2024年04月26日( 金 )

免震制振装置の検査データ改ざんを検証する

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 2005年11月に発覚した構造計算書偽造問題の姉歯事件、2015年3月に発覚した東洋ゴム工業の免震ゴムデータ偽装事件。それから3年余り経った今年10月16日、免震制振装置の性能検査データの改ざんをKYBが国土交通大臣に報告。その一週間後の23日、川金ホールディングス(以下HD)も改ざんを報告。今年9月6日、北海道胆振東部地震が発生。最大震度は7で、北海道では初めて観測された。そのため地震に対して世間の関心が高まるなか、続けざまに明らかになった検査データの改ざんは大きな社会問題となった。

 【表1】、【表2】、【表3】を見ていただきたい。
 KYB・川金HDの売上高と免震制振製品の売上比率の推移表である。検査データの改ざんが大きく取り上げられているものの、その売上高の推移にはあまり触れられていなかった。そのため粘り強く交渉し、2社から各期の売上高を聴取したが、億単位であるためややブレがあるようだ。

※クリックで拡大

この表から見えるもの

◆KYBの売上構成はAC事業部門とHC部門の売上高が93%と圧倒な比重を占めている。免震制振製品は、その他部門(特殊車両事業、航空機器事業、システム製品および電子機器等)のなかのシステム製品に含まれる。18/3月期の売上高は25億円で、全体の売上高に占める割合はわずか0.6%とそのウエイトは低い。

◆川金HDの売上構成は素形材と土木建築機材および産業機械の3部門。免震制振製品は産業機械の売上高に含まれる。18/3月期の売上高は5億円で、全体の売上高に占める割合は1.28%と、KYBと同様にその割合が低いのがわかる。

◆【表3】は2社の免震制振製品の売上高の推移表である。KYBは少なくとも15年間検査データの改ざんが続いていたという。また川金HDは橋など公共工事に使われる土木用建材の製造・販売が主力で、免震・制振装置は、2005年から販売を始めた後発組であるが、いつから検査データの改ざんが行われるようになったかは不明という(鈴木信吉社長)。2社とも検査データの改ざんについて、「お客さまの要求する納期に納めるためだった」との言い訳を繰り返してしているが、決して許されるものではない。

◆半面、専門家からは、「違反量や期間などが酷いことはわかるが、一方過度な心配は無用。モラルの問題で実害はさほどではないのではないか。『10%の許容範囲内であればよし』とする基準自体の妥当性にも疑問が生じる」との声があがっている。

2社の株価は大きく下落

 【表4】を見ていただきたい。KYBと川金HDの株価が大きく下がっているのがわかる。KYBは今年2月1日、最高値7,280円を付けたが、データ改ざん問題が大きく取り上げられたことを受けて、10月26日、2,312円の最安値を付けた。また川金HDも10月23日、700円の最高値を付けたその日から下落。10月26日、343円の最安値を付けている。今日30日、KYB大きく値を上げたが川金HDは値を下げている。KYBは、データ改ざんの疑いがある免震装置について2020年9月をめどにすべて交換する方針を示している。川金HDもそれに従うことになりそうだ。はたして両社に対する投資家の評価はどのように推移するのだろうか。

※クリックで拡大

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

関連記事