2024年05月09日( 木 )

人々の健康を守るために 創業50年を迎えた臨床検査総合企業(後)

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(株) シー・アール・シー

多角化と新業態でチャレンジを続ける

▲江川洋相談役(左)と江川智広社長(右)

 ここまで順調に拡大を続けてきた同社だが、医療に関連する業界であれば、逃れられない変動に常に晒されている。厚生労働省が行う、診療報酬改定だ。保険診療で行われる医療行為には、それぞれ保険点数が定められており、この点数に応じて医療費が決定される。この診療報酬は2年に1度改定が行われ、点数が見直されているのだ。
 この診療報酬改定は、当然ながら医療に関連する業務をコア業務とする同社にとって非常に大きな影響を与える。今回の改定では、診療本体に関わる報酬が上がるものの、同社が行う臨床検査のような周辺分野の診療報酬点数は引き下げとなる。これは当然ながら、ダイレクトに同社の売上に関わることになる。現状、今回の診療報酬改定では1〜2%程度の売上減という試算が出ているとのこと。国には医療費全体を削減するという大目標がある以上、「全体では減額」という前提自体は崩れない。かつての診療報酬改定では、臨床検査に関して10%を超える減額が行われたこともあるが、臨床検査の重要性が再認識された結果、下げ幅はより小さくなったという。
 これら定期的に行われる法改正、制度改定にどう対応するかは大きな課題だが、企業としては、このコア業務以外に安定した収益を確保することで、さらなる安定経営の土台を築くことができるといえるだろう。
 そのため、同社は食品・水質・大気などの分析を行うCRC食品環境衛生研究所、医療機器・医療用具・検査用品などの販売、人材派遣・人材紹介などを行うシー・アール・シー・サービスなど、「医薬品の取り扱い以外はすべて」(江川洋相談役)といえるほど幅広い医療関連分野に手を広げ、経営の安定を図っている。
 団塊の世代が75歳を超える、いわゆる「2025年問題」が迫るなか、医療関係産業は今後の事業の在り方について大きな課題に直面している。高齢者が増えると検査のニーズ自体は増えるが、診療報酬がどう変わっていくのかは同社にとっては不安要素だ。現在、同社が運営する衛生検査所では、心電図の記録やCTやMRIを撮影して診断する行為は、法的な縛りのため行うことができない。そこで法改正のうえ、「臨床検査所」とすることで前述の検査も一括でできるようにすべきだ、というのが洋相談役の意見だ。CTやMRIがない病院は患者からの評価が下がる傾向にあるが、実際問題としてこれらの医療機器は非常に高額で、かつ検査結果の読み取りには高度な能力が必要。開業医やクリニックで設置するのは難しい。現在行われている臨床検査に加え、CTやMRI、心電図などを含めて一括でアウトソーシングできる臨床検査所の創設に、洋相談役は業界をあげて取り組みたいとしている。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:江川 洋
所在地:福岡市東区松島3-29-18
設 立:1969年7月
資本金:2,000万円
TEL:092-623-2111
URL:http://www.crc-group.co.jp

Profile
江川 洋(えがわ・ひろし)

 1940年7月、中国・大連市生まれ、佐賀県浜玉町育ち。唐津東高校卒。九州大学医学部附属衛生検査技師学校(現・九州大学医学部保健学科)を卒業後、同大学中央検査室勤務を経て、67年にセントラル医学研究所(現・(株)シー・アール・シー)を創業。現在、シー・アール・シーの代表取締役相談役を務める。趣味はゴルフ、観劇、読書。

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