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2018年09月19日 12:02

アジア、世界を襲う水と食糧の危機~今こそ日本の出番!(1) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 9月16日から21日まで、東京ビッグサイトを会場にして、「第11回国際水協会・世界会議・展示会」が開催されている。100カ国を超える国々から参加者が集い、水関連の最先端技術を紹介し、その応用について意見を交わすのが目的である。展示会には6,000人が訪れる盛況ぶりだ。

 経済産業省では、この7月、「水産業の海外展開戦略」と題する報告書をまとめたばかり。日本政府とすれば、日本企業が有するさまざまな水関連技術や特許をテコにして、世界的な水環境問題の解決に率先して取り組む姿勢を内外に示すことを狙っているようだ。

 そうした背景には、世界的に水問題が深刻化している現実がある。地球温暖化の影響と思われるが、異常気象の猛威が荒れ狂うようになった。日本も例外ではないが、ハイチやフィリピンなど発展途上国では被害は計り知れない。自然災害は火山の噴火や地震など枚挙のいとまがないわけだが、台風や津波など水害も規模が拡大する一方である。河川や海岸線の管理も待ったなしといえよう。

 また、人口の増加や経済発展の結果、世界的に水の安定供給が難しくなっている。生活の安定や向上に水は欠かせない資源だ。2015年の時点で、6億6,000万人が安全な飲料水にアクセスできない環境に置かれている。さらに24億人もの人々が水の浄化施設の恩恵を得られない生活を余儀なくされているのである。これが世界の現状だ。日本政府の見通しでは、現状が続けば、「2030年までに世界は生活用水が40%も不足する事態に直面する」という。

 そうした最悪の状態を回避し、水環境を改善させる目的で、日本政府はODA(開発援助)として2012年から2016年の間だけでも65億ドルの資金を提供してきた。この分野で日本は世界最大の貢献をしていることは間違いない。ドイツ、フランス、アメリカをはるかに上回る協力を実施している。こうした貢献を可能にしているのが日本の誇る水関連技術である。

 とくに、「メンブレン・バイオリアクター(MBR)」と呼ばれる特殊な膜を通じて汚染水を浄化するテクノロジーは日本が世界のトップを走っている。この技術のおかげで、世界各地で下水など汚染された水がきれいな水に変身している。また、海水など塩分を含む水が飲料水に転換されるのである。

 とはいえ、こうした日本の先端技術は世界市場で見ると、まだまだ普及が限られている。その背景にあるのはコストの面もさることながら、海外市場の開拓における日本企業の積極性と柔軟性の欠如が影響しているようだ。日本政府のODAに「おんぶにだっこ」では猛烈な売り込み攻勢を仕掛ける欧米の水企業に太刀打ちできない。

 ヴェオリアやスエズ、テムズなど「ウォーターバロン」と異名をとるフランスやイギリスの企業に追いやられているのが現状だ。近年はMBRを製造する企業も増えており、シンガポール、中国、アメリカなどの企業が日本発の技術を基に市場の拡大に積極的に取り組んでいる。このままでは、日本が誇る「水技術」が水泡に帰してしまいかねない。官民一体となった日本発の水関連技術の輸出促進が望まれる。

 その意味では、日本の「浄化槽」は救世主になる可能性を秘めている。小型で軽量の浄水機器は水道管などの敷設の間に合わない途上国を中心に高い評価を得ているからだ。何しろ、海外では日本製の浄化槽は「jokaso」と日本語で呼ばれるほど定着しつつあるほど。とくに、汚染水問題で厳しい環境に置かれている中国では爆発的な売れ行きを見せている。2014年には1300台ほどだった輸出量が今や1万3000台ほどに急増している。

 実は、こうした浄化槽の性能検査を国が徹底的に行い、品質保証をしている国は世界でも日本だけなのである。海外の利用者からすれば、日本政府のお墨付きは大きな安心材料となっているわけだ。さらなる技術改良と輸出振興に日本独自の取り組みが期待されるところである。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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