2024年03月19日( 火 )

減り続けているパチンコ屋 ホールにとっての真の脅威とは?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 遊技人口が1,000万人を割り込むなか、パチンコ店を経営するホール事業者(以下、ホール)間の競争は激化している。スマートフォンの普及とともに、気軽に遊べる課金ゲームアプリが台頭し、ファン離れが加速したとの指摘もある。また、近い将来、日本に登場するカジノの影響を危惧する声もある。はたして、身近な存在であった「パチンコ屋」は消えてなくなってしまうのだろうか。ホールの現状を見てみよう。

カジノとは客層が違う

▲シンプルなゲーム性で高い人気を
 誇るジャグラーシリーズ

 IR実施法案が参議院本会議に可決され、成立したのが2018年7月20日。これに先駆けるかのように、遊技業界では規制強化が実施されたこともあり、遊技愛好者の間では「国はカジノ誘致にともないパチンコを潰す気だ」という不安の声が挙がっている。

 可決されたIR実施法案における、カジノに関する注目ポイントの1つは“入場料6,000円”。遊んでもいないのに6,000円取られる―ここに馬鹿らしさを感じるパチンコファンは少なくないだろう。パチスロファン歴15年のヘビーユーザーは語る。「こっちは1,000円からでも勝負したいのに、入るだけで6,000円って、ジャグラーのBIG1回分(※1)やん!」。

 一方、スマホで遊べる課金ゲームアプリがパチンコ業界と競合しているという指摘もある。現役のホール経営者Aは、「ゲームアプリには“戻り”がない」と一蹴。戻りとはすなわち換金のこと。ゲームアプリでは、金を賭ければゲーム内で希少価値のあるアイテムを得ることはできるが、リアルマネートレード(以下、RMT)※2は利用規約などで禁止されており、基本的に、それを現実世界で流通させることはできない。

 投資した金額と遊んだ時間、そして最終的に自分が手にすることができる金額。このバランス感覚において、カジノとゲームアプリが既存のパチンコ愛好者を魅了し、パチンコ市場から自軍の市場へと引き込む可能性は低いのではないだろうか。ただ、スマホをいじりながら、パチンコ・パチスロを打つ客の姿は頻繁に見かけるようになっている。パチンコ・パチスロのあたり以外で退屈な時間をスマホが埋めているともいえるだろう(ゲーム性が飽きられているという問題は別)。

業界トップも業績低迷

 新たな「規制強化」をホール側はどう受け止めているか。出玉に関する新基準の適用とともに、スロットは「6号機」の時代へ突入し、どんなに連チャンしてもメダルの最大獲得枚数は2,400枚。金額にして5万円未満になる。パチンコは1度の大当たりで得られる最大獲得出玉数が1,500発未満。金額にして、6,000円未満となる(連チャンへの制限はない)。連チャンするまでに相応の投資が必要になることを考えれば、実際の勝ち額は良くて2~3万円といったところだろう。

 圧倒的に不利な状況に嫌気が差し、ホールから遠ざかるファンは増えている―ホールの収益源でもあるファンの減少は、一体どれほどのダメージをホール側に与えているのだろうか。

 全国で300店舗以上ホールを展開し、業界トップの売上規模を誇る(株)マルハン。同社は、2018年3月期決算(連結)で、売上高1兆5,509億3,400万円、経常利益334億4,500万円を計上した。これで前期比▲1,278億8,600万円、▲39億3,100万円の減収減益だというから恐れ入る。

 対して、業界2位といわれる全国で400店舗以上のホール「ダイナム」などを展開する(株)ダイナムジャパンホールディングス(以下、ダイナム)は、18年3月期決算(連結)で売上高7,750億6,000万円、経常利益168億400万円を計上。同社は、前期比で▲47億7,700万円、19億7,900万円増の減収増益とした。

 どちらも苦戦がうかがえるが、売上高経常利益率で見ると、マルハン2.15%に対し、ダイナム11.04%。テレビCMなど宣伝広告費を惜しまない派手な事業展開で業界トップに君臨するマルハンに比べ、ブームで活況に沸く他社をよそ目に、都市部を避けた郊外への出店などで設備投資コストを抑えてきたダイナム。後者は、景気の浮沈に左右されない、頑強な経営体質をつくり上げてきたともいえるだろう。

(つづく)
【代 源太朗】

※クリックで拡大

※1 パチスロ「ジャグラー」ではBIGボーナス1回でなど価交換約6,000円分のメダルが獲得できる。

※2 オンラインゲームやスマホアプリのアカウント、キャラクター、アイテム、ゲーム内仮想通貨などを、現実の通貨(リアルマネー)で売買する行為のこと。

(後)

関連キーワード

関連記事