2024年05月01日( 水 )

KWS・シャボン玉石けん対談~マンホール石けんに込めた水環境への想い

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(株)北九州ウォーターサービス
代表取締役社長 富増 健次 氏

シャボン玉石けん(株)
代表取締役社長 森田 隼人 氏

 (株)北九州ウォーターサービス(北九州市小倉北区、以下KWS)は、北九州市下水道100周年にともない、シャボン玉石けん(株)(北九州市若松区)とコラボし、無添加石けん「マンホール石けん」を1万個製造した。すでに下水道関係イベントなどで配布されている。同社の無添加石けんは、有害な化学物質を含まず、体を始め、自然環境にも優しいのが大きな特長。下水道と無添加石けんとのコラボは、的を射た試みだといえる。今回、KWSの富増健次社長とシャボン玉石けんの森田隼人社長に、対談してもらった。

行政と民間が力を合わせる精神

(株)北九州ウォーターサービス
富増 健次 代表取締役社長

 富増 私の最初の職場は北九州市の公害対策局で、公害患者の医療や補償などの仕事を行っていました。北九州市は、1970年ごろから空気や水などの環境が悪くなっていき、公害問題が起こって以降は、市内の民間企業が市役所と協力し、環境に優しい製造工程を確立するために、相当な努力をしました。今では、洞海湾でクルマエビが獲れるまでに水環境が改善されています。

 北九州市はこの経験を基に、公害問題を抱える海外のいくつかの都市に対し、上下水道技術を始めとするノウハウの移転に取り組んでおり、近年は、海外での水ビジネス展開にも踏み込んでいます。同市には、「行政と民間企業が力を合わせてやっていく精神が貫かれている」という感じがします。

 森田 そうですね。80年代には、環境再生をはたした奇跡のまちとして国内外に紹介されるようになっていますよね。

 弊社の創業の地は若松で、今年で創業108年、無添加石けんの製造を開始してからは44年になります。北九州市下水道発祥も同じ若松ということで、ご縁を感じています。

シャボン玉石けん(株) 森田 隼人 代表取締役社長

 弊社も昔は合成洗剤をつくっていたのですが、当時、先代社長の肌荒れが酷かったようで…。ただ、自社製品なので何の疑問ももたなかったのですが、国鉄から「無添加の洗剤をつくってほしい」という依頼があり、それを試しに使ってみたところ、10年来悩んでいた湿疹があっという間に良くなったんです。そんな自身の経験から、完全に無添加石けん1本の製造をするようになりました。

 富増 無添加洗剤に切り替えた後は、経営が大変だったでしょう。

 森田 ええ。合成洗剤のころの売上の1%以下まで落ち込みました。ただ、先代社長には強い信念があったのです。合成洗剤によって、ドブのなかにはイトミミズすらいなくなりました。「ミミズのいない土は死んだ土」と同じように、「イトミミズのいない水は死んだ水」です。その現状を見て、「環境や身体に悪いとわかったものを売るわけにはいかない」という信念がありました。

 厳しい時期が続きましたが、時代とともに世の中の環境に対する意識への強まりや、無添加石けんの肌への優しさが皆さまに伝わり、無添加石けんをお使いいただく方も少しずつ増えていきました。

 富増 先代社長は実に強い信念をお持ちでしたね。

無添加石けんノベルティーは下水道PRに最適なツール

 ――石けんのノベルティーのオファーは、どこまで対応できるのですか。

シャボン玉石けんが製造した北九州市下水道100周年を記念したマンホール蓋石けん

 森田 ノベルティーのご注文は、いつでも受け付けています。勾玉のかたちをした石けんや、競艇ボート、馬、トイレの便座のかたちをした石けんなど、いろいろなかたちをつくることもできます。

 大きすぎるサイズや、あまり細かいデザインだと対応できない場合がありますので、まずはご相談いただければと思います。弊社にご注文いただく方は、環境や安全に対する思いを込めたいというお客さまが多いです。

 富増 KWSがマンホール石けんを注文したのは、環境に対する思いを共有するという目的と、下水道とシャボン玉石けんさんが同じ若松が発祥の地であるというご縁があったからです。

 森田 まさに、これ以上ないマッチングですね(笑)。

 富増 下水道は地味なインフラで、なかなか宣伝するチャンスがないんです。最近はマンホールカードが出てきて、注目されています。マンホールのお菓子もありますが、環境に優しいマンホール石けんは、意味がありますし、北九州市でしかできないモノだと考えたんです。

 ――次の100年に向けての意気込みや期待などを。

 富増 北九州市を始め、周辺の自治体でも人が減っています。上下水道でいえば、料金収入が減り、技術職員も不足しています。小さな自治体では、下水処理場などを管理するのが難しくなっています。

 そこで北九州市では、広域化に関する周辺自治体との勉強会を行っています。下水道は今後、行政の垣根を越えて協力していく時代になると考えています。環境というものは、個々の自治体で努力しても限界があるんです。KWSとして、そのあたりをしっかり取り組んでいきたいと考えています。

 森田 弊社としては、より良い商品づくりや、使い方のご提案など、引き続き探求していきます。北九州市は、環境への取り組みに関して世界有数の都市です。市民への環境に対する意識づけをさらに加速させることは、可能だと思います。そして北九州市には、良い技術をもった民間企業がたくさんありますので、行政などとうまくコラボしていけば、より良いものづくりにもつながるのではないでしょうか。

【大石 恭正】

<COMPANY INFORMATION>
■(株)北九州ウォーターサービス
所在地:北九州市小倉北区浅野3-8-1
設 立:2016年4月
資本金:1億円

■シャボン玉石けん(株)
所在地:北九州市若松区南二島2-23-1
設 立:1949年5月
資本金:3億円

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