2024年04月27日( 土 )

西中洲樋口問題に見る、建設業法の限界

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 地場有力ゼネコン、西中洲樋口建設が5月21日、建設業許可の廃業届を提出。10日後の31日には新たな建設業許可を県に申請し、7月30日に許可が出ている。福岡の建設業界が固唾を飲んで見守った約2カ月間の出来事――そのなかで見えた問題点を整理した。

予言されていた7月の復活

 同社前代表取締役 横尾博氏の罰金刑(女性への暴行事件)を受け提出された廃業届。市から受注した大型案件を複数抱えるなかでの出来事に、福岡の建設業界は一時騒然となった。
 同社は、廃業届の提出から1カ月が過ぎた6月25日、下請業者を本社に集めて説明会を開催。ついに沈黙は破られたが、そこで現代表取締役の樋口征男氏が話した内容には、2つの注目点があった。

(1)「6月14日に県の再調査を受けて、何ら問題ないはずだ。社長も交代した。あとは、7月20日ごろに許可が下りる」

(2)「博栄建設来年にはAランク。筑糸建設もBランクに上がる」

 まず(1)についてだが、なぜ、県から建設業許可が問題なくもらえるのか。樋口代表は「7月20日」という具体的な日付まで示している。県の担当課は「7月20日前後に許可が出るとは言っていない」と事前通知を否定するが、同社と県に深い関わりがあるのは事実だ。

 樋口代表の次男、樋口明氏は県議会議員。2003年4月に初当選をはたし、県議会議長にまで登り詰めた。同社前代表 横尾氏の罰金刑が確定した18年1月から、同社が廃業届を提出した同年5月21日までの間も、明氏が県議会議長を務めていた(5月22日に県議会議長を退任)。また、樋口代表が北九州の中村明彦県議と極めて近い関係にあることも確かだ。
 県庁組織が同社に“忖度”し、許可の取り消し逃れに手を貸した――同社と県の関係性から、その見立てを否定することはできない。

 次に(2)について。入札参加資格の格付け(ランク)を上げるには、公共工事の発注機関の審査が必要になる。審査対象となるのは、過去の工事施工実績や表彰など。審査結果を踏まえて、ランクを決定するのはあくまで発注機関であり、一業者に決定権はない。

 樋口代表がランクアップを断言した背景には、髙島宗一郎福岡市長の存在がある。同社は、年1~2度開かれている髙島市長の政治資金パーティーのパーティー券を、下請業者などの仕事関係先に購入させていた。少ない時で2~3枚、多い時には30枚~50枚のパーティー券を購入するよう要請を受けた企業もおり、多額の政治資金が同社から市長側に提供されていた格好だ。
 関係者の話では、同社の関係企業だけで1,000万円以上の政治資金が集まったこともあるという。政治資金規正法は、20万円以上のパーティー券購入をあっせんした者がいた場合、その者の氏名や住所、職業などを政治資金収支報告書に記載するよう義務付けている。しかし、高島市長の資金管理団体「アジアリーダー都市研究会」の平成26~28年の政治資金収支報告書には“あっせん”についての記載はない。

問われる存在意義

 建設業法第二十九条に明記されている通り、本来、西中洲樋口建設は許可の取り消し処分となる。しかし、建設業法はあくまで建設業許可をもつ企業を対象としている。廃業届を提出し、許可を失効した同社に、同法の効力がおよぶことはない。取材の過程で、県の担当課から何度も聞かされた建設業法の現実だ。

 「(西中洲樋口建設の)処分はできない」「(新たな)許可の申請があれば、対応せざるをえない」。今回の問題に関する県の態度は、一貫して西中洲樋口建設寄りのものだった。思わぬ抜け道と、受動的な対応――建設業法、そして県の存在意義が問われている。

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