2024年04月20日( 土 )

西日本フィナンシャルホールディングス、久保田勇夫会長新春経済講演会(15)

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ある意味で国債の「日銀ファイナンス」

 ただもう1つ気を付けなければならないのは、本件は本来的に金融政策の話ですが、実はそのほかに隠れた悪影響があるということです。これはドイツなどでは大きく議論されていますが、この金融政策は1つ目はある意味で国債の「日銀ファイナンス」ではないかというのです。後ほど予算の項目でご説明いたしますが、来年度予算で34兆円の新規国債を発行します。ところが日銀は毎年今のところペースとしては80兆円と言っていますが、金利を優先するということで、60兆円の国債の購入をやっています。増える額が予定より下回っていると言っても、政府が発行するより以上の国債を毎年買っているわけで、これはある意味では国債の中央銀行ファイナンスをやっているという見方ができるわけです。

 もう1つ、レジュメには「株価の歪曲」と書いています。日本の場合、かつての米国や今のユーロ圏と違ってETF(上場投資信託)を中央銀行が買っているのです。ETFというのは株の塊です。その株の塊を買い続けているわけですから、今の株価は中央銀行によって一部支えられており、不当に株価を高めているという見方もできるわけであります。

 さらにいえば、安易な予算編成を助長しているのではないかということが挙げられます。今はほとんど金利ゼロですから国債を増やそうとしてもその金利のための支払いは大したことはありません。ただ、これは国債の金利が1%上がったら、たとえば30兆円の国債を出していたら支払い金利は年間3,000億円増えると、それだけでも大変な金額になります。そういう意味で予算編成を安易なものにしていますし、さらにいえば、アカデミックに過ぎるかもしれませんが、資源の効率的配分を害していると。なぜかというと、たとえば立派な企業には安い金利で金を貸し、少しリスクがある企業からは高い金利を取るというメカニズムは、立派な企業には低い金利の金が回ってより発展しますし、少しリスクがある企業には高い金利で金が行くのであまり成長しないということになります。そういう意味で、今の低金利が資源の効率的配分を害しているという見方も可能なわけです。これらをどのように考えるかは大きな問題であります。これ以上述べませんが、弊害が目立ってきたのは紛れもない事実であります。
 米国は金利を上げ始めましたし、欧州中央銀行も金融政策はきついほうに行きつつあります。

 その時、日本だけがものすごく緩い金利政策で行って、世界の金融マーケットがうまく行くのかというもう1つの課題があります。これはうまく行かないという理由もないのですがね。われわれの今まで経験しているところで、やはり金融というのは世界的に一体化しているのです。これは私の考えですが、QEという異常な金融政策を世界が採ったのは、やはり米国が採ったからなのです。影響力の大きい米国が採るとどうしても、説明ぶりはともかく、ほかの国はそれをフォローしないとうまく行かないので
す。もし、そういうことが金融の論理だとすれば、日本だけ現在の金融政策を続けるというのは、難しくなるのではないかということが直感的にするわけであります。

(つづく)

 
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