2024年04月26日( 金 )

期待かかる福岡市のWF再整備とベールに包まれたロープウエー計画(3)

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全国有数のMICE実績を誇る福岡市

福岡クルーズ会議に出席した九州
7市首長(前列)と船社経営者ら

 MICEとは、会議(Meeting)、報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字をとった造語で、ビジネスイベントなどの総称だ。

 13年に閣議決定された「日本再興戦略」では、「2030年にはアジアNO.1の国際会議開催国としての不動の地位を築く」という目標が掲げられ、MICEは、重要なツールとして位置づけられている。

 国土交通省観光庁は、国際的なMICE誘致競争を背景に、13年に「グローバルMICE戦略・強化都市」7都市を選定。15年にはさらに「グローバルMICE都市」5都市を選定し、競争に打ち勝てる都市の支援、育成を図ってきた。12都市には、全国の政令指定都市などが選ばれており、九州からは福岡市と北九州市が名を連ねている。

 福岡市での国際会議(参加者総数50名以上、参加国3カ国以上)の開催件数は、09年から8年連続で東京都につぐ国内第2位を記録するなど、全国有数のMICE開催都市となっている。17年は、開催件数が300を割り込み、神戸市、京都市に抜かれ、国内第4位に落ちている。トップの東京都の開催数は608件、福岡市は296件だった。国際競争だけでなく、国内での競争も激しくなっている。

供給力不足によるお断り発生を問題視

 福岡市では87年、「コンベンションシティづくり基本構想」を策定。WF地区をコンベンションゾーンと位置付け、MICE施設などの集積を進めてきた。15年には、MICE機能の強化を目的に、「MICE関連施設整備方針」をまとめ、官民連携による再整備の考えを打ち出した。この方針は、現在の再整備にも引き継がれている。

 WF地区には現在、「マリンメッセ福岡」(約1.5万人収容、展示会・スポーツ大会などを開催)、「福岡国際センター」(約1万人収容、展示会などを開催)、「福岡国際会議場」(約5,000人収容、国際会議などを開催)、「福岡サンパレス」(2,322人収容、コンサート開催など)といったMICE施設が立地している。WF地区ではここ数年、参加者が1,000人以上の国際会議の開催が増加しており、これらMICE施設の年間利用者数は300万人(17年度実績)を超えている。

 WF地区のMICE施設でのイベント増加により、各移設の稼働率も上昇。マリンメッセ83.9%、国際センター90.4%、国際会議場77.4%、サンパレス82%(いずれも17年度実績)となっている。高い稼働率の裏では、イベント利用の申し込みを断るケースも増えており、その件数は約90件(17年度)に上っている。「年間を通して、お断りが発生している。イベントが集中する8~10月はとくに多い」(福岡市経済観光文化局担当者)と話す。福岡市では、この場合の機会損失を年間約165億円と試算。「お断りは重要な成長機会を失うもの」であり、既存施設では「供給力不足」だと指摘している。

 MICEの供給力不足以外にも、施設周辺には商業施設やホテル、飲食店などの賑わい機能が不足していることを課題に挙げている。WF地区界隈は、イベントのない夜間などには人通りもまばら。天神、博多につぐ都心拠点としては、あまりに物足りないというわけだ。各施設間の動線が確保されておらず、人の移動が不便である点も課題にしている。

第2期展示場などに先行着手

 同市では、今回の再開発事業の先行整備として、第2期展示場と立体駐車場の整備に着手。マリンメッセ南側に展示場(地上2階、敷地面積1万7,600m2、展示面積5,000m2)、国際会議場東側に駐車場(地上5階、敷地面積8,000m2、駐車台数約800台)をそれぞれ整備する。事業方式にはBTO(建設→移転→運営→維持管理)方式を採用。契約事業者は(株)九電工を代表企業とする(株)福岡にきてんPFIで、契約金額は約102億円(事業期間約18年間)。供用開始は、展示場が21年4月、駐車場が20年5月の予定だ。

 第2期展示場西側に「(仮称)WFホール」(延べ床面積約1.4万m2、固定席2,500席以上、概算整備費約120億円)を整備する。WFホールは、取り壊しとなる福岡サンパレス大ホールの承継施設の位置付けで、コンサートなどのホール機能を担う。大博通りに面するサンパレス跡地には、そのアクセス性を生かし、バスなどが乗り入れる交通広場(概算整備費約33億円)、地下式駐車場(約450台、概算整備費約50億円)を整備するほか、スイートルームやバンケットなどを備えた高級ホテル(客室数250室以上)を誘致する。MICE関連駐車場としては、トータルで1,700台分を確保する。

 WF地区への博多、天神方面からのアクセス道路には、大博通りや那の津通りがあるが、いずれも通行車両が多く、現状、交通混雑が多発している。公共交通もバス(都心循環BRT含む)、タクシーのみで、交通混雑時には遅れが出ている。交通広場の整備により、臨時バスの乗降場を4バースに拡大(現状2バース)するほか、タクシーの乗降場も4バース(現状3バース)確保する。大博通りから出入り可能な公共交通専用動線も整備する。

 現在、MICE施設間などの移動には、地上の歩道などを歩行する必要があり、歩行者の行列による交通阻害、雨天時に濡れるなどの課題を抱えている。今回の再整備では、駐車場やMICE施設を歩行者デッキ(幅3~6m、概算整備費約20億円)で結ぶ。主な結節部には、エレベーターなども設置する。

 WF地区東側を通る4車線の築港石城町線の延伸整備(現在用地取得中)のほか、那の津通りの6車線化未整備区間(那の津大橋)の整備を行い、東西方向の交通容量を確保する。MICE駐車場を都市高速道路南側へ再配置することにより、旧港湾局前交差点などの交通負荷低減も図る。

(つづく)
【大石 恭正】

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