2024年04月20日( 土 )

中古戸建をリノベで再生、築113年の社屋活用で地域活性化を

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(株)ダイドー不動産

 福岡県飯塚市。JR天道駅からほど近く、市を南北に貫く長崎街道沿いには、かつての賑わいを思わせる古い商家が今も軒を連ねる一角がある。そのなかでひと際目を引くのが、築113年の実家をリノベし、本社社屋としている(株)ダイドー不動産だ。同社代表取締役の松本幸子氏は、この地で酒店、自転車店、造園業などを営んできた松本家の三代目。同社は飯塚市を中心に不動産の売買、賃貸、管理などを行っているが、現在注力しているのが、「DAIDO-STYLE」というコンセプトで手がける中古戸建住宅のリノベ販売だ。

▲(株)ダイドー不動産
 松本 幸子 代表取締役

 「『住宅にかけるお金、高すぎるのでは?』という疑問は、誰でもお持ちになるのではないでしょうか。この疑問に、弊社は『中古戸建住宅を購入し、リノベする』という解答をご用意しました」と話す松本代表。現在、ダイドー不動産が事務所として使っている建物自体、築113年の古い商家をリノベしているだけに、説得力は抜群だ。

 「『新築住宅を建てたいんですが、良い土地はありませんか』と来店されるお客さまに中古戸建リノベについてご説明すると、非常に驚かれます。何しろ、新築だと十数万円かかる固定資産税が、中古リノベだと3~4万円とまったく違いますから。賃貸を探しているお客さまにお話ししても、やはり『その選択肢があるとは』と驚かれます」。

 「中古」という言葉には、どうしてもパッとしないイメージがあるが、同社がこれまで扱ってきたリノベ物件を見ると、その先入観はあっという間に払しょくされる。内装どころか天井や床、壁、さらには間取りまで、躯体以外はほとんど様変わりしているリノベ物件ばかりなのだ。

 「中古戸建リノベは、金融リテラシーが高いお客さまに、より選ばれている傾向があります。たとえば50代で住宅を建てようと考えると、仮に10年間住宅ローンの減税などの軽減措置があったとしても、定年退職後の収入が少なくなった時期に支出が増える計算になります。それを考えると、中古リノベのほうがより負担が少ないということになりますね。あるお客さまがリノベに2,000万円もかけることになったので、私ども側からつい『そんなにかけるなら新築のほうが』と言ってしまいましたが、それでも固定資産税が安いメリットのほうが大きい、ということでした」。

 「オーナーが誇りに思える住宅を提供したい」という同社の信念が、「中古戸建リノベ」という住宅供給の新しいかたちとマッチしたことで、新たな潮流を生んでいる。

 また松本代表は、古くからこの街で商いを営んできた一家として、地域の活性化にも取り組む。「今は人通りが少ない天道商店街ですが、弊社同様に昔から事業を続けてきた米穀店の土師物産さん、瑞穂菊酒造さん、須山硝子店さん、安部写真館さん、篠崎商会さん、天道ホルモンさん、穂波タクシーさんなどが、それぞれの試みで地域を元気にしようとしています。私たちも不動産仲介だけでなく、地域の皆さまをつなぐ仲介業をやっていきたい」と語る松本代表。かつて多くの人々が交流をつないでいた築113年の社屋に、「人々が集まる場」という役割が改めて期待されている。

【深水 央】

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