2024年03月29日( 金 )

カドカワ川上社長、解任!~KADOKAWAの角川歴彦氏がドワンゴの川上量生氏に「見切り」(前)

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老舗出版社KADOKAWAと新興IT企業ドワンゴの経営統合はサプライズだった。あれから5年。ドワンゴ創業者の川上量生氏が持ち株会社カドカワの社長を引責辞任した。事実上の解任だ。KADOKAWAの角川歴彦氏が川上量生氏に「見切り」をつけたかたちだ。

角川氏と川上氏の「蜜月」関係は終わった

 カドカワは2月13日、川上量生(のぶお)社長(50)が同日付で辞任し、代表権のない取締役になったと発表した。新社長には松原真樹専務(65)が昇格する。

 川上氏が創業したドワンゴの動画投稿サイト「ニコニコ動画(ニコ動)」の不振で、親会社のカドカワの2019年3月期の純損失が43億円の赤字に転落する見通しになったことから、降格で責任をとる。

 川上氏はドワンゴの取締役も辞任して顧問に就任。ドワンゴの荒木隆司社長(61)も退任し、後任に夏野剛取締役(53)が就く。夏野氏はNTTドコモに在籍中、松永真理氏らと、世界初の携帯電話IP接続サービス「iモード」を立ち上げたメンバーの1人だ。

 カドカワは、老舗出版社のKADOKAWAとドワンゴが2014年に経営統合してできた持ち株会社。ドワンゴの川上量生氏が社長として経営に当たってきたが、業績が低迷。相談役に退いていたKADOKAWAの角川歴彦氏(75)が会長に就任、再建に取り組んできた。2人の蜜月関係は終わった。

 経営統合はなぜ失敗したのか?

「日の丸プラットフォーム」を目指す

 2014年5月14日。書籍や映画、アニメなどを手掛けるKADOKAWAと、インターネット動画投稿サイト「ニコニコ動画」で知られるドワンゴが経営統合を正式に発表した。経営統合は、日本企業がいよいよ世界のコンテンツ流通プラットフォーム(基盤)の主導権争いに本格参入することを意味した。
 日本経済新聞電子版(2014年5月15日付)は、統合の舞台裏をこう報じていた。

 〈「川上君そろそろどうかねと、3年前から(経営統合の話を)持ちかけていた。ようやく私は若き経営者を手にできた」。14日午後、都内のホテルで開かれた記者会見。その場でKADOKAWAの角川歴彦会長は、ドワンゴ川上量生会長にラブコールを送り続けた経営統合の舞台裏をこう明かした。

 (中略)かねてグーグルなどIT列強が築いた流通基盤に日本のコンテンツ企業やアーティストが振り回されている現状は危険だと公言していた角川会長。昨秋(13年)には自著「グーグル、アップルに負けない著作権法」を書き上げ、このままでは適正な収益を確保できず、コンテンツ業界はいずれ立ちゆかなくなると警鐘を鳴らした。

 ひそかに温めていたのがドワンゴとの経営統合で、IT列強の対抗軸になり得る「日の丸プラットフォーム」を作り上げる構想だった。〉

後継者を川上氏に托す

 角川歴彦氏がドワンゴとの経営統合にこだわった最大の理由は、川上量生氏を後継者にすることにあった。これから成長を遂げるには紙媒体出身者ではダメ。ネットに強い若き経営者に託すしかない。早い段階で、川上氏に白羽の矢を立てていたのである。

 川上氏は京都大学工学部卒。ソフトウエア専門商社を経て1997年にドワンゴを設立。従来型携帯電話の着メロや着うたの事業をヒットさせた。2007年に始まったニコニコ動画が人気を呼び、日本のネット文化の発信基地だった。

 2014年10月1日、持ち株会社KADOKAWA-DWANGO(現・カドカワ)が誕生した。東証1部に上場する両社の株式を新設会社の株式と交換する方式が取られた。交換比率は、KADOKAWAが1.168に対してドワンゴが1だ。

 統合発表直前の両社の時価総額は、KADOKAWA922億円、ドワンゴ1047億円で、ドワンゴが上回る。M&Aの世界ではドワンゴがKADOKAWAを安く買収したと評した。出版不況に悩むKADOKAWAをネットで伸びるドワンゴが救うというのが大方の見方だった。

 持ち株会社カドカワの筆頭株主は川上量生氏(持ち株比率8.68%=18年3月末時点)。統合時、社長はKADOKAWAの佐藤辰男相談役で、川上氏は会長だったが、15年6月から社長に就いた。川上氏の経営体制が整った。

 KADOKAWA側には不利な統合だが、角川継彦氏には川上氏という未来を托す後継者を手に入れたことが最大の成果であった。元社長の角川春樹氏との骨肉の争いがトラウマになっている歴彦氏は、お家騒動を繰り返さないために、脱同族に踏み切ったのだ。

(つづく)

(後)

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