• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年10月24日 09:24

【シシリー島便り】シシリーママの「過保護」事情~グループチャットが大流行り

 娘が学校に通うようになった7、8年前の秋、イタリアではじめて「シラミ」という言葉を聞いた。ある生徒からシラミが見つかったとのことで、学校は全校生徒に注意を促した。母親たちは恐怖とパニックでひたすらシラミ防止対策をした。グループチャットで「薬局で●●を購入した」と母親同士で情報共有し、シラミ防止用スプレー、シャンプーなどを購入した。また狂ったように洗濯をする母親もいた。私も娘たちの長い髪が心配で、常に結んで学校に通わせていた。

 これまでシラミが発生するたびに学校から「子どもたちの髪をチェックするように」との通達があった。そのたびに心配していたが、今回初めて娘の頭からシラミが見つかった。
 「ママ、頭が痒い」と訴えた娘。あまり疑っていなかったが、念のため髪の毛をチェック。とくに何も見当たらなかった。しかし、数日しても痒みがおさまらないので「もしかしたらシャンプーがよくないのかもしれない」と、薬局でデリケート肌用のシャンプーを購入した。それでも痒みがおさまらない娘。もう一度髪の毛をよく見てみた。すると、ものすごく小さなものが髪にいくつか見つかった。旦那にも見せてみたのだが、お互いシラミがどのようなものか見たことがなく、ネットでシラミの写真を検索した。ヒットした写真を見ると、何となく似ているように思えた。
 翌日、薬局でシラミ用のシャンプーを購入し、試してみた。すると小さな虫が娘の頭皮にくっついているではないか。気持ち悪いと同時にショックだったが、娘を動揺させないようにと、平静を装った。後日、娘の友だちのママたちにこの件についての相談をした。娘は「いじめにあうのが怖い」と気にしていたので、ママたちには、事前にその旨を伝えていた。ママたちはそれぞれの体験談を語ってくれ、いろいろな話が聞けてほっとしたのと同時に、同じ経験のあるママたちが多いことに驚いた。今時、日本の学校でもよくあることなのだろうか。

 クラスのママたちのグループチャットは、さまざまなことに活用される。世間話から重要事項の伝達まで、ありとあらゆる内容が投稿されるのだ。1時間ぐらい見ないと、すぐ30を超えるメッセージが、そのグループだけで投稿されているほどだ。そのグループチャットで、あまり感心しないことがある。ママたちが子どもの宿題の内容についてチャットすることだ。
 私も子どもが学校を休んだ時は、その日の学習内容や、次回の宿題の内容などを聞くのに役立ててはいるが、そこで主に投稿されているのは「宿題は何ページ?」「提出期限はいつ?」「子どもが教科書を学校に忘れたので宿題のページの写真を載せてほしい」などの内容だ。毎日この手のメッセージがたくさんくるので、少々うんざりしており、最近では読まずに消去することにしている。

 私が小学生のころは携帯電話などなかったが、親が子どものためにほかの親に連絡をとることはほとんどなかったと思う。きちんと勉強しているかどうか、母がよく部屋に覗きにきていたが、学校の宿題についてほかの親へ電話で聞いている姿は、見た覚えがない。シシリーママたちの過保護さは異常ともいえる。
 違う箇所の宿題をしてしまったとしても、それは子どもの責任だ。次の日、先生に間違いを指摘されることによって「次回は気を付けよう」という気持ちが芽生える。そうした気持ちを育てることこそが大切だと思うのだ。だが、シシリーではママたちが何でも先回りして準備してしまう。持ち物もそうだ。「忘れ物がないか」「学校に忘れてきたものがないか」どうか、カバンの中身を常にママがチェックしている。こんなことを続けていくと子どもは何もしなくていいと思うようになり、自分で気を付ける能力が育たなくなる。私は、こうしたシシリー流の子育て方に反対だ。
 忘れ物は自分の責任なので、あえて忘れものチェックはしない。宿題も、子どもたちが「分からないから教えてほしい」と言ってきた場合は、そばで勉強を見てあげるが、宿題のページがあっているかどうかなどについては、子どもたちに任せている。

