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2018年05月15日 15:08

なにが問題なのか 改めて「漫画村」騒動を整理する(中)

 前回は、「漫画村」が提供する「漫画タダ読み」が何を招くかについて簡単にまとめた。今回は、なぜ漫画読者は「漫画村」に吸い寄せられたのかという視点で考えてみよう。
 漫画村で漫画を読む、ということは、いってみれば漫画雑誌や単行本を万引きして読む行為と同じだ。これは前回の説明でわかっていただけただろうか。実際のスキームにもう少し寄せて例えると、雑誌や単行本を万引きしてきた犯人に、タダで見せてもらっている、ということになる。
 万引きの片棒を担ぐような行為が「よくないこと」なのは少し考えればわかることだと思うが、ではなぜ多くの漫画読者が漫画村に殺到したのだろうか。

「便利」だった漫画村

 「無料」はもちろん魅力だが、実は漫画村は「便利」で「ユーザーフレンドリー」だったのである。現在、スマホやパソコンで漫画を読もうとすると、さまざまな障害に突き当たる。漫画村はそのストレスなく、手軽に漫画を読めるという利点があったのだ。

 漫画をスマホやパソコンで読もうとすると、電子書籍を買うという選択肢になる(紙の書籍を買ってスキャンすることもできるが、一般的ではない)。この電子書籍が曲者なのだ。

 最初の問題は、発行日のズレ。たとえば小学館から発行されている漫画『アオイホノオ 18巻』(島本和彦著)は、紙の単行本が2017年11月10日に発売されているのに対し、電子書籍版は11月17日。集英社の『ONE PIECE 88巻』は紙の単行本が18年3月2日に対し、電子書籍版は4月4日。紙と電子のタイムラグは作品や出版社ごとに異なり、紙の発売日と同日に配信開始となる場合もある。とはいえ、「読みたい」と思ったときに読めないのは読者にとっては大きなストレスだ。

 次に挙げるべきは、決済手段の問題だろう。スマホで電子書籍やアプリを購入しようとすると、クレジットカード決済か、通信キャリア決済が必要になる。週刊漫画誌の主な読者層である中高生に、自分の判断でカード決済やキャリア決済を許す保護者がどれだけいるだろうか。

乱立する電子書籍書店がユーザビリティを下げる

 そして最大の問題が、電子書籍サービスの乱立だ。「2016年電子書籍に関する利用実態調査」(MMD研究所)によると、利用されている電子書籍書店・アプリはKindle(アマゾンジャパン)が46.1%、楽天kobo(楽天Books)が28.6%、iBooks(Apple)が17.5%となっている。さらに、大手出版社は独自に自社発行の書籍を配信する電子書籍書店を持っている。これらの電子書籍書店は、それぞれ扱っている雑誌や書籍が異なるのが大きな問題。Kindleで売っていてもiBooksでは買えない書籍があったり、週刊少年ジャンプは集英社直営の電子書籍書店でしか買えなかったりする。紙の本を売っている書店なら、基本的に注文さえすればほとんどの本を買うことができるのと比較すると、不便なことこの上ない。

 しかも、電子書籍は売買契約ではない、という問題もある。厳密には、読者はお金を払って電子書籍データを閲覧する権利を得ているに過ぎないのだ。普段の利用では権利関係までを気にすることもないのだが、これが問題になるのは電子書籍書店がサービスを終了したとき。サービス終了時点で電子書籍の閲覧ができなくなり、現金による払い戻しも受けられない場合がほとんどだ。電子書籍書店の消長は激しく、ここ数年ローソン、ツタヤ、富士通、読売新聞など名だたる大企業が運営する電子書籍書店が次々にサービスを終了している。

 このように、現状の電子書籍書店はユーザーから見た利便性が高いとはいえない。一方で漫画村は上記のようなカラクリ一切抜きで、好きなだけ漫画が楽しめるという寸法。しかも無料となれば、多くの読者が漫画村に殺到したのも無理はないところではないだろうか。
 漫画村は、出版業界が紙の本を売る商売から電子書籍を売る商売へと移行を強いられ、市場が混とんとしている今のタイミングで、スキをついたみごとなビジネスだったといえるかもしれない。

(つづく)
【深水 央】

 
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