• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年10月10日 12:17

斜陽のパチンコ業界 苦戦が続くメーカーでは再編が加速(前)

 日本における「庶民のカジノ」として、一大商圏を築き上げているパチンコ業界。業界を末端で支えている遊技愛好者数は近年減少が続いており、いまだ20兆円の市場規模はあるが、業界に必要不可欠な遊技機(パチスロ・パチスロ)をつくるメーカーは軒並み業績が悪化。戦後、日本の“大衆娯楽”に終焉が訪れようとしているのか――。

明暗分かれた上場メーカー

 株式を上場しているパチンコメーカーは2018年10月現在、7社。(株)ユニバーサルエンターテインメント(以下、ユニバ)、セガサミーホールディングス(株)(以下、セガサミー)、フィールズ(株)、(株)平和、(株)オーイズミ、(株)SANKYO(登記上の表記は(株)三共)、(株)藤商事。発表された直近の通期決算概要は以下の通り。

※クリックで拡大

 7社中、前期比増収増益をはたしたのはSANKYOと藤商事の2社のみ(【表Ⅰ】参照)。両社ともに、人気コンテンツを採用したパチンコ台が市場から高評価を受け長期稼働し、業績を牽引した。残り5社は全社減収となっている。最終損益が前期比で47億9,200万円の大幅増益となったフィールズでさえ、赤字からの脱却ははたせていない。はっきりと明暗が分かれた大手パチンコメーカー7社だが、異口同音に『規制強化』が業績に影響を与えた―または、今後の業績に影響をおよぼすと述べている。

 ここで言及する規制強化とは、18年2月に施行された「風俗営業などの規制および業務の適正化などに関する法律施行規則および遊技機の認定および型式の検定などに関する規則の一部を改正する規則案」(以下、改正風営法)のことだ。

《改正風営法のポイント》
 パチンコ:1回の大当たりで得られる出玉の上限2,400個⇒改正後 1,500個
 スロット:1回の大当たりで得られるメダルの上限300枚以上⇒改正後 300枚まで

 改正風営法の施行に備え、メーカーは早い段階から規制に対応した機種=「新基準機」の開発を余儀なくされたが、規制に対応していない機種=「旧基準機」がすぐにパチンコホールから撤去されるわけではない。パチンコホールは、ホール内における旧基準機の設置割合を段階的に減らしていき、最終的に21年1月末までに完全撤去すれば良いのだ。

 この3年間の時限措置を生かし、遊技者が勝ちにくい=遊技者に敬遠されやすい新基準機の導入を進めるのではなく、すでに相応のファンをもつ、一撃で大量の出玉・メダル獲得が期待できる旧基準機の再導入・増台に力を入れるホールは少なくない。1人でも多くの客を繋ぎ止めておきたいホールからすれば、当然の選択といえる。この結果、旧基準機が流通する中古市場は盛り上がりを見せたが、メーカーが売り出した新基準機に対する市場の反応は淡泊なもので終わり、15年には、倒産や事業撤退が相次いだ【表Ⅱ】。

※クリックで拡大

 こうしたホールの新台の買い控えは、メーカーの足元を大きく揺るがした。上場メーカー6社の年間販売台数【表Ⅲ】は、SANKYOと藤商事の2社を除き、軒並み前期比で10万台以上減少している。

※クリックで拡大

 メーカー界の雄、ユニバは、業績不振の要因について「国内事業において、強化された遊技機の改正規則の影響により、需要が大きく落ち込み、当初目標としていた販売台数や売上を達成できなかった」とコメント。メーカーにとって、規制強化に端を発した“旧基準機への回帰”が業績低迷の一因となったことは間違いない。

大手数社に重すぎる借入金負担

 規制強化により、魅力が再発見され勢いづく旧基準機と、最終的には導入・遊技しなければならないのに、そっぽを向かれる新基準機。販売計画が狂い、苦境に立たされる大手パチンコメーカー――。とくに、ユニバ、平和、オーイズミの3社は、減収が響き月々の有利子負債の返済負担が重くなっている。