 シシリーでは子どもの交友関係にも親が介入してくる。
 女の子同士は男の子同士よりも友達関係が複雑だ。女の子の場合、必ずと言っていいほどお友達グループがクラスのなかにいくつかできる。
 上の娘の小学校時代の同級生で、今は違う中学にいる女の子のママから聞いた話がある。クラスで小学校から同級生の仲良し女子グループに入りたくても入れない子の母親が、ある朝の登校時間、公衆の面前で、ある女の子に対し「娘が仲良くしたいと思っている子に近づかないで」と怒鳴りつけたのだそうだ。すると当然のように相手の母親も出てきて口論となり、人だかりができていたという。娘を思うあまりの行動だろうが、これでは逆効果になるのでは、と思う。
 親は毎日が勉強だとつくづく思う。世界共通だが、子どもを教育するためにも、自分自身が大人としての責任を強く持たないといけない。甘いシシリーママのもとで育った子どもたちの将来が心配だ。

<プロフィール>
神島 えりな(かみしま・えりな)

2000年上智大学外国語学部ポルトガル語学科を卒業後、東京の旅行会社に就職。約2年半勤めたのち同社を退職、単身イタリアへ。2003年7月、シシリー島パレルモの旅行会社に就職、現在に至る。

キーワードタグ:旅行  ※記事へのご意見はこちら
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年08月18日 07:30

香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(中)

 中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳市にはファーウェイ、テンセント、ドローン製造のDJIなど技術系企業が集積する。ファーウェイ本部の広さは約60万坪。ヤフオクドーム2...

2019年08月18日 07:00

流通業界イマドキの「人材確保事情」 人手不足が小売企業の経営を揺るがす(前)

 人手不足が各業界で深刻化するなか、小売を始めとする流通業界もご多分に漏れず同じ様相を呈している。もともと利益幅が薄い小売業界では、労務問題を起因として赤字転落する企...

2019年08月18日 07:00

【夏期集中連載】金融機関を取り巻く現状(中)

 6月26日、静岡県沼津市に本拠を置くスルガ銀行の株主総会が大混乱の下で行われた。株主から多数の反対動議が出され、怒号が飛び交う中での「強行採決」だった。そこには、か...

2019年08月17日 08:00

モダンプロジェが大名に本社移転

 モダンパラッツォシリーズの賃貸マンション企画会社・モダンプロジェが17日、本社を移転した。新本社は今年2月に完成していた「モダンパラッツォ大名」の10階。2階はテナ...

2019年08月17日 07:30

寝室が変われば人生が変わる 健康住宅専門店、早稲田ハウス

 「睡眠負債」という言葉がある。毎日の睡眠不足が借金のように積み重なり、心身に悪影響をおよぼすおそれのある状態だ。これを放っておくと、肥満や2型糖尿病などの代謝疾患の...

2019年08月17日 07:10

香港、マカオ、深圳 視察報告 「世界一港湾都市」奪取計画の現在地(前)

 東京、ニューヨーク、サンフランシスコが世界3大港湾都市圏とされている。中国は今、これらを凌駕する世界一の港湾エリアを建設している。香港、マカオ、そして深圳などを含む...

2019年08月17日 07:05

LINE、ANA、福岡市が共同で「ドローンで産地直送」の実証実験

 バーベキュー会場から、LINEでアワビやサザエを注文すると、玄界島から産地直送の新鮮食材がドローンで届ける実証実験が8月1日に福岡市西区で行われた。実証実験は、LI...

2019年08月17日 07:00

【夏期集中連載】金融機関を取り巻く現状(前)

 日銀のマイナス金利政策が3年以上続く中、金融機関は依然として厳しい経営環境にある。しかも、少子高齢化が進展する日本では、国内産業全体の大きな発展は今後も望むべくもな...

2019年08月16日 08:00

【企業研究】老舗百貨店の矜持と覚悟

 創業84年の(株)井筒屋。これまで北九州・小倉を拠点に福岡・大分・山口において店舗展開を行い、九州地場百貨店の代表格としての地位を有していたが、時流とともに栄枯盛衰...

2019年08月16日 07:30

田舎がアニメに「出る」理由~地方の疲弊とアニメ会社の収益改革

 7月28日、所用で唐津に行くと、駅の改札のすぐ近くで「ゾンビ」に遭遇した。といっても、本物ではない。アニメ「ゾンビランドサガ」のキャラクターに扮した同作のファン、い...

pagetop