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2018年10月08日 07:01

人工知能と経済の未来 2030年~来るべき雇用大崩壊時代を読む(後)

駒澤大学経済学部准教授 井上 智洋 氏

汎用人工知能が現実になったら・・・・・

▲企業経営者を中心に、たくさんの聴講者が集まった

 人手不足をAIロボットが補うからいいじゃないかという意見もありますが、実空間における労働作業はAIには置き換えにくくて、ここで人手不足が発生します。代替できないものとして建設現場スタッフ、飲食店の店員、介護スタッフなどいろいろなものがあります。それらの分野の人手不足は、30年ごろまで待たないと解消できないと言われています。さらに30年には、「汎用人工知能」が実用化されるとも言われています。汎用人工知能は、自己学習を行って自分で成長し、人間と同様にさまざまな状況で予測できない事態にも対応できます。従って、特定の分野を学習して能力を高める特化型人工知能より人間に近いといえます。

 汎用人工知能の研究者のなかには、汎用人工知能ができたらあっという間に賢くなって、人間をはるかに凌駕してしまうという人もいますが、当面は特化型人工知能の時代です。ここで鍵となるのが、新しい技術の導入がもたらす技術的失業という概念です。職業は、頻繁にではありませんが、消滅してしまうことが歴史上何度か起きています。新しい機械や新しい技術が出てきたときに、それによって仕事を奪われる人がいるわけです。しかし、完全に職業が消滅したり技術の進歩で長期的に失業率がどんどん上昇することは歴史上出てきていません。これまでであれば、失業したら新しい職業に移ればよかったわけです。

 汎用人工知能が出現したらどうなるかについては、未来のことなので詳細に論じることは難しい状況です。ただ、汎用型AIが実用化されたとしてもクリエイティビティー(創造性)、ホスピタリティー(接客)、マネジメント(経営、管理)に関わる仕事は残ると思っています。クリエイティビティーというと、芸術家などの仕事だと考えがちなのですが、たとえば商品企画に関する業務もクリエイティビティーです。これらの発想を重視するような仕事は今後非常に大事になりますし、まだまだ人間でなければ難しい仕事だと思っています。ただ、これらの仕事に絶対にAIが進出してこないということは言い切れないので注意は必要です。

ロボットがロボットをつくる

 汎用人工知能を始めとする高度なAIロボットが導入されて、生産のオートメーション化が進むとどうなるのでしょう。山梨県に、ファナックというロボットをつくっている会社があります。ファナックの工場では、ほぼ無人の工場のなかでロボットがロボットをつくっているというSF的な光景をすでに見ることができます。その光景が全産業に行き渡ったときの経済を考えてみましょう。人間の仕事も残ると考えてはいますが、要するに新しい技術を研究開発する、生産活動全体をマネジメントする、新しい商品を企画するというようなかたちで人間の仕事が残るということで、これまでと人間の立ち位置が変わるのです。洋服でいうと洋服を直接つくるのが機械で、洋服をデザインするのは人間。そういう棲み分けになっていくということです。こういうかたちに最初に実現できた国や企業が勝ちだと思っています。もし、技術的失業が怖いからという理由でAIロボットなどを導入するのをやめれば、停滞路線に入るでしょう。

 第4次産業革命では実空間にITが進出してきてしまうので、我々はあらゆる局面においてITと勝負しなければならなくなってしまいます。それにもかかわらず日本は、10代の子どもたちのパソコン普及率が主要国で断然低い状況にあります。スマホはみんなもっていますが、今後はパソコンが使えないとITスキルとしては弱い。ITスキルは今後も下がっていく可能性がありますので、この状況をどうにかしなければなりません。

 これから「頭脳資本主義」というものが到来します。これは神戸大学の松田卓也先生のつくった用語で、私なりに定義すると、労働者の頭数ではなくて頭脳のレベルがその企業の売上や一国のGDPを決定するような経済だということです。実際にそれを証明する流れとして今、世界で頭脳の奪い合いが起きています。

 日本はこの頭脳の奪い合いにも参加できていない状況にあって、むしろ日本から頭脳が流出しているのです。私は、格差が開くことはあまり良くないと思っていますが、世界から頭脳を買ってくるようなことをやらないと、日本がもたなくなるように感じています。

 最後に、これからは文系の方もいちどはプログラミングを経験すべきだと思います。これはアルゴリズム(計算方法、計算手順)的な思考を身に付けてもらうということと、技術者と対等にコミュニケーションができるようになって、AIに何ができて何ができないのかの判断ができるようになるためです。

 クリエイティブな仕事をうまくやっていくにはアナログ的なものも非常に大事です。文化の積み重ねというのが非常に大事で、福岡にもすばらしい文化が残っていると思いますが、そういうものをベースに何か新しいものをつくっていく、そんな社会、経済にすべきだと思います。

(了)
【文・構成:宇野 秀史】

<プロフィール>
井上 智洋(いのうえ・ともひろ)

駒澤大学経済学部准教授。慶應義塾大学環境情報学部卒業。早稲田大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。人工知能と経済学の関係を研究するパイオニアとして、学会での発表や政府の研究会などで幅広く発信。AI社会論研究会の共同発起人を務める。著書として、『人工知能と経済の未来』(文春新書)、『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版社)、『新しいJavaの教科書』(ソフトバンククリエイティブ)、『人工超知能』(秀和システム)、共著に『リーディングス 政治経済学への数理的アプローチ』(勁草書房)、『人工知能は資本主義を終焉させるか』(PHP新書)など多数。

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