2024年03月29日( 金 )

「対米従属・軍事大国」を脱し、「平和と共生の政治」を実現!(後)

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 2月16日(土)の午後6時30分~9時20分、文京区民センターにおいて公開シンポジウム「脱 大日本主義のすゝめ」(主催:「友愛政治研究会」後援:「村山首相談話を継承し発展させる会」)が開催された。開場前には長蛇の列ができ、全国から約300名が参集した。各講師の発言に、時折大きな拍手が起こり、会場は大いに盛り上がった。 

 植草氏に続いてマイクを握ったのは、川内博史・衆議院議員である。

川内博史・衆議院議員「日本の主権を取り戻す」

<実質賃金の上昇は鳩山政権だけであった>

川内 博史 氏

 川内氏は植草氏の発言を受けて、その資料「減少し続ける実質賃金」から「2006年から現在までの間で実質賃金が上がったのは鳩山政権だけである」という事実を披露した。

 第2次安倍政権になってから、実質賃金は下がり続け、格差も大きく拡がった。そして、マスコミではほとんど報道されない「現在4万円以下の年金で暮らしている高齢者は全国で約200万人(女性が160万人)います。さらに、就学援助(生活保護世帯に準じる)を受けている、小・中学生は約160万人います」と衝撃の事実を明らかにした。しかも、いずれもこの数字には生活保護世帯は含まれていない。そのうえで川内氏は「安倍首相は全体的に良くなっている」「給料は上がっています」と曖昧な表現をよく使いますが、それらに数字の根拠はまったくありません、と語った。

<この矛盾点解消のために選ばれたのが沖縄>
 続いて、川内氏は話題を沖縄に移した。戦後、日本は日米安全保障体制などに基づき、アメリカの支配下に置かれました。そのアメリカは第二次世界大戦後、休むことなく世界中で戦争を起こしています。一方で、日本は戦後の「平和憲法」に基づいて、戦争をしないことを誓いました。この矛盾点解消のために選ばれたのが、本土から遠く離れている沖縄です、と喝破した。

 これまでは「基地があった方が、経済が潤っていいでしょう」と洗脳してきました。しかし、そのごまかしも効かなくなったのが、2月24日に行われる「普天間飛行場の辺野古移設の是非を問う沖縄県明投票」だと思います、と語った。さらに、サンゴは沖縄の海の美しさをつくり出すのに欠かすことのできない存在です、と語り「私たちの大切な海を護ってくれているサンゴ移植のことを安倍政権は軽く考え過ぎている」と憤った。辺野古のサンゴ7万4千群体のうち移植できたのは9群体(19年1月現在)にとどまっている。5年前に那覇第2滑走路建設の為に移植したサンゴはわずか5年で6割が死滅した。

 最後の登壇者は纐纈厚(こうけつ・あつし) 明治大学特任教授である。

纐纈厚 明治大学特任教授「朝鮮半島問題と日本の植民地責任‐明治150周年と植民地主義の未精算」

<戦後日本が米国から押し付けられた3つ>

纐纈 厚 氏

 纐纈氏は、韓国の文喜相国会議長が「朝鮮日報」に掲載されたインタビューで「慰安婦問題で天皇陛下の謝罪が望ましい」と述べた発言や、先の「日本企業に元徴用工らへの賠償を命じた」韓国最高裁判決などを受けて悪化している日韓関係に言及した。

 纐纈氏は戦後日本が米国から押し付けられたものが3つあると話し始めた。この3つが戦後の日本政治を危うくし、戦前の「大日本帝国」に回帰する危険性を裏づけていると続けた。1つ目は「自衛隊」であり、2つ目目は自衛隊の産みの親でもある「日米安全保障体制」である。そして3つ目として「天皇制」に言及した。

 纐纈氏は「戦前の天皇は国家元首であり、政治的な権力をもっていました。戦後は象徴天皇制ということになり、国事行為のみを行う存在になりました。しかし、一方で、権力の象徴になることによって、政治的なパワーは倍増したのではないかと考えます」と語る。それは、政治中枢がどんなに根腐れを起こしていようとも、天皇の「被災者に寄り添う姿(地震災害などの際)」などさまざまな行脚を国民が見ることによって、あまたの暴力(差別、貧困、人権など目に見えない暴力を含めて)が相殺されてしまう現実がある。つまり、本来私たちが政治中枢に向けるべき怒りのエネルギーが天皇の陰に隠れてしまっているというわけである。(この現象を纐纈氏は「ブラインド天皇」と呼んだ)

 纐纈氏は、今日の日韓問題にもそのことが根底にあると続けた。多くの日本国民は、台湾、朝鮮などを日本が植民地にしていたことに、ほとんど痛覚せずに、戦後を過ごした。
(日本人総体の歴史認識の不在性)日本の植民地は自然消滅のようなかたちで日本から離れていき、植民地戦争のようなものも起こらなかったからだ。多くの日本人は、他国を支配、他国の文化を抹殺してきた歴史を抱え込まずに過ごすことができた。

<小さくとも度量がある、良識ある国家に>
 そのことと、「慰安婦問題で天皇陛下の謝罪が望ましい」という発言とはどのように連動するのか。纐纈氏は朝鮮の現場の支配者は朝鮮総督でした。しかし、総督はよく変わるが、変わらないのが総督の上にいる天皇であったというわけです。今日本国民がこの植民地責任を、痛覚を伴った正しい受け止め方ができないと、再び「大日本主義」走ってしまう危険性があると、警鐘を鳴らした。最後に纐纈氏は、21世紀が終わる時には日本の人口は半分になります。石橋湛山のいう、『日本は小さくとも度量がある、良識ある国家』になるべきであると語り、それで、十分に幸せに、信頼にも足り、世界に向き合っていくことができると結んだ。

 4人の講演後は、参加者と講師陣の質疑応答があり、藤田高景氏(村山談話を継承し発展させる会・理事長)の閉会挨拶で幕を閉じた。

(了)
【金木 亮憲)

 

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