九州北部豪雨から1年~災害が頻発する日本列島 1人ひとりが事前の備えを(後)
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“守り”でなく“攻め”の「立地適正化計画」
こうした杉本氏のいう事前復興の考え方に通じるものとして、以前、九州大学アジア防災研究センターの塚原健一教授からもご教示いただいた、「立地適正化計画」についても触れておきたい。
今の日本では人口減少・高齢化が進むなかで、とくに地方都市においては、地域の活力を維持するとともに、医療・福祉・商業などの生活機能を確保し、高齢者が安心して暮らせるよう、地域公共交通と連携して、コンパクトなまちづくりを進めることが重要となっている。
そうしたなか、2016年9月に改正・施行された都市再生特別措置法のなかで、各都市での「立地適正化計画」の策定を求める旨が盛り込まれた。この「立地適正化計画」とは、急激な人口減少と高齢化が進むなかで、人々の住まいや公共施設、医療施設、商業施設などを一定の範囲内に収めて「コンパクトなまちづくり」をするのと同時に、市街地の空洞化を防止しようとするもののこと。一見すると、人口減少や財政事情の悪化などへの対応としての“守り”の施策と捉えられがちだが、そうではなく、市民生活のクオリティ向上や密度の経済による「地域の稼ぐ力」の向上など“攻め”の施策だ。何を重視して立地適正化計画を策定するかは、自治体によってさまざま。「地域公共交通の維持・充実」や「公共施設の再編」「都市再生や中心市街地活性化」「産業振興」「医療・福祉」「近隣自治体との広域連携」など、各自治体が抱える課題はいろいろあり、そのなかにはもちろん防災も含まれている。立地適正化計画に防災を取り入れている自治体としては、神奈川県藤沢市の事例があり、同市では、独自の防災対策先導区域の設定に加え、津波避難場所としての公共施設の有効活用および民間建築物との協定の締結などを設定している。自然災害が頻発する日本においては今後、各自治体で立地適正化計画を策定する際、防災という観点を盛り込むことは必須事項だといえよう。
実は熊本市においては、すでに立地適正化計画の策定がされている。しかし、熊本市の立地適正化計画が策定されたのは16年4月で、熊本地震が発生する前のこと。掲げられている都市構造の将来像は、コンパクトで持続可能な都市づくりに向けた、誰もが移動しやすく暮らしやすい「多核連携都市」というものだった。そのため、熊本地震を経た今では、防災への観点を取り入れたものへと計画の修正を余儀なくされるだろう。
朝倉市においても、九州北部豪雨発生前の17年2月末時点での施政方針で、森田俊介前市長が「市の都市計画区域全体を見渡して、居住区域の誘導および医療・福祉施設、商業施設などの都市機能の計画的な立地誘導を図り、公共交通と連携したまちづくりを進めていくための立地適正化計画の策定に着手いたします」と述べていた。だが、その後の被災により、立地適正化計画の策定は進んでおらず、こちらも改めて策定を行う場合には、防災という観点を盛り込むことは避けては通れまい。
「事前復興」にしろ、「立地適正化計画」にしろ、重要なのは地震リスクの高いところや洪水の発生確率が高いところを避けたうえで、いかに都市機能を集中・効率的に配置し、新たなまちづくりを進めていけるか。熊本や朝倉における今後の災害復興のまちづくりだけでなく、各地方自治体での未来に向けた都市計画においても、積極的に考えていかなければならないだろう。
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6月17日には群馬県南部を震源とする震度5弱の地震が、さらに6月18日には大阪府北部を震源とする震度6弱の地震が発生した。内閣府の発表によると、大阪府北部地震では大阪府内で死者4名、2府5県で負傷者428名(うち重傷者15名)が確認されたほか、住家の全壊6棟、半壊57棟、一部破損2万3,544棟という被害が出ている(7月2日午後6時時点)。熊本地震を例に挙げれば、まだまだ強い地震が発生する可能性もあり、予断を許さない状況だ。
また、北海道では、7月2日から3日かけて、前線の停滞にともなう記録的な大雨が発生。上川地方や空知地方などで河川が氾濫し、田畑や住宅が浸水するなどの被害が出ている。日本に暮らす以上、誰しもが、いついかなるときに災害に見舞われるかわからない。7月5日には、九州北部豪雨の発生からちょうど1年の節目を迎えるが、これを機会に今一度、それぞれが自分の身の回りの防災について意識してみてはいかがだろうか。事前に考えておくべきことを考え、最善の策を講じておくか否かにより、災害発生時にもたらされる影響は雲泥の差となるだろう。災害は決して他人事ではない――。
(了)
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