2024年04月20日( 土 )

期待かかる福岡市のWF再整備とベールに包まれたロープウエー計画(2)

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寄港回数4年連続日本一の博多港

博多港中央ふ頭に停泊する大型クルーズ船

 国土交通省によれば、18年(1~12月速報値)の日本の港湾へのクルーズ船の寄港回数は2,928回、旅客数は244.6万人。寄港回数は過去最高となった。クルーズ船の出発国別で見ると、中国が961回で最多となっている。国内港別の寄港回数は、1位・博多港(279回)、2位・那覇港(243回)、3位・長崎港(220回)、4位・横浜港(168回)、5位・平良港(143回)となっている。横浜港を除いて、九州の港湾が上位に名を連ねている。

 博多港への寄港回数は、15年に横浜港を抜いて国内1位になって以降、4年連続で国内最多で推移している。14年の寄港回数は115回だったが、15年には259回に急増。16年に328回、17年も326回と300回以上を記録した。

 福岡市は18年1月、上海港の呉淞口クルーズターミナルを整備運営する上海呉淞口国際郵輪港発展有限公司との間で、クルーズに関する覚書を締結。博多港と上海港を就航する定期定点クルーズの実現などに取り組んでいる。同年9月には、両港を結ぶ「フライ&クルーズ(飛行機と船による旅行)」を試験的に実施。クルーズ市場の拡大に向けた独自の取り組みも進めている。

 博多港の港湾管理者は福岡市。ウォーターフロント地区を含め、ほとんどのエリアが福岡市の管理下にある。WF地区では、中国(上海、厦門、香港など)や韓国(釜山、済州など)などからの外航クルーズ船ターミナル「中央ふ頭クルーズセンター」が15年5月に供用を開始している。その後、博多港へのクルーズ船寄港回数は急増。16年には383回を数え、4年連続で日本最多となった。博多ふ頭には、壱岐や対馬など国内フェリーのターミナルがあるほか、博多湾内のクルーズ船なども発着している。海外からの乗降客数は約209万人(17年)を記録しており、25年連続で国内最高を誇っている。

 18年9月には、国土交通省が整備を担当した中央ふ頭で延長330mの西側岸壁が完成した。総事業費は約40億円。世界最大級の22万tクラスの超大型クルーズ船(オアシス全長362m)の受け入れが可能になった。岸壁整備前は、13万tクラス(ボイジャー全長311m)が受け入れの上限だったため、それ以上の船は箱崎ふ頭に着岸していた。岸壁の整備完了により、中央ふ頭では現在、中型船同士など2隻同時着岸も可能となっている。

クルーズ船受け入れで他都市と連携

クルーズ船旅客が出入国する福岡クルーズセンター

 一方で博多港では、クルーズ船の寄港回数の増加にともない、受け入れを断るケースも発生している。受け入れを断った件数は、18年度には約190件に上った。福岡市では機会損失が約670億円になると試算している。

 福岡市には「博多港寄港のお断りを減らしたい」という考えがある。他方、福岡市に限らず、クルーズ船寄港地のある自治体には「ぜひウチの港にきてほしい」という考えがある。インフラ整備やおもてなしに力を入れるのはそのためであり、そう考えるのは当然のことだが、その結果、自治体間のクルーズ船「誘致合戦」が繰り広げられている現状がある。

 国が目指す「お断りゼロ」は、博多港に限らず、「寄港地の全国展開」を前提にしたもの。九州など西日本に寄港地が集中していることをむしろ課題視している。「北東アジア海域をカリブ海のような世界的なクルーズ市場」にするという将来像を描いており、「どこの港に寄港してほしいということはない。たとえば、博多港に着岸できなければ、九州管内の港に着岸してほしい」(同)というスタンスを堅持している。

 福岡市は19年1月、下関市、北九州市、佐世保市、八代市、別府市、日南市とともに、7市によるクルーズ船受け入れに関する連携協定を締結。連携協定では、福岡市が開発運用している寄港地観光手配予約システム「クルーズNAVI」の他都市との共同運用を始めるほか、寄港地観光の魅力向上などに7市が連携して取り組むことなどを盛り込んでいる。

 ただ、日本のどの港に寄港するかを決めるのは、船社だ。日本への寄港地を決める際には、「中国のクルーズ客にとって、魅力的かどうか」が結果を大きく左右する。

 同じく19年1月、世界のクルーズ船社の経営者らが集まる「福岡クルーズ会議」が福岡市内で開かれた。船主からは「日本は、中国クルーズ船の目的地として、ベストのポテンシャルをもっている」「上海就航便については、博多港がベスト」などと寄港地としての日本を高く評価する声が出た。その一方、「九州の寄港地はどこも似たり寄ったり。その土地ならではのユニークな体験ができるなど、もっと特化する必要がある」などの注文も出された。

(つづく)
【大石 恭正】

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