【福岡市の将来像】解体工事始まる福岡ビル テナントは悲喜こもごも
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2018年11月01日 10:35

【福岡市の将来像】解体工事始まる福岡ビル テナントは悲喜こもごも

 今、天神の街は再開発の真っ只中だ。とくに、「福岡ビル」「天神コア」「天神ビブレ」の一帯を建て替える「福ビル街区建替プロジェクト」は、天神ビッグバンのメイン事業。2019年から解体作業に入る福岡ビルに入居している企業や店舗は、今まさに、移転や閉店に向けた準備に追われている。

 「このビルがなくなるのは寂しいですが、街が新しくなっていくのはとても楽しみなことです」―そう語ってくれたのは、福岡ビルの飲食店街で19年暖簾を掲げるご飯処「天神御膳屋(てんじんおぜんや)」(以下、御膳屋)の西山洋志店長だ。

 天神ビッグバンにより、福岡ビル、天神コア、天神ビブレ一帯の再開発計画「福ビル街区建替プロジェクト」が推し進められているなか、来年から順次解体作業に着手。2019年4月以降には福岡ビルが、2020年4月以降には天神コアが、その歴史に幕を閉じるとともに、新たなスタートへ向けて動き出す。今回注目する福岡ビルは、1961年に開業した地上10階・地下3階建ての複合ビル。西日本鉄道(株)が所有し、西鉄本社を始めさまざまな企業やショップが入居する、“福ビル”の愛称で親しまれる天神のランドマーク的存在だ。

 この一帯には今回の再開発により、幅約100m、奥行約80m、高さ約96mの大規模なビルが建てられ、オフィス、商業、ホテルなどの機能を充実させた「圧倒的な規模感と多様性に満ちた複合施設」へと昇華するのだという。たとえるならば、「グランフロント大阪」(大阪市北区大深町)や「恵比寿ガーデンプレイス」(東京都渋谷区恵比寿)をイメージすれば良いのだろうか。いずれにしても、この福岡に、大都市を象徴するランドマークビルができることにより、新たな観光流入や雇用創出が期待されるほか、新しいモノや人が出入りすることで、イノベーションの機会も増え、ベンチャーやスタートアップ企業の参入も増加していくことが想像できる。

 このように、福岡の明るい未来に向けてのメリットが充実しているのは明白だが、その前段階として気に留めておきたいのは、まだ福岡ビルに入居していて、閉館とともに居場所がなくなるテナントの店舗は、これからどうなっていくのだろうか、というところだ。

福岡ビル地下街には、ショップと飲食店含め10店舗が入居する

 福岡ビルの地下にある店舗エリアには、現在、アパレルショップと飲食店とを合わせて10店舗が入居している。今回の取材に応じてくれたうちの1軒、前出した「御膳屋」の西山店長は、閉館に向けての動きについて教えてくれた。「テナントには、2019年3月の福ビル閉館まで、営業の猶予が与えられています。当店は、移転することを前提としてこの近辺で物件を探しているのですが、良さそうなところがまだ見つかっていないのが現状です」(西山店長)。

 取材を行ったのは10月上旬。19年3月までは、まだ多少の時間的な猶予があるようにも思えるが、移転先が見つかれば、新しい店の開店準備や移転に向けての準備で数カ月を要する。そのため、早めに移転先を見つけたいのだが、その見込みが立たない以上、福ビルにいつまで入居するかは不透明な状態だという。また、同じくテナントの「しらすくじら」も、同様に移転先を模索中。「麺処 峰松本家・中華料理 峰屋」(以下、峰松本家)は、19年3月末までで22年続いた営業を終了し、系列店舗に統合するという。さらに、昼間には行列が絶えない老舗の「お好み焼き ふきや」は19年2月15日まで営業し、こちらも福ビルの店舗を閉めた後は、博多店(博多区博多駅中央街)1店舗だけを運営していくという。

 「福ビルが再開発によってなくなるというのは、2年くらい前から聞いていました。だからそれを見据えて、早々に場所を移したオフィスもたくさんあります」(西山店長)。また、峰松本家の従業員は、「福ビルの閉業が世間に知られてから心配してくれるお客さんもいますが、博多区に別の店舗もあるので、そこで変わらず頑張っていきたいと思います」と話してくれた。今年に入り、テナントの代表者を集めた説明会が行われ、来年3月までの営業という事実を告げられたという。それに応じて、1階にある雑貨屋を始め、飲食街や老舗中華料理店「八仙閣」なども、その歴史に幕を閉じた。

