2024年04月20日( 土 )

自然災害と事業保障

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(株)アンツインシュアランス 玉井 省吾 代表取締役社長

 九州北部豪雨の発生から、1年が経ちます。ある損害保険会社によると、1社で保険金請求約2,200件、保険金約17億円を支払ったと聞きました。さかのぼると、2016年4月の熊本地震、11年3月の東日本大震災と、日本国内では近年さまざまな自然災害が発生しています。日ごろから、企業を取り巻くさまざまなリスクへの対策を提案させていただいておりますが、自然災害に対するリスクマネジメントに完全はありません。ただし、できるだけ最小限に食い止める準備は重要です。今回は、自然災害に企業が備えるべき対策として、今一度見直してほしいポイントをお話しします。

 まず1つは、企業・事業者が保有する「建物」「什器備品」に対する補償です。この場合の「建物」は事務所や工場、店舗などで、「什器備品」は機械設備などです。「建物」「什器備品」に対する補償は、火災保険で補償されますが、保険の対象・補償内容を十分に確認して加入することが大切です。補償される事故の種類は商品によって異なりますので、事故が補償の対象外ということで保険金が支払われないケースもあります。地震や集中豪雨、洪水、台風などの自然災害に備え、契約を十分に確認する必要があります。

 もう1つは、事業の「売上」に対する補償で、工場や店舗が稼働できず、売上減となった場合の補償です。これは、お客さまの占有物件(店舗、工場など)が自然災害などによって損害を受け、営業が休止または阻害されたために生じた損失に対し、休業保険で補償されるものです。隣接物件や電気・ガス・水道など、直接仕入先・納品先物件などの損害による休業損害なども補償される特約もありますので、こちらも契約などを十分に確認することが必要です。

 あるお客さまが、先の九州北部豪雨で被害に遭われました。経営されていた飲食店が浸水し、長期の営業休止を余儀なくされたのです。営業再開後に保険金の請求をしましたが、店舗・什器に対する保険金はお支払いの対象とならず、休業損失に対する保険金のみのお支払いとなりました。保険契約のなかの1つの特約を付加してなかったため、店舗・什器に対する保険金が支払われなかったのです。契約時には予想もしなかった大きな災害がもたらした結果でした。

 このように、自然災害は我々の予想を大きく上回ることがあります。これを機会に、自然災害に対するリスクに備えて、契約されている契約内容を十分に把握、確認されてみてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)
(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長
1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2018年1月より現職。

 

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