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2018年10月05日 15:19

海難死亡事故の裁判中に経営トップ2人が円満退職?(前)~博多湾環境整備(株)

 1980年代から始まった博多湾の大規模な開発。シーサイドももちやアイランドシティ(人工島)など、大規模な埋め立て工事が行われるなか、影響を受けたのが漁業。漁業から港湾土木工事への転業が本格化し、漁業者や地元漁協などが中心となって福岡地場マリコンが設立され、博多湾関連の公共工事などを受注し、安定した業績推移のもとで強固な財務基盤を形成していく。そのうちの1社、博多湾環境整備(株)では、設立の趣旨から乖離した経営トップのモラルハザードが起きていた。

海難事故で社員死亡

▲事故が発生した作業船

 2016年11月に発生した従業員の海難死亡事故をめぐり、遺族と係争中の地場マリコン(海洋土木工事業者)・博多湾環境整備(株)。裁判では、問題視されている安全管理面のコンプライアンスについて争う姿勢を見せており、港湾関連で多くの公共工事を手がける企業としての資質が疑問視されている。そのようななか、今年8月27日付で代表が交代した。退任した前社長・木内俊弘氏は、その前年8月に退任した前会長・泉勝彦氏とともに、規定通りの役員退職慰労金を受け取る“円満退職”となった。事故発生時の最高責任者が、問題解決が見通せない状況のなか、事実上の“責任逃れ”を図るとは開いた口が塞がらない。

 同社は、当時の奈多漁協、箱崎漁協、福岡漁協、伊崎漁協の4漁協(現・福岡市漁協)の協同出資によって1983年2月に設立された。漁業からすると、まったくの異分野である港湾土木工事への転業であるが、官公庁からの公共工事を安定して受注し続け、実績と経験を積み重ねてきた。

 その一方で、福岡市のコンベンション機能を担う「福岡国際センター」の維持管理業務や、福岡市港湾局が入り、同社も本社を構える「博多港センタービル」の清掃業務、海浜公園の管理、博多湾内のアオサの除去や流木・ゴミの回収などの業務も手がけている。18年6月期は、国交省2件、福岡県1件、福岡市4件の公共工事を完了し、売上高13億530万円を計上。前期比▲27.4%の減収となったが、前期並みの営業利益6,757万円をあげている。

 約35年にわたる“漁業権補償”の結果、2018年6月期時点で内部留保は約9億円。無借金経営かつ自己資本比率63.1%、キャッシュも潤沢にあり、流動比率233.0%という強健な財務基盤を構築している。利益確保に苦しむ土木・建設業者が多いなか、誰もが羨む内容である。

 しかし、同社の実態が、社会の「公器」としての本来あるべき姿から乖離したものとなっている疑いが強まった。16年11月11日、アイランドシティ(福岡市東区)における船上作業を終え、作業船で東浜ふ頭に戻った同社社員が、午後6時30分ごろ、作業船から海中に転落。翌日になって水死体で発見されるという痛ましい海難死亡事故が発生したのだ。さらに、この事故をめぐり、亡くなった社員の遺族が、同社の「安全配慮義務違反」など責任を追及。昨年9月19日、同社を相手取り、慰謝料や遺失利益など計約1億円の損害賠償を求めて福岡地裁に提訴した。

 裁判資料や同社調査報告書によると、事故が起きた作業船には、海上保安庁が通達などで指導している舷梯や歩み板(幅40cm以上)が設置されておらず、事故発生時、1人で操船して係留作業を行っていたとされている。事故現場は、車の往来はあるも人通りは少なく、時期的に辺りが暗くなっている時間帯であり、海中に転落しても目撃者(救出者)が見込めない状況だ。警察で事故現場付近の防犯カメラを確認した遺族によると、亡くなった社員は、下船時に突然と姿を消したという。

 さらに、亡くなった社員は、過去、別の現場で、作業船から海中に転落したことが1回あったと話していたといい、身体の不調を訴えることもたびたびあった。遺族は、「最初の転落事故の後、会社がしっかりとした安全対策をとっていれば死ぬことはなかったのではないか」と悔しさを露わにする。

事故の責任追及に反論

▲ロープとタイヤで本当に
 「容易に降りられる」のか?(原告撮影)

 同社は、作業船に舷梯や歩み板が備わっていない危険な環境下で、社員に乗船・下船をともなう係留作業を1人でさせていたということになる。実際に事故が起きたことを考えれば、同社の責任が完全にないとは言い切れないだろう。しかし、遺族の訴えに対して、同社は「必要かつ十分な措置を講じていた」などと争う姿勢を見せているのだ。

 被告としての同社の主張は、事故発生現場の東ふ頭において、岸壁と船舶の高低差などから舷梯または歩み板を設置して乗船・下船することは現実的に困難であったというもの。舷梯や歩み板の代わりとして、「ロープをもって船からタイヤに足を降ろして岸壁には容易に降りられる」という。裁判所に提出された資料では、役員(現・代表取締役社長)自らが、ロープとタイヤによる乗船・下船を実演したという。

 また、舷梯や歩み板の設置の根拠となるのは、船内作業による危害の防止および船内衛生の保持に関し、船舶所有者のとるべき措置などを定めた「船員労働安全衛生規則」の第19条(通行の安全)だが、同条文第1項の「やむを得ない理由により、舷梯または歩み板を用いることができない場合、通行の安全を確保するために必要な措置を講じているときは、この限りでない」とあることから、「船舶の大きさ、岸壁の現場状況、波の状況などにより歩み板での乗船・下船が難しい場合などは、歩み板の設置がされないことはよくあること」と断じた。総じて、今回の事故は、「自らの不注意によって転落した事故」と反論しているのである。

 さて、この言い分には読者諸兄の多くも違和感を覚えることだろう。「やむを得ない理由により、舷梯や歩み板が設置できない場合」とは、潮位の高低や悪天候による海面の荒れ、船舶と岸壁の高低差などが考えられるが、いずれにしても、乗船・下船において、転落を始めとした事故の発生確率が高まっている状況である。実際に事故が起きている以上、安全面の必要な措置を放置し、「落ちた人が悪い」というのはいかがなものか。

 関係者によると、同社は本事故が発生した後、12月頭に社内で再発防止対策会議を開き、2名以上での航行・夜間航行、乗・下船の際は複数人で注意して監視すること、夜間係留時は船舶から照明を点灯すること、東浜岸壁への救命梯子の設置などを本事故に対する再発防止対策として取りまとめたという。経緯から考えると、事故に対する会社の責任を自覚していたはずなのだが、裁判では、これらの再発防止対策に関係なく、事故前の安全教育は十分であったとうそぶく。

(つづく)
【山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:犬丸 謙一(2018年8月就任)
所在地:福岡市博多区沖浜町12-1
設 立:1983年2月
資本金:2,940万円
業 種:港湾土木・浚渫工事ほか
売上高:(18/6)13億530万円
 

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