2024年10月13日( 日 )

ZOZO前澤社長の株価引き上げ大作戦

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 ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイの前澤友作社長は7月17日、自身のツイッターでプロ野球界参入への意欲を表明した。シーズン終了後に球界に提案するという。突然の表明に球界はどよめく。いまや“時の人”である。

ド派手な金満ぶり

 スポーツ紙、芸能誌、テレビのワイドショーは競って、(株)スタートトゥデイの創業者、前澤友作社長(42)の金満ぶりを報じている。
 「お金は貯めずに使ってしまう」がモットーで、“日本で一番買い物をする男”の異名がついているそうだ。自宅や倉庫にワインを3000本以上保管。車は世界で77台しかないという1億5,000万円以上するアストンマーチンのほか、ブガッティ・ヴェイロンなどのスーパ―カーを多数持ち、プライベートジェットも所有している。
 2017年5月には、米国人画家、ジャンミシェル・バスキアの絵画を1億1,050万ドル(当時の為替ルートで約123億円)で落札して美術界で話題になった。
 プライベートもド派手だ。女優の剛力彩芽さん(25)と、プライベートジェットでW杯ロシア大会決勝戦をそろって“日帰り”観戦し、芸能界が大騒ぎになった。
 前澤氏は千葉県鎌ケ谷市生まれ。早稲田実業高校在学中、バンドを結成し活動。バンドの活動資金を得るために海外から買い付けた商品の通信販売を始めたのが創業のきっかけで、スマホの普及を追い風に、アパレル通販サイトとして急成長した。
 同社の18年3月期の年間配当は1株29円。前澤氏は同社株式の37.94%を保有しており、受け取った配当金は34億円也。それが、大盤振る舞いの軍資金になった。
 そのド派手な金満ぶりは、1980年代後半に熱狂と陶酔の時代を駆け抜けていったバブル紳士たちの姿と重なる。バブル崩壊後、そのバブル紳士たちは経済界の表舞台から姿を消した。前澤氏は、大丈夫なのか。

グローバルアパレルTOP10入りを目指す

 前澤友作氏は4月27日、決算発表の席上、「オンラインSPA世界NO.1」「グローバルアパレルTOP10入り」を目指すとぶち上げた。スライドには、TOP10アパレルの時価総額(18年4月末現在)が表示された。
 1位はルイ・ヴィトンブランドで有名なLVMH(フランス)の19兆円。2位はスポーツウェアのNIKE(米)の11兆円。3位はヤングファッションのZARA(スペイン)の10兆円。国内勢ではユニクロのファーストリテイリングが5兆円で9位だ。
 同社は10月1日付で、社名をスタートトゥデイから「ZOZO(ゾゾ)」に変更し、「第2の創業期」と位置付けている。そして、オンラインSPA世界1位、グローバルTOP10入りを目指して、時価総額を引き上げると宣言したのである。
 グローバルTOP10入りには、2つの壁が立ちはだかる。1つは、ユニクロやジーユーを世界展開するSPA(製造小売)国内最大手ファーストリテイリングの存在だ。オンラインSPA世界1位になるには、まずファーストリテイリングの時価総額を上回らねばならない。
 2つ目は、海外展開だ。国内ではアパレル通販の雄だが、海外での知名度はゼロに等しい。海外で、その存在感を高めなければ、グローバルTOP10入りは、ただの妄想でしかない。
 その難問を一挙に解決するために、昨年プライベートブランド(PB)「ZOZO(ゾゾ)」を立ち上げた。ゾゾの海外展開に備え、社名とPBを統一。2021年3月期までにPBの取扱高を2,000億円とするという高い目標を掲げた。
 7月3日からは世界72の国と地域で、Tシャツとデニムパンツ、サイズを測るために必要な採寸用ボディスーツ「ゾゾスーツ」10万着を無料で配布している。
 同社が新たな経営の柱に据えるPB「ゾゾ」が狙う高品質で割安なベーシックアイテム(使い回しが利く服)は、ユニクロが標榜する商品戦略と重なる。デニム、Tシャツ、ボタンダウンシャツは価格設定もユニクロに近く、国内ではユニクロに闘いを挑むことになる。

話題づくりで株価が上昇

 前澤氏は、株価引き上げのコツを心得ている。グローバルアパレルTOP10入り、PBゾゾブランドの10万着無料配布。話題性は十分だ。さらに、プロ野球への参入を表明して、知名度は全国区になった。
 IT業界の大先輩であるDeNAの南場智子氏、ソフトバンクグループの孫正義氏、楽天の三木谷浩史氏に次いで、4番目の球団運営を狙う。球団をもつことは、知名度を高めることにつながり、個人投資家を引き込む有力なカードになるからだ。球団運営は株式市場では買い材料なのだ。
 作戦は的中し、株価は急騰した。7月18日の株価は4,875円の高値をつけ、時価総額は1兆5,192円と1兆5,000億円を超えた。前澤氏は、スタートトゥデイの株式37.9%を保有しており、その株価で換算すると、保有株式の資産額は5,762億円になる。
 米経済誌フォーブスが今年発表した2018年版「日本の富豪50人」に、前澤氏は資産額2,830億円で18位に入った。資産総額の首位は、ソフトバンクグループ会長兼社長、孫正義氏で2兆2,930億円だ。株価の引き上げ策が功を奏したといえる。

年収1億円で「天才」募集

 「70億人のファッションを技術力で変える 7人の天才と50人の逸材を求む」
 スタートトゥデイの子会社、スタートトゥデイテクノロジーズは4月2日、高度な技能を擁する技術者を最高年収1億円で採用する求人サイトを公開した。募集する人材は人工知能や人間工学、行動経済学などの博士や研究員、ウェブデザイナーやITエンジニアが対象。「天才」枠は最大7人で報酬額は年1,000万円から1億円。「逸材」枠は最大50人で同400万円から1,000万円とする。
 スタートゥデイテクノロジーズは4月1日、システム開発など子会社3社が統合して誕生した。新会社の社員数は200人。7月2日、研究開発チーム「スタートトゥデイ研究所」の福岡拠点を開設した。ITエンジニアを抱えるスタートトゥデイテクノロジーズの社員で構成する。
前澤社長は、時価総額を引き上げるために、さまざまな模様の花火を打ち上げる。大輪を咲かせて、新たな成長段階に入れるのか。話題先行型の危うさがつきまとう。

【森村 和男】

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