2024年04月30日( 火 )

リニア談合と欠陥マンションに見る鹿島の本性(後)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 このような鹿島建設の態度は、リニア新幹線における談合を認めない姿勢にも通じるものである。スーパーゼネコン4社のうち、大林組と清水建設は談合を認めているが、大成建設と鹿島建設は、談合ではないと否認していた。政界や行政と深いつながりをもつ巨大企業ゆえに、タカをくくっていたのではないか。これこそ巨大企業の驕りであり、久留米のマンションの裁判において、原告の区分所有者を見下した態度を続けるのも、この企業体質によるものである。

 このような強者の暴論や暴挙が許されるのであれば、建築や法律に無知なエンドユーザーは、施工の瑕疵があっても泣き寝入りするしかない。弱者であるマンション区分所有者と、強者であるスーパーゼネコンでは、組織力も、資金面も、行政への影響力も違い過ぎるのであり、全国の建築紛争において、マンション区分所有者らが大企業に敗北している原因である。

 久留米のマンションの事例における設計の偽装は単純なものであり、スーパーゼネコンの技術力がなくとも、一般的な技術レベルのゼネコンであれば、設計図書を見ただけで容易に気付く内容である。鹿島建設は、設計の偽装に気づくだけの能力を有していなかったのか、それとも、気付いていたが知らぬ顔をしたのか。鹿島建設は、世界的にも名を知られたゼネコンであり、高い技術力を有していることは、誰もが認めるところである。しかし、地方都市のマンションの施工においては、信じられないような手抜きを行うのも、鹿島建設の実態だ。私たちは、このような大企業のエゴを許すことができず、このマンションの裁判における建築技術面での支援を引き受けたのである。

 鹿島建設の下請として施工を行った栗木工務店も責任を免れることはできない。最高裁の判例では、建築確認当時、安全が確認されていない分譲マンションについては、たとえ時効であっても、マンション販売会社が買い取らなければならないという判例がある。施工の瑕疵の張本人である栗木工務店が責任を免れる理由はない。
また、耐震強度が不足した欠陥マンションは、販売価格に見合う価値はなく、そのような価値のないマンションに提携ローンを設定した金融機関も、責任を免れることはできない(抗弁権の接続)。

 リニア新幹線の談合は疑惑ではなく、逮捕者が出る大事件となった。鹿島建設は、久留米のマンションの裁判以外にも、東北における除染の手抜きや、羽田空港の工事における、暴力団を使った下請業者脅迫事件など、多くの不祥事を重ねている。今回の逮捕をきっかけに、すべてのことに誠実な対応をとる企業に変貌することに期待したい。

(了)

 

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