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2018年12月21日 09:33

新しい「姥捨山」の実現を求めて(前)

大さんのシニアリポート第74回

 来年2月に上梓される予定の拙著(平凡社新書)のタイトルが難航し、ようやく決まった。「親を棄てる子どもたち 新しい『姥捨山』のかたちを求めて」となった。最大の問題点は、サブタイトルに入れた「姥捨山」という言葉だった。購読者に、「親を棄てることを奨励しているように受け取られかねない」ということらしい。しかし、「姥捨山」という言葉を抜きにして拙著の真意は伝わらない。

 一昨年春、私が住む地域で2件の「棄老事件」が発生し、そのうちの1件(夫婦)には最後まで関わり続けたということは再三報告してきた。実の子どもがいるにもかかわらず、まったく関わりをもとうとしない。「血のつながりのない私が、なぜ夫婦を看なくてはならないのか」という単純な疑問が上梓を決意させたすべてであった。この親と子の関係はすでに消失していた。つまり、「家族関係」が崩壊しているということだ。こうした現実を、私が住むごく限られたエリアで起きているさまざまな事例を通して、「家族の崩壊」を報告した作品である。

 私は詐欺の研究家でもある。その詐欺の研究家が「オレオレ詐欺」に引っかかってしまったのだから始末に負えない。次男を騙る詐欺師の銀行口座に、20万円という大金を振り込んでしまったのだ。次男に手紙を書いた。「今後このようなことがないように」と注意を喚起したつもりが、逆になじられた。「お父さんの立場もあるだろうから」と不問に付されたものの、後味の悪い結果となった。私は許されたが、「なんで見知らぬ人に大金を渡したんだ」と子どもに攻められ、追い込まれたあげく自殺した父親がいた。子どもには「父親の金は自分のもの。将来もらえるはずの遺産」という思いがあったのだろう。

 葬儀の世界でも「棄老事件」が多発している。懇意にしている葬儀屋からは、「孤独死者の身元が判明しても、遺体の引き取りを拒否する子どもが多い」と聞いた。なかには、「無縁仏として処理してほしい」という子どももいる。「あなたという身内がいるじゃないですか」といっても、「家族を棄てるような親は親じゃない」といって、一方的に電話を切られたと葬儀屋は嘆いた。「全国の政令指定都市で2015年度に亡くなった人の約30人に1人が、引き取り手のない無縁仏として自治体に税金で弔われていたことが、毎日新聞の調査でわかった。政令指定都市で計約7400柱に上り、10年でほぼ倍増。大阪市では9人に1人が無縁だった。死者の引き取りを拒む家族の増加や埋葬費用を工面できない貧窮層の拡大が背景にあり、都市部で高齢者の無縁化が進む実態が浮き彫りになった」(平成29年7月16日「毎日新聞」ネット配信)という具合である。

 この「棄老」という現象は、最も必要(親として子どもへの期待)とされるはずの“介護の現場”に限定すると、とんでもない現実が待ち構えていた。「PRESIDENT Online」(平成26年12月21日)に、“ベスト・ケアマネージャー”と称するFさんが、「親が介護になっても他人事みたいな感じで、そう深刻に受け止めず、我々介護サービス業者に介護を丸投げする人が結構いるんですよね」と証言している。「家族の2人に1人が“拒否・放棄”(ネグレクト)する」時代だそうだ。

 このことを、3年前の春、介護資格取得を目指し専門学校に通学し、現在介護施設に勤務しながら大学の通信教育を受けている妻(当時66歳)が、「間違っていないと思う。実習先の施設でも、面会ノートが真っ白。来ても月に1~2回程度。入所者の多くが、施設(という姥捨山)に捨てられたと感じてしまうことが少なくない」と漏らした。

(つづく)

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