2024年05月02日( 木 )

教育の本質は、認め、尊重し、『社会で役立つ』ように導くこと~立花高校校長×新開ゆうじ対談(5)

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それぞれの舞台で輝くこと

 ──「好きであること」の大切さをお2人のお話から改めて学ばせていただきました。

 新開 私の息子は3人ともラグビーをやっていますが、幼少時からよほどのことがないかぎり練習も試合も休むことはありません。お世話になっているクラブが「好きになる」ことを指導していることもあり、本人たちは「楽しいから頑張る」という感じなのだと思います。私自身も政治の世界をこころざし、紆余曲折はありますが、苦と思ったことはありません。楽しいというと語弊がありますが、いつも前向きな気持ちになることができます。好きだからできるというのはどの道でも共通することではないでしょうか?

 齋藤 極論ですが、学校に休まず通う。しかし、学校が嫌い、親とも話さないという子どもがいます。一方で、学校には全然行かない。それでも毎日親の仕事を手伝いニコニコしている─どちらが幸せなのかは、従来の価値観だけでは語れないのです。つまり、自己実現がそれぞれ選べる時代に突入しているということを、自身も含め、受け入れ認めていくことです。周りや世間に左右されることなく、自分が輝ける舞台はそれぞれであり、自分で選べる時代だと痛感しております。

 ──そのような社会に成熟するには、経済的なゆとりや余裕が必要ではないでしょうか。

 新開 もちろん、それは大切なことだと思いますが、それだけではないと思います。
 たとえば、貴校のように特色ある学校と、そうでない学校も含めて、多様性に応えるための少人数学級について財務省と文部科学省が議論をすれば財務省は「少子化が顕在化してきているから教員の人数を減らすべきだ」と主張する。文部科学省は「1人ひとりに対する多様な教育を実施していくためにも教員は減らしてはいけない」ということになります。どちらの言い分も正論でしょうが、多様な価値を求められるこれからの社会のなかで、それぞれの子どもたちが生き抜いていくための学びの場が教育機関であることに変わりはありません。一方で過去の著名な音楽家をみてもわかるように、経済的な豊かさや余裕のある環境に身を置いていないからこそ、苦しみや悲しみ、怒りや絶望から逃れるために夢を見る、理想や想いを芸術的なものにまで引き上げる世界もあるのです。大切なことは自分を信じること。人を愛してあげる事。1人でも信じて寄り添ってくれる人がいれば何とかやっていけるものではないでしょうか?今後貴校の理念の1つである「いいんだよ。そのままで。」は教育の世界で今以上に求められるのではないかと思います。

 齋藤 当校には、不登校を始め心理面でハンデを背負った子どもたちが自立を求めて入学してきます。我々は、社会に巣立つ前の“踏み台”という存在です。当校で自分のペースで学び、社会に出て役立つ納税者になること。当校の教育理念や指針によって学んだ子どもたちが、それぞれの舞台で輝ける存在になることが、我々の本懐です。

(了)
【聞き手:弊社代表取締役 児玉直、文・構成:河原 清明】

<プロフィール>
齋藤 眞人(さいとう・まさと)

1967年宮崎県佐土原市生まれ。宮崎大学教育学部(現・教育文化学部)卒。宮崎県の公立中学校の音楽教員を経て、2004年(学)立花学園立花高等学校(福岡市東区)教頭として赴任。06年から校長、10年6月から理事長兼務。同校は、1人ひとりの人格を尊重した自立支援教育が特色である。その教育現場での活動を題材にした─「いいんだよ」は魔法の言葉─とする齋藤校長の講演会は、小中高PTA、地域自治会や各教育関係のみならず企業経営やマネジメントの立場からの依頼も多数寄せられ、全国各地で開催されている。福岡県私学協会副会長および福岡地区支部支部長。トロンボーン奏者でもある。

<プロフィール>
新開 ゆうじ(しんかい・ゆうじ)

1968年8月22日福岡市生まれ。92年3月国立音楽大学音楽学部声楽科卒。音楽教諭免許取得。家業である老舗珈琲専門店「シャポー」入社・勤務を経て、パティシエとして渡仏。97年帰国。2002年に福岡青年会議所に入会し、同所常任理事を歴任後08年理事長就任。10年衆議院議員(当時)古賀誠氏秘書を経て、12年12月16日第46回衆議院議員総選挙の自由民主党比例九州ブロックで初当選し、14年11月21日までつとめた。テノール声楽家としても舞台やライブにて活動。

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