ホッピー、社員研修で素手のトイレ掃除~厚労省はノロウイルス感染を懸念
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九州ではあまりなじみのない飲み物だが、東京では「ホッピー」という炭酸飲料が居酒屋の定番メニューの1つだ。九州人のために一言付け加えると、ホッピー単体で飲むことはほとんどなく、通常はホッピーを焼酎などで割って飲む。見た目はビールのような色と泡立ちになり、独特の味わいにファンも多い。そのホッピーを製造販売している、ホッピービバレッジ(株)(本社:東京都港区)の社員教育制度が、一部ネット上で話題になっている。
津田大介氏のツイート
たしかに、ホッピーHPの「採用情報」では人財教育として若い社員たちが素手でトイレを磨いている様子が掲載されている。「環境整備」という項目であることからイメージ画像である可能性も捨てきれず、ホッピー本社に問い合わせてみると、残念ながら「この件については取材に応じられない」との回答があった。
ただ、ネット上でホッピーのトイレ掃除研修が話題になっていることを広報担当者は「知っている」とのことで、さらにトイレ掃除の画像がイメージ画像ではなく、ホッピーで行われている掃除研修であることも認めた。ホッピー社の石渡美奈社長は、2007年4月24日のブログで、「トイレ掃除の極意」として、その効用について書いている。
「問題点を発見したら、その問題に自らタッチして解決する」
「問題点は自ら足を運び、その問題の中に身を投じて解決する」
「問題から逃げない心をチャレンジする気概を身につける」
トイレ掃除が、問題から逃げない強い心を育てるとは……。なるほど精神的な効用を重視しているわけだが、一方、厚労省の食品衛生担当者は、「トイレを素手で掃除してはいけない、とする指針は出していない」としながらも、次のように語る。
「食中毒の原因として多いのはノロウイルスで、感染原因の8割は調理従事者が食品を汚染した例です。したがって、素手でトイレを掃除した後に手洗いが不十分なまま食品を取り扱う業務に従事すると、ノロウイルスによる食中毒を起こす可能性があります。一般論ですが、(素手でのトイレ掃除は)控えていただくか、衛生的観点から見直す必要があるのではないでしょうか」
ちなみに、ここでいう「十分な手洗い」とはかなり入念だ。厚労省のHPにも出ているので、ぜひ参考にされたし。余談だが、取材途中に「なぜ素手でトイレを掃除する必要があるのですか?」と逆取材されたことでもわかるように、厚労省はそもそも積極的に素手で便器に触れることを想定していない。
トイレ掃除研修は、ホッピーに限らず他の企業や学校などで実践させていることもある。企業の中には「きれいに掃除した自信があるのなら、便器を舐めてみろ」などという虐待まがいの無茶ぶりをすることもあるというから驚きだ。
素手でトイレ掃除の元祖は、イエローハットの創業者で「掃除の神様」と呼ばれる鍵山秀三郎氏だという説もあるが、定かではない。むしろ鍵山氏は、企業や学校において懲罰的意味あいで運用されていた「トイレ掃除」という行いに積極的意味をもたせたという意味での元祖といえるだろう。
鍵山氏はトイレ掃除の効用について「謙虚になる」という精神的効果とともに「何事も徹底してやる印象を与える」という、企業PRとしての意味を説くが、「素手で」掃除することの必然性についてははっきりと言及していない。
記者の個人的な感想としては、トップ以下の社員全員が黙々と素手で便器を磨く会社には違和感と嫌悪感しか持たない。効率的ではないし、社員の精神的成長を求めるのならもっと合理的研修もあるはずだ。津田大介氏がホッピーを「もう、飲まない」と宣言したように、食品企業のイメージ戦略としてはむしろマイナス効果しか与えないようにも思う。記事中のホッピー画像は、記者の知人が営む立ち飲み屋で撮影されたものだが、ホッピー愛好家の常連たちも「ホッピー トイレ掃除」の検索結果に落胆しているという。
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