青沼隆郎の法律講座 第18回
行政手続法の適用問題
評議員会の理事解任処分は行政手続法の「処分」か。
公益財団法人の機関は法律の規定によって定められ、その権限は一般社団財団法および公益認定法という公法関係を規定する法律による権限であるから、法令に基づく公権力の行使である。従って、「処分」である。
私人間の契約に基づく処分でないことは明白であるから、この反対解釈でも協会の処分は公権力の行使たる処分である。ただしこれは確定した処分ではない。例えれば、行政庁内部の中間処分に相当する。それについて説明する。
評議員会の貴乃花親方に対する理事解任処分は本年度の事業内容として理事長により監督官庁に報告される。これは監督官庁に対する監督調査を求める行政法上の義務の履行であるから、講学上、「申請」にあたる。この提出を受け、監督官庁は業務執行の内容に法令定款違反の瑕疵の有無を審査して、瑕疵がない場合には「承認」の意味の「受理通知」をする。これは講学上、申請に対する受理であるから、当然「処分」である。この処分によって、評議員会の当該処分は適法処分として確定する。
以上の法律関係は法的素養のないマスコミは知らないため、結果として国民にも知らされず、国民も知らない。しかし、当然、監督官庁(の官僚)は知っている。とくに注目されなければならないのは、公益認定等委員会の委員もこの法律関係を知悉していることである。従って、貴乃花親方の告発状が委員会の義務行為である総理大臣の諮問にあたらなくとも、本来の委員会の義務である、公益法人の業務の適法性の確認確保という観点からは、委員会は事前に、監督官庁に告発状の提出の事実を通知し、監督官庁の管理監督権の適切な発動を促す義務がある。それが公益認定法第46条に規定する「勧告」権の基本的趣旨である。
そういう意味ではすでに公益認定等委員会から監督官庁に貴乃花親方の告発状提出の事実が通知されている可能性があり、監督官庁は協会の業務報告に虚偽の報告や隠蔽の有無にかかわらず、協会の業務執行の適法性の審査においては、告発事実の審査を避けることはできない。このような水面下の行為が、季節はずれの告発状事実無根自白強制事件として狂い咲きしたものと推測できる。
(つづく)
<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。