【書評】「10%消費税」が日本経済を破壊する 藤井聡 内閣官房参与・京都大学大学院教授
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2017年にメディアが報じた「戦後2番目に長い経済成長(いざなぎ景気)超えの好景気」には違和感を覚えた人も多いだろう。庶民には生活が良くなったとの実感がまったくないからだ。
17年末に朝日新聞が報じた世論調査でも、景気回復を「実感していない」が82%に上っている。その庶民感覚が間違っていないことを著者の藤井聡教授がマクロデータを基に明らかにする。
日本経済がいまだデフレ経済下にあること、国内企業の99%を占める中小企業の景気は年々悪化し続けていること、サラリーマンの給与が下がったままであること、その元凶が消費税増税にあったこと。1997年に消費税が3%から5%に上がった。消費増税後にデフレ不況に突入し、それまで22,000人程度だった年間の自殺者が33,000人に増え、10年以上も高止まりし続けたことが、著者が本書を出版することを企図した根本的な動機だという。デフレ化の原因が同年の「アジア通貨危機」ではないことも検証されている。
17年の総選挙の時に「10%への消費増税」を公約に掲げる自由民主党が圧倒的多数を獲得したことで、消費増税を「国民世論が支持した」ことになってしまい、19年の秋に消費増税をすることが当たり前の空気ができてしまった。だが経済学会の論者や大手メディア、シンクタンクなどの「消費増税はたいした問題ではない」との主張が、数々の事実誤認や誤謬に基づく「ウソ」や「デマ」だと断じる。我が国政府の財政悪化の根本的原因は、政府関係者が無知で愚かであることで、問題の本質はもはや経済学の問題ではなく、すでに集団心理学、ひいては精神病理学の領域の問題だとの指摘も興味深い。
「増税凍結」が間に合うタイムリミット、19年4月ごろまでの限られた時間のなかで、1人でも多くの読者に認識を共有してほしいとの著者の願いに耳を傾けるべきだ。とくに中小企業の経営者には必読の書である。【緒方 克美】
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