2024年04月29日( 月 )

2019年の政局を語る~山崎拓 元自民党副総裁(2)

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自民党一強政治

 ――「官邸が強い」という話をされました。官邸が強すぎるという話になりますが、二階俊博幹事長という実力者でも、官邸主導は覆せないということでしょうか。

 山崎 二階さんという個別の名前を出されると正直私も非常に困るのですが、やはり政府と党の関係でいうと、党自体に力がないわけで、二階さんの力がないわけではない。今は「政府に力があって、党に力がない」という構造になっているということです。

 ――たとえば選挙の公認権を握っているのは党本部ですよね。幹事長の権限は大きいのでは?

 山崎 ですが党首は総理大臣です。全権は党首にあり、そして党首は総理大臣そして政権なんですよね。今の構造は、三権分立とは言っても、行政権の長と立法府を構成する政権政党の長は、同1人物です。日本の三権分立は、正確な意味では議院内閣制でちょっと違ったところがある。アメリカの場合、大統領は直接選挙で選ばれますが、議会の力も非常に強いです。日本の場合は議会で与党はほとんど発言しない。

 ――自民党の活力がなくなる一方、野党の体たらくを有権者は厳しく見ているようで、なかなか支持が集まらない。国民民主党なんかは1%台の支持率でうろちょろしている。これについては、山崎さんの勉強会で講演した小沢一郎自由党代表も、野党に対して苦言を呈されたと聞いていますが……。

 山崎 野党というのは、もともと自分たちが政策的に反自民で立ち上がったわけではなく、「自民党こぼれ」なんですね。小沢(一郎)さん自身がそうでした。野党を統一して自民党と対決すると仰っているが、あの人はもともと自民党の幹事長だった人です。そして私は当時その下にいました。
自民党を離れていって再び自民党に戻ってきた人が、今はたくさんいます。私の派閥にいる野田(毅)さんと保岡(興治)さんは、2人共一度自民党を出て行って戻ってきている。石破(茂)さんも、二階(俊博)さんもそうです。

 野党のなかにも「自民党こぼれ」がごろごろいます。自民党の居心地が悪くなって離れていったが、離れていった後、自民党復党を希望するが戻れない人はたくさんいる。また、長島(昭久)さんのように非常に有能な人で、自民党に入りたくてたまらない人もいる。野党で論陣を張れるのは、枝野(幸男・立憲民主党代表)さんや辻元(清美)さんぐらいじゃないですか。
小池都知事も出たり入ったりです。彼女は最初日本新党にいましたが、日本新党を立党した細川護熙さんが、そもそも元自民党ですから。僕の盟友で、僕が世話して参議院に回って、熊本県知事になったり色々しながら日本新党を立ち上げた人ですね。毛並みも人柄もいいんだけど、典型的なポピュリストですよね。小泉さんもそうでしたが……。

 今はポピュリストの時代ですよ。そういう意味で、自分で時流をつくることができない人たちは結局、「小さな城」ではだめで、「大きな城」に入らないと、要職に就けない、力が発揮できないということがわかって、みんな与党志向になった。そんな与党志向の野党集団なんていうのは、魅力が出るわけがないんですよ。単なる権力亡者の集団に過ぎない。屁理屈ばかり発言するから、国民は屁理屈に関心をもたず、魅力を感じないわけです。
だから小泉さんがいうことは当たっています。たとえば「反原発」で一貫すれば、それはそれで1つの主張ですから、野党としての存在意義が出てきますが、今の野党はそれすらもまとまっていない。憲法についてもまとまっていない。「本当は自民党の意見がいいんだ」という、彼らの本心がにじみ出ているわけです。

 憲法に関しては、私は今の自民党の意見、つまり安倍総理の意見は中途半端だと思っています。昔の社会党は、非武装中立という極端な議論ではあったものの、それはそれで一定の支持者ができるわけです。沖縄では今度それが実現したんですよ。反自民のオール沖縄が大勝利を収めたではないですか。イデオロギーよりもアイデンティティーがあったからです。アイデンティティーは沖縄共同体の絆ですよ。うちなんちゅうとやまとんちゅうの戦いで、うちなんちゅうが勝ったわけです。これは主義主張がはっきりしているという意味で存在感があったし、選挙にも強かったわけです。今の野党にはそれがないわけですよ。立憲民主党にそれらしきものがあるだけ。枝野イズムみたいなのがあるだけです。

(つづく)

<プロフィール>
山崎 拓

1936年生まれ。福岡県立修猷館高校、早稲田大学商学部卒。福岡県議会議員、衆議院議員(12期)。防衛庁長官、 建設大臣、自民党幹事長、同党副総裁などを歴任。近未来政治研究会最高顧問。柔道6段、囲碁5段。著書に『2010年日本実現』『憲法改正』など

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