スルガ銀行の不正融資を検証する(番外編1)
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地方銀行でありながら個人融資に特化した独自路線を歩み、高収益を上げていたスルガ銀行の岡野光喜頭取から社外取締役や社外監査役の招聘を受けると、皆喜んで引き受け、断る者はいなかった。『招聘』には「目上の人が目下の人に対して地位などを用意して招く」といった意味も含まれている。岡野頭取が白羽の矢を立てたのは、その時代を代表する日本マイクロソフト社長だった成毛眞氏。同氏が2000年5月に同社の取締役特別顧問に就くと、間髪入れず、その6月に社外取締役として招聘。しかし、今春からスルガ銀行のシェアハウスのオーナーなどへの不正融資が表面化し、大きく取り上げられるようになると人事は一変する。
【表1】を見ていただきたい。今年6月28日に開催された株主総会で退任した役員名簿である。
<この表から見えるもの>
◆18年の間、社外取締役だった成毛眞氏が退任。今年6月の株主総会以降、役員名簿にその名はなくなっている。◆(株)メディヴァの大石佳能子社長は3年間、社外役員に就いていたが退任。去就が注目されていた江崎グリコ、参天製薬の社外取締役はそのまま務めている。
◆伊東哲夫社外監査役(非常勤)も退任。静岡県の弁護士会会長を務めており、スルガ銀行の監査役でいることに批判が出ていることもあり、任期満了を良しとして退任したものと見られる。
~第三者委員会の調査結果~
スルガ銀行によるシェアハウスの不正融資について、第三者委員会(委員長/中村直人弁護士)は9月7日調査結果を公表し、融資書類の改ざんなどに多くの行員が組織的に関与していたとして経営陣の責任を厳しく指摘。それを受けて、5人の役員が責任を取って辞任することになった。【表2】を見ていただきたい。辞任した岡野光喜会長ら5人の経歴である。
<この表から見えるもの>
◆岡野光喜会長は1985年に頭取に就任。以来、会長に就任する2016年6月までの31年間その座にいた。しかし会長となった2年余りもその権勢は揺るがなかったという。むしろ米山社長は傀儡との見方が強かったという。◆スルガ銀行の営業目標はトップダウンで策定されており、厳しいノルマを課していたといわれる。営業を重視する一方で、法令順守を軽んじる風潮が蔓延。営業本部パーソナル・バンク長の麻生治雄専務執行役員(当時)らがシェアハウスの融資を積極的に取り組んでいるのを見て、社長につぐ実質的な最高意思決定者だった実弟の岡野喜之助副社長は一時止めかけたが、2016年7月に脳出血で急逝したため、不正融資を実質的に止める者がいなくなり、その後も続けられ、ついに大きな社会問題となったといわれる。
◆岡野副社長には2018年3月期に5億6,500万円の「退職慰労金」が支払われ、その折、岡野光喜会長の報酬額が1億9,700万円、米山社長は1億6,800万円と高額であったことがわかり、物議を醸したことは記憶に新しい。
<まとめ>
岡野会長や米山社長らを含め辞任した5人の経営陣が、業務を現場の執行役員に任せきりにしたことが大きな要因といわれるが、経歴から見れば自ら手を汚しているのがわかる。一方、取締役会に出席はするものの、行内の声を聴かず、唯々諾々として報酬だけを受け取っていた社外取締役にも、その責任の一端はあるのではないだろうか。(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】法人名
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