技能実習生は、最低賃金ギリギリで働いた給料では返済不可能な金額を、家族、親類縁者から借金し、入国してきたのです。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
明川文保(あけがわ ふみやす)
山口県美祢市生まれ。1973年山口県防府市に日本初の冷凍冷蔵庫・普通倉庫を備えた3温度対応の総合流通センターを開設(コールドチェーン物流の先駆け)した。第56・57代内閣総理大臣を歴任した岸信介氏の後援会青年部会長、83年衆議院議員安倍晋太郎 私設特別秘書、88年九州山口経済連合会の国際交流委員・運輸通信委員・農林水産委員、04年参議院議員福島啓史郎氏全国広域後援会本部特別顧問・特別秘書、06年DEVNETアジア・太平洋地域特別親善大使及びラオス・カンボジア・ベトナム地区総裁、09年上海万博DEVNET館特別顧問、11年東久邇宮国際文化褒賞記念会設立 代表理事などの要職を歴任した。13年DEVNET Tokyoを設立して代表理事に就任、15年「ミラノ万博」国連KIPパビリオンに日本代表として出展。同年DEVNET JAPANに改名。同組織は16年にアジア(一部地域を除く)代表オフィスに認定。

 
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