 平和は、売上高1,327億6,500万円に対して、長短借入金が1,231億1,600万円あり、月商比率は11.12カ月(18年3月期)。オーイズミは、売上高111億1,900万円に対して長短借入金135億7,900万円、月商比率14.65カ月となっている(18年3月期)。最も返済負担が重くなっているのがユニバ。17年12月期は、決算月の変更にともない9カ月間の変則的なものになっているが、売上高685億4,600万円に対して、長短借入金1,031億8,300万円、月商比率は44.17カ月と、借入金への依存度が非常に高くなっている。

 ユニバは「経常利益以下を黒字化させるべく、推進していた含み益の実現をともなうマニラでの一部土地売却が今期(18年12月期)にずれ込んだ」と話しており、相応の返済原資確保が見込める状況にあるが、同社の元取締役会長 岡田和生氏との裁判(カコミ参照)、同氏逮捕にともなう海外で展開しているカジノ関連事業のライセンス失効の可能性といった火種がくすぶっている。

(つづく)
【代 源太朗】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年08月19日 13:00

人間に死を選ぶ自由は存在しないのだろうか(前)NEW!

 NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」(2019年6月2日放送)を見た。ある女性が全身の身体の機能が奪われる「多系統萎縮症」という回復の見込みのない難病と宣告され...

2019年08月19日 11:26

日韓の経済力格差は?(前)NEW!

 筆者は1981年に日本に留学する機会を得た。日本は1954年から1973年までの19年間、実質GDP成長率が9.3%という驚くべき成長を記録し、いわゆる高度成長を経...

2019年08月19日 10:50

海洋資源大国・日本の生きる道:海底に眠るレアアース泥でエネルギー革命を!(後編)NEW!

 「水を制するものは、世界を制す」。これが21世紀の資源争奪戦の現実である。狭い国土に人が密集しているが、石油などエネルギー資源の乏しい国。必要なエネルギー源の9割を...

2019年08月19日 10:39

【政界インサイダー情報】カジノ管理委員会の人事等、設立の準備が進むNEW!

 政府は今秋の臨時国会において、内閣府大臣官房の指揮下、カジノ管理委員会設立に向けた人事案を提出するとのことで、来年度の具体的な実行に向け、着々と準備が整っている。全...

2019年08月19日 10:05

HIS、ユニゾHDの敵対的買収に発展~それぞれが抱える表に出せない裏事情(前)NEW!

 ホテル事業などを手がけるユニゾホールディングス(HD)は8月6日、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)が実施中のTOB(株式公開買い付け)に対し、取締役会として反...

2019年08月19日 09:50

香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(後)NEW!

 香港国際空港のマカオ行きバスターミナルは大陸(珠海市)方面行の団体客が溢れ、長時間の待機を余儀なくされた。この際、我々日本人には何も言わない職員が、中国人団体客に対...

「れいわ新選組」経済政策公約歩みと今後の課題NEW!

 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は教条主義の下で消費税増税に突き進むことは悪政の代表であると訴えた8月...

2019年08月19日 07:00

流通業界イマドキの「人材確保事情」 人手不足が小売企業の経営を揺るがす(後)

 小売業の求人募集といえば、以前はレジ後ろや店頭掲示板を使った店内掲示などが主であった。店内掲示は緊急性を要さない場合や、継続的に新規採用を続けたい場合に向いている。...

2019年08月19日 07:00

【夏期集中連載】金融機関を取り巻く現状(後)

 7月10日、横浜銀行と千葉銀行が「業務提携で合意した」との発表があり、業界にインパクトを与えた。いまや銀行同士の業務提携(アライアンス)はとくに珍しくもないが、地銀...

2019年08月18日 07:30

香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(中)

 中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳市にはファーウェイ、テンセント、ドローン製造のDJIなど技術系企業が集積する。ファーウェイ本部の広さは約60万坪。ヤフオクドーム2...

pagetop