2024年05月02日( 木 )

スルガ銀行の不正な消費者ローンを検証する(後)

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2.スルガ銀行の計数について

(1)スルガ銀行の個人ローンの推移について  【表5】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆2011年3月期における「その他ローン」の残高は前年比わずか+42億円の2,632億円だった。しかし2012年8月にスマートデイズが設立され、アパートローンなどの融資が本格化。
・2013年3月期の「その他ローン」は前年比+882億円の4,037億円。14年3月期、15年3月期、16年3月期の3年間は毎年1,000億円を超える増加となっており、2017年3月期の「その他ローン」の残高は8,667億円となっており、6年間で6,000億円増加させているのがわかる。

◆17年3月期は前年比+877億円と1,000億円を切っている。スマートデイズが運営する「かぼちゃの馬車」の運営のつまずきが出ていることを表している。スマートデイズは2018年4月9、東京地裁に民事再生法の適用を申請し事実上倒産している。

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(2)住宅ローンの記載をしなくなったスルガ銀行の本音  【表6】を見ていただきたい。
◆2017年3月期の決算説明資料までは、個人ローンの内訳には「住宅ローン」と「その他ローン」が記載されていたが、2018年3月期の説明資料では、「有担保ローン」と「無担保ローン」に置き換えられており、過去の計数との連続性がない状況となっている。

◆住宅ローンの残高が記載されなくなったのは、大きく落ち込んでいるからではないだろうか。2018年3月期の第一四半期、第二四半期、第三四半期のすべてを有担保ローンと無担保ローンに置き換えたのは、大きく減少している住宅ローンの残高を記載すれば、スルガ銀行へ住宅ローンを申し込む人が少なくなることを恐れたからではないだろうか。スマートデイズの問題が経営に与える影響が如何に大きいかを物語っている証拠ではないだろうか。

まとめ

 筆者の知人である紀藤正樹弁護士が立ち上げた「スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団」の公式サイトは以下のようになっている。

スルガ銀行・スマートデイズ被害弁護団の公式サイト

 紀藤も副団長として弁護団に参加しています。弁護団長は、原発訴訟で有名な河合弘之弁護士と、元日弁連消費者問題対策委員会委員長で、霊感商法などの被害救済でこちらもとても有名な山口広弁護士が、二人体制で就任し、紀藤のほかに、副団長も二人体制として、住宅被害の問題に長年取り組んでこられた谷合周三弁護士が副団長に就任しました。
 紀藤は、現在、安愚楽牧場被害対策弁護団の団長も兼任していますので、とても大変ですが、同じ投資被害の問題として、日本の問題状況の縮図があらわれてと思いますので、救済に向けて頑張りたいと思っています。
 スルガ銀行・スマートデイズ(旧スマートライフ)の引き起こした今回の被害は、被害者数が800人以上、被害額も
1,500億円を超えると予想され、2013年に発覚したMRIインターナショナルと同程度ないしそれ以上の規模の消費
者被害の様相を呈しています。

 今回の不正な消費者ローンの中核となったのは、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズ。通常のアパート経営は、アパートの所有者の責任で入居者を確保することになるが、同社はいわゆる「サブリース」と呼ばれるシステムを採用。入居者の募集なども同社が行い、所有者には長期にわたる家賃の支払い保証をしていたといわれる。

 入居者が集まらずスマートデイズ側が支払う家賃を大幅に減額したことが発覚のきっかけとなり、破綻に追いやられることになった。

 融資のプロである銀行、とりわけ消費者ローンに特化しているスルガ銀行である。一部の行員が不正に関与していることは間違いないと見られている。スルガ銀行は第三者委員会を立ち上げ
真相を究明するとしているが、もし万一、残高の多い住宅ローンまで不正融資していることがあれば、大きな社会問題となることが予想される。

 今年は場所を変え、6月28日10時より「プラザヴェルデ」の3FコンベンションホールB(沼津市)で定時株主総会を開催したが、同9時の開場前から多くの株主が詰めかけ長蛇の列ができたという。株主総会では、多額の借金にあえぐ物件所有者らから「組織的な不正だ」などと怒声が相次ぎ、通常は30分で終わる株主総会は3時間を超える大荒れの展開となった。

 所有者側は弁護団の団長を務める河合弘之弁護士ら約40人が出席し、30年以上トップに君臨する岡野光喜会長の経営責任を繰り返し追及。

 スルガ銀行は【表7】の通り、今までは地銀の優等生だった。しかし不正な消費者ローンが表面化し裁判となったことから株価は急落している。今後の経営に与える打撃は深刻で、一転して経営統合する立場から経営統合される側に回ったようだ。

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(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
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