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2017年11月29日 07:02

遠野で「デンデラ野」と「ダンノハナ」を見た(後)

大さんのシニアリポート第60回

 道を挟んで「ダンノハナ」がある。柳田は「ダンノハナは『壇の塙(はな)』であり、丘のうえに塚を築いた場所」(同 赤坂)という。つまり「ダンノハナ」は「デンデラ野」で死んだ人たちの共同墓地だった。その名の通り、小高い山の中腹に切り開かれた柳田のいう「塚」(土を小高く盛って築いた墓「スーパー大辞典」)だった。山口の「ダンノハナ」は、現在共同墓地として造成され、佐々木喜善の墓もある。佐々木は、「凶作のために家にいても餓死を待つだけであり、死後の弔いも期待できない追いつめられた生活のなかで、老人たちが死に場所をもとめ、あるいは、山に移って自活の手段を講じ、可能な限り生き延びようとしたのだ」(同 赤坂)と、「デンデラ野伝承」の発生について述べている。

ダンノハナにあるお御堂

ダンノハナの共同墓地

 また桜井政成(立命館大学教授)氏は「江戸時代以降の伝説の幾つかについては、高齢者が一軒家に集住し、互いに助け合いながら生活し、そして死を迎えたという。すなわち、今でいう『セルフヘルプグループ活動』『コーポラティブハウス』がすでに近世のムラ社会には存在していた可能性が高いのである。たとえば柳田国男の『遠野物語』には、『デンデラ野』という地域で、高齢者相互扶助システムが行われていた伝説が掲載されている」(ネット/考えるイヌ~桜井政成研究室~)と述べているのだ。

 桜井氏は、「(棄老)伝説は、全国に100カ所以上残っている」ともいう。伝説という定義を、「その対象は元来が真実と信じられる事件、さらにそれにまつわる話そのものを称していたとみられる」(「日本大百科全書」)とあるように、時間的流れのなかで脚色はあるものの、伝説とは「文字を持たない人たちの事実の口承」といっていいだろう。つまり、昔、日本には「棄老」という事実が存在していた。棄てられた高齢者は、「座して死を待つ」ことを由とせず、生きるために知恵を絞り、共同生活を始めたと考えられる。ここに「子に棄てられた親」の生き方のヒントが隠されていると思うのだ。

姥捨ての彫刻

 今冬、2件の救急搬送に係わった。そのうちの1件では子が親を見捨て、最後まで係わることに難色を示した。理由は、若いときの父親の家庭を顧みない放蕩にあると彼はいう。一方、親(とくに父)はそういう態度をとる子に、「実の息子なのに……」と愚痴をこぼした。その父親の情けない様子をみて正直腹が立った。今さらわが子を頼ろうとし、拒絶されたことを恨む。じつに見苦しいと思った。その夫婦は無事に施設に入所され、何事もなかったかのように暮らしていると聞く。現場で体験し、さまざまな思いに揺れ動かされ、いまだに残滓が消えない私の心の奥底に後味の悪さだけが残された。次回作『親を捨てる子 子を捨てられない親』を上梓しようと決心した大きな要因の1つである。「子に棄てられるなら、いっそ子を棄ててしまえ」というやや過激な発想にいたった。つまり「親の子離れ、独立」である。そう思い至っても、日本では1人で生きることが困難とされる老後である。「どうすれば親の自立が可能なのか」。それが描ききれていなかった。そのとき、桜井氏の「血縁者同士の助け合いはないが、他人同士の相互扶助は昔からあった」という言葉に出会ったのである。「それを現代に蘇らせることができないか?」というのが次回作のコンセプトである。しかし、江戸時代の棄民には、「口減らし」という共通課題があった。現在「口減らし」はない。あるのは「貧困」という共通項である。そのあたりにスポットをあてて、現代の「デンデラ野」と「ダンノハナ」がつくれないかと思い描いている。12月4日に桜井氏に会う約束を取り付けた。非常に楽しみである。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

 
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