福岡ビル地下街にある案内板
営業19年の「天神御膳屋」は、移転に向けて奔走している
営業22年の「麺処 峰松本家・中華料理 峰屋」は、
2019年3月をもって閉店。
博多区の本店と統合する
中華の老舗「八仙閣」は9月22日(土)に閉店。
11月21日に「ウエストコート姪浜」に
新ブランドをオープン予定

 テナントに入居時の契約では、福ビルの解体などにより移転や閉店することになった場合に一定の補償が受けられる、とあったようだ。「退去の時期によって受けられる補償金額も違ってくるので、早めに出て行ったお店もたくさんあります」とも西山店長は教えてくれた。ただし、補償はあれど、なかなか退去に踏み切ることができないのは、今まで利用してくれた顧客の存在も大きい。「この店がなくなることを残念に思ってくれるお客さまもたくさんいらっしゃいますので、できればこの近辺で再出発したいのが本音です。しかし、福ビルのように地下鉄と直結していて、利便性に優れた条件の物件はめったになく…。いろいろと手を尽くしてみますが、良い物件が見つからなかった場合は、姉妹店のいずれかの店舗と統合するかたちを取ります。幸い当社には系列店が4店舗あるので、今の従業員もそこに吸収できますから」と西山店長は、歯がゆい胸の内を明かしてくれた。では、一市民としてはどう感じているのだろうか。「福ビルの再開発については、最初はびっくりしました。私にとっては、16年ほど勤めてきた職場でもありますから、それなりに思い入れはあります。でも、新しく生まれ変わる天神の街を見るのが今から楽しみです」(西山店長)。

福岡ビルの東側の土地ではすでに再開発の工事が進められている

 各テナント店舗には、今、「閉店」か「移転」かの二択が突きつけられている。もちろん補償があるのは安心材料だが、“豊洲移転問題”よろしく、すべてにおいて適用されるわけではなく、手弁当でやらなければならない部分も多々ある。これも、テナント店舗の宿命といわれればそれまでだ。だが、移転しようにも、立地や設備などの条件を重視すれば家賃が高くなるなど、都合の良いハコを見つけるのは困難だ。すでに閉店した店舗も、苦渋の決断で店を畳むしかなかったのだろう。福ビル(西鉄)サイドもでき得る最大限の施策を講じたのだろうが、移転先を探して奔走している店舗がいまだにいるのが現状。このように、福岡を代表する老舗がなくなってしまうのは実に寂しい限りだ。

 しかし、テナントから移転しても、変わらず成功している例もある。1948年に創業したカツ丼の老舗「かつ丼の友楽」は、かつては天神一丁目地区で営業を行っていたが、再開発により退去を余儀なくされ、15年に福岡市中央区薬院へと移転、「薬院 かつ丼 友楽 1948」と店名も新たに再出発をはたした。すると、再起を喜んだファンや地元民にすぐに受け入れられ、今でも行列をつくる人気店となっている。街中の好立地ではなくなったものの、変わらぬ味とサービスさえあれば、どこでも人を集めることができるという良い例だ。とくに近年だが、大阪や東京、埼玉などの都市から、その土地の人気店の2号店を出店、または移転先として選ぶほど、福岡にはわざわざ出店したくなるような魅力がある、と全国に認識されている。その理由は、アジアの玄関口として観光客が年々増加している点、海や山の幸に恵まれた日本有数の食の都である点などが挙げられる。ついでにいうなら、マンション建設ラッシュによる不動産バブルに沸き、さらには、天神ビッグバンも相まって、成長著しい動きが、福岡に魅力を感じさせずにはいられない。少し回りくどくなってしまったが、テナント店舗でなくなってしまっても、戦うフィールドは無限にあるのだ。

 天神コアや天神ビブレも同様に、多くのショップや飲食店が入居している。天神コアの解体着工の2020年4月までは、まだ時間的な猶予はあるが、事業主それぞれには着実にタイムリミットが迫っている。福岡の明るい未来のために、ビル側には最善のフォローを願いたい。

【森川 和典】

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