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2019年02月26日 07:01

カドカワ川上社長、解任!~KADOKAWAの角川歴彦氏がドワンゴの川上量生氏に「見切り」(後)

映画と書籍を同時に売り出す角川商法

 角川歴彦氏は、角川書店の創業家の出身。早稲田大学第一政経学部卒業と同時に、角川書店に入社した。俳人で国文学者の角川源義氏が敗戦直後の1945年11月に設立したのが角川書店。角川文庫の成功で会社の礎を築いた。

 源義氏の後を継いだのが長男の春樹氏(77)。國學院大学の学生時代は右派の学生として鳴らし、全学連の学生相手に大立ち回りした武勇伝が自慢だ。

 社長の春樹は毀誉褒貶の激しい人物で、ワンマンで傍若無人。その反面、斬新なアイデアの持ち主で、角川映画を始めるなどマルチメディアの先駆けとなった。エンターテインメントを中心とした文庫戦略をとり、それまでの名作文学や古典中心の文庫のありかたを転換。映画と書籍を同時に売り出す手法は角川商法といわれたが、長くは続かなかった。春樹氏が手がける映画事業が不振に陥り、メディアミックス路線は破綻した。

3年続いたお家騒動

 角川書店は、歴彦氏が育ててきたテレビ情報誌『ザテレビジョン』や都市生活情報誌『東京ウォーカー』が収益を支えた。

 春樹路線に危機感を抱いた歴彦氏は、自分の業績を背景に、兄に忠告した。春樹氏は歴彦氏に会社を乗っ取られるのではないかと危惧を抱き、90年から93年にかけて、角川書店はお家騒動に揺れた。

 春樹氏が米南カリフォルニア大学を出たばかりの息子の太郎氏を後継者として入社させたことから対立は表面化。92年9月、歴彦氏は角川書店副社長を解任され、春樹氏の長男、太郎氏が取締役に就任した。

 退社した歴彦氏が立ち上げた新会社メディアワークスに、ゲーム雑誌、漫画雑誌など若者向けの書籍を出版している子会社の角川メディアオフィスの常務だった佐藤辰男氏ら役員・社員が合流した。佐藤氏は、ドワンゴとの統合新会社の初代社長に就いた歴彦氏の腹心だ。角川書店は骨肉の争いによって分裂した。

 1993年8月、春樹氏はいわゆるコカイン密輸事件で逮捕された(懲役4年の実刑が確定)。角川書店社長を解任され、代わって歴彦氏が社長として復帰した。歴彦氏はM&Aを重ねてゲームやアニメ、音楽など「クール革命」の担い手となる事業を築いたが、最大の課題は後継者選びだった。
春樹氏との骨肉の争いがトラウマとなった歴彦氏は、統合新会社の誕生を機に同族会社からの決別を決断したのである。

期待された後継者を失格となった川上氏

 筆頭株主である川上量生氏は、オーナー経営者の座を約束されていたが、結果を出すことができなかった。原因は、ドワンゴが手がける動画配信サービス「nico nico」(ニコニコ動画、ニコニコ生放送など)の不振だ。

 ドワンゴの主力サービスである「ニコニコ動画」は、有料会員から得る利用料を主な収入源としている。無料が当たり前だった日本のネット文化に有料課金モデルを構築したのはドワンゴだ。

 しかし、広告収入による無料モデルで利用者を増やすGoogleの「YouTube」に牙城を崩された。収益の柱となる有料会員は2016年の256万人をピークに減少に転じ、昨年末には188万人に落ち込んだ。ドワンゴの業績は赤字幅が拡大していた。

【ドワンゴの業績推移】(単位:百万円)
2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期  2018年4~12月期 
売上高    32,315      30,719    28,067      19,778
営業利益       1,081     ▲189       ▲2,908     ▲3,132
当期利益       249      ▲1,122            ▲2,893         ▲6,334
(資料:カドカワの通期業績予想修正発表文より。▲は赤字)

 カドカワは2月13日、2019年3月期の連結決算の業績見通しを下方修正した。

 ドワンゴがスマホ向けゲーム「テクテクテクテク」やウェブサービスの不振で、固定資産の減損損失37億9,900万円を特別損失として計上。それにともない、カドカワは、ドワンゴ株式について株式評価損149億500万円を特別損失として計上するためだ。

  カドカワの19年3月期の売上高は2,070億円(期初予想比10.4%減)、営業利益は19億円(同76.3%減)、当期赤字43億円になる。当初純利益は54億円の黒字を見込んでいたが、ドワンゴの不振で、一転、赤字に転落する。

 経営統合は、ドワンゴがKADOKAWAを救済するという見方があったが、逆の結果で終わった。グループは再編され、ドワンゴは4月からKADOKAWAの子会社になる。

 角川歴彦氏は、川上量生について、「天才、川上くん」と持ち上げ、「川上くんという若き経営者をようやく手にした」と後継者ができたことにご満悦だった。

 川上氏に見切りをつけた角川氏は、後継者という難問に再び向き合うことになった。

(了)

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