2024年04月29日( 月 )

【豊洲市場訴訟】東京都が豊洲市場の鉄筋量不足41%を法廷で認めた!(2)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

裁判所が却下決定をしたその理由?

 11月1日に武内弁護士が陳述した内容は、裁判所が行った仮の義務付け申立却下という決定に対する反論ともなっている。この書面を、そのまま引用しても理解が難しいので、武内弁護士が傍聴者にも理解できるように法廷で訴えた中身の概略を説明したい。

 裁判所が仮の義務付け申立を却下した理由は「特定行政庁」である東京都知事が建物の所有者である小池都知事に対して要請をする法的な根拠はないということである。そのような行政処分を行う法的な義務も根拠もないから却下だというのである。では、東京都が違法で危険な建築物を建てた場合は、誰がそれを是正することができるのか?

 簡単にいえば、違法な建築物や地震により倒壊する可能性のある建物を東京都が建て、それを東京都が所有している場合は、その建物について、「危ないから解体せよ」とか「補強工事を実施せよ」と命令や要請をする必要性がないというのが、申立却下の理由である。
 東京都の主張によれば、書類(構造計算書などの設計図書)が偽装されており建築基準法令に違反していたとしても、自治体が所有する公共建築物に限っては、安全性を確保するための是正や 適法な状態にするための是正を行う必要はないという見解である。是正措置の必要性を判断するのが行政庁であるならば、行政庁は常に客観的に正しい判断をしなければならないはずだが、この却下の理由のように、事実上の治外法権状態となっているために、行政庁が自ら除却や是正措置を命じることはあり得ない。なぜならば、行政庁自らが除却や是正措置を命じることは、行政庁自らの建築確認(または計画通知)におけるミスを認めることになり、除却や是正措置に要する費用などについて市民たちからの追及を受け、責任問題となるからである。役人としては最も避けなければならないことだろう。しかし、公共建築物は、不特定多数の都民が利用する施設である。地震が発生した場合、公共施設内や周辺にいる人たちが被害を受けることとなるが、事前に是正措置が施されていないので、公共施設の倒壊によって犠牲になった都民は、地震の後に損害賠償を求める以外に方法がないことになる。いくら損害賠償を求めても亡くなった方が戻ってくることはないのであり、これほど理不尽なことはない。
 これが民間の建築物であれば、違法建築物の除却や補強などの是正措置を 小池都知事が強制命令できるが、東京都関連所有の建築物は、法的にそれができないという論理なのである。仮の義務付け申立における東京都の主張や裁判所の決定は、違法で危険な建築物を東京都自身が建てた場合は、それを放置していても構わないということである。この入り口の時点で、裁判所の論理はすでに破綻しているのである。裁判所は、論理的には完全に原告の主張を否定できないので、手続きにともなう入り口論争に終始し、入口の門そのものを閉ざしているのである。

 豊洲市場水産仲卸売場棟に関して私が指摘したことは、設計者である「日建設計」が作成した設計図書の構造計算書に重大な偽装がある事実であり、その事実を法的・工学的に指摘・立証しているだけのごく簡単なことであり他意などはない。この驚愕の事実を構造設計技術者として看過することができず、「是は是!非は非!」として、客観的に指摘したのである。本件建築物における構造計算偽装の1つ「保有水平耐力計算における係数の偽装」に関して、構造形式による係数の違いを下図にて説明する。本件建築物は内部の鉄骨が基礎・地中梁部分に埋め込まれていない形式にもかかわらず、不正に係数が低減され、実際よりも構造耐力が高いように偽装された構造計算が行われていた。

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(つづく)

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