2024年04月19日( 金 )

激突!伊藤忠がデサントに敵対的TOBへ まず、デサントの御曹司を担ぐ「番頭4人組」の追放だ!(前)

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 伊藤忠商事は1月31日、スポーツ用品大手デサントに対するTOB(株式公開買い付け)を始めた。伊藤忠は現在、30.44%を保有する筆頭株主。TOBは3月14日まで、1株あたりの買い付け価格は、デサント株の前日終値(1,871円)の約1.5倍となる2,800円。取得総額は約200億円。デサントの重要案件への拒否権を得られる「3分1」超の株式取得で、最終的には40%の保有をめざす。


経営陣の刷新を求める

 伊藤忠の狙いはどこにあるのか。読売新聞オンライン(2月1日付)は、こう報じた。

 〈伊藤忠の小関秀一専務執行役員は31日午後、大阪市内で報道陣の取材に応じ、創業家出身の石本雅敏社長が主導するデサント経営陣への不信感をあらわにした。伊藤忠は、TOB完了後、デサントの取締役を10人から6人程度に減らし、社外取締役の2人を除いて伊藤忠とデサント側で2人ずつを要求する方針だ。

 TOBの直接の引き金となったのは、デサント経営陣が投資ファンドと組んで検討していた経営陣による自社株買い(MBO)。昨年11月にデサントから打診を受けたが、「巨額の借り入れをしてまでやる利点がない」(小関氏)として反対し、TOBへと判断が傾いたという〉

 狙いがはっきり見えてくる。伊藤忠に叛旗を翻した「番頭4人組」の追放だ。デサントの10人の取締役はこうなっている。

【デサントの取締役】
会長             中村一郎(63)            前伊藤忠商事専務執行役員
社長             石本雅敏(56)            創業家3代目
専務執行役員(最高製品責任者)田中嘉一(61)           
常務執行役員         三井久(64)              デサントジャパン社長           
常務執行役員(最高戦略責任者)羽田仁(63)          
常務執行役員(最高財務責任者)辻本謙一(63)
常務執行役員         金勲道(50)              韓国デサント社長
取締役            清水源也(57)            伊藤忠商事執行役員
社外取締役          井伊雅子(56)          一橋大学国際・公共政策大学院教授
社外取締役          朱 殷卿(56)           コアバリューマネジメント社長

 伊藤忠の人事構想は、田中専務、三井常務、羽田常務、辻本常務を更迭し、デサント側は石本社長と金常務の2人、伊藤忠側は中村会長と清水取締役の2人にするというもの。最大の狙いが「番頭4人組」の追放にあることがわかる。

岡藤会長の恫喝テープ

 TOBの直接の引き金になったのは、「デサント経営陣が投資ファンドと組んで検討していた経営陣による自社株買い(MBO)」と伊藤忠の小関専務執行役員は語っているが、いささかきれいごとすぎる。本当は、ドロドロした生臭いものだ。

 『週刊文春』(2018年11月1日号)が、『伊藤忠のドン岡藤会長の“恫喝テープ” デサント社長に「商売なくなるで」』という暴露記事を掲載した。

 両社のトップ会談は2018年6月25日、東京・青山の伊藤忠東京本社で行われた。デサント側が株主総会後の恒例の決算報告に訪れた。伊藤忠からは岡藤正広会長兼CEOと小関秀一専務執行役員・繊維カンパニープレジデント、デサントからは石本雅敏社長と三井久常務執行役員が出席した。

 デサントは連結売上高で約5割、営業利益で大半を韓国事業が占める。伊藤忠は市場規模の小さい韓国に依存するのは危険と判断し、経済成長が著しい中国市場を開拓するよう求めてきた。しかし、デサントは忠告を無視。韓国頼みの経営は相変わらずで、中国事業の取り組みは遅れている。それが伊藤忠のドン、岡藤会長を苛立たせていた。石本社長の顔を見るや、岡藤会長の怒りが炸裂した。

 「文春」によると、こんなやりとりだったという。

 岡藤「伊藤忠の信用だけで借りてな、『独立独歩でやります』と。ここまでナメられたら、やってられへん。俺のことを馬鹿にしているのかというとるがな」「(株を)売るとしたらライバル会社か中国かファンドやわな。それしかないわな。そうやろ?」

 石本「この1年の間に、(株を)増やすか減らすかを必ず決めるということですか?このまま一緒に何かをやっていくことを考えるのではなく、増やすか減らすのかどちらかということですか?」

 デサントは伊藤忠の信用をバックに商売ができているのに、持ち株が25%という中途半端な状態で、経営にグリップが利かない。なのに何かあったら伊藤忠が責任をかぶるのはおかしい。これが岡藤会長の主張だ。
  現状維持を主張する石本社長に、岡藤会長は経営体制についても言及した。

 岡藤「今の経営体制っていうのは、それはもう、会社の社長としたら我々は認められないわ、な?」

 石本「なぜ私がこのまま経営者でやっていくのが認められないのですか?」 

 2人の主張は平行線をたどり、ケンカ別れで終わった。

(つづく)
【森村 和男】

(中)

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