業界の存在価値を上げ、選ばれる仕事を目指す
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2019年03月13日 11:51

業界の存在価値を上げ、選ばれる仕事を目指す

(公社)福岡県産業資源循環協会
(株)森商事 代表取締役
会長  森 史朗  氏

 事業活動で必ず発生する産業廃棄物。その適正処理を担う業界団体が、(公社)福岡県産業資源循環協会である。高度経済成長期に登場した「使い捨て」は、今はもう昔。現在ではあらゆる計画の段階で、リサイクルの視点が必要不可欠となっている。一方で、自然災害が頻発するようになった近年では、業界としての取り組みも多様化。協会員400社を超える組織の代表に聞いた。

(聞き手 : 弊社取締役 緒方 克美)

 ――「福岡県産業廃棄物協会」から改称されたのですね。

森 史朗 氏

 森 産業廃棄物と一括りにしても、扱う種類は多岐にわたります。それだけに、企業ごとに得意不得意分野があり、同業者でありながらも分野が異なると、わからないことも多いのが正直なところ。「リサイクル」「リユース」という言葉が普及して久しいこの時代、あらゆる業種において、“捨てる”という概念はほぼないに等しい。有効活用をいかに考えていくのか。弊協会は、廃棄物の適正な処理はもちろんですが、“捨てる”のではなく、“活用する”を第一命題とするべく、協会の名前を変えた経緯があります。

 また、近年多発している自然災害に対応するための災害協定を福岡県と締結しておりますが、県内にあるおよそ60自治体と順次進めていきます。現在、約半数ほどの自治体と締結済みです。高度成長期には、近年のように自然災害は頻発していませんでした。今はどこに住んでいても、自然災害は起きるものだという認識になっており、業界団体が担う責任は大きく、社会的な使命があると考えています。

 ――同じ業界でも、協会員ごとに扱う品目が異なります。

 森 リサイクルやリユースという観点では、方向性は同じです。たとえば、建設廃材を扱う協会員は建設業界への提案を、化学系を扱う協会員は工場やプラントへの提案を日々行っていますが、協会全体で一致団結してとなると、先ほどの自然災害への対応ということになります。現在、賛助会員まで含め460社ほどの会員企業が加盟しており、会員数は増加傾向にあります。

 協会内には、専門部会というものがあり、医療部会、建設部会、収集運搬部会、中間処理部会、最終処分部会なども組織されています。上位組織に連合会がありますが、そこでは外国人労働者の受け入れについて提起したいという動きもあります。この業界には建設業法のような業法がありませんので、サービス業のカテゴリーに入ります。外国人の就労期間は、建設業では3年からさらに延びましたが、サービス業はそうではない。たとえば「廃棄物業法」などの独立業法が設けられれば、さらに企業価値が高まるので、業界の悲願でもあります。関係機関に働きかけてはいますが、すぐに実現するような話ではありません。地道な活動が必要になってきます。

 廃棄物処理業者といっても、多岐にわたりますから、さまざまな声が挙がってきます。ベンチマークをどこにもつかという恒久の課題があります。協会員すべてをすくいあげるのが理想ですが、齟齬も生じます。政策に沿った取り組みを行おうと協会が推進しても、当然反対意見も出てきたり、棚上げしたままの案件もあります。それでも、支部単位で声が挙がれば、それを理事会で検討したり、ある程度の見解を協会が示すという責任もあると思っています。

 ――協会における具体的な取り組みを教えてください。

 森 自然災害に備えるための廃棄物撤去に関する災害協定をメインに、青年部では将来的な人材の確保のため、中学校への出前授業を行っています。青年部のメンバーが、実務を想定した産業廃棄物の処分方法の検討、見積作成、水質実験を行ったそうですが、大盛況だったと聞いています。将来的に、この業界に人材として入ってきてほしい、という気持ちはありますが、何よりも地球環境に興味をもつ子どもを育成したいというのが願いです。

出前授業の様子

 アメリカで産業廃棄物を扱うウエストマネジメント社は、プロゴルフのトップトーナメントを主催するような大きな会社です。アメリカでは、子どもに「将来何になりたいか?」というアンケートで、「ウエスト社に入って地球の環境を守る」という回答をする子どももいるそうです。

 一方、日本ではこの業界に対して、昔から良いイメージがありません。恒久の命題に対して、正義感をもって廃棄物処理の道を選ぶという若者はいないといっても過言ではない。アメリカでは先進的な業界イメージが定着しており、できる限りそれに近づきたい。そういう想いが出前授業に詰まっています。「汚れる仕事だから、普通ではない人がやっているんじゃないか?」とイメージは先行しますが、とんでもない。もうそんな時代はとうの昔に過ぎました。

 ――福岡県で業界が抱える課題として、処理施設の不足があると聞きます。

 森 中間処理施設、とくに最終処分施設が圧倒的に足りない。経済圏としては福岡が九州で最大であるのに、最終処分は他県に搬出しているのが実情。とはいえ、廃棄物が出たらすぐに「捨てる」という考え方はもうありません。製造業においては、どの企業でも廃棄物をリサイクルできる提案が要求されます。ただし、最終処分場が必要なのも事実。リサイクルの原則では、廃棄物は素性ごとにきっちり分類してしまえば元に戻る。あとは費用対効果の問題になります。また、一度や二度はリサイクルできたものでも、永遠というわけにはいきません。製造業などではプラント建設計画の段階で、どのような処理を経ればリサイクルが可能になるのかという相談をしてくるのが当たり前になっています。

 また、有害物質とされる鉛やヒ素などは、人間に被害をおよぼすためにこの世に出てきたものではないということを考えないといけない。健康被害をおよぼす一方で、原料として必要だから使用される。事件が起こればセンセーショナルに報道されますが、自然界には存在するもの。それを大前提に物事を考える必要があると思います。

 他県におんぶに抱っこではいけないと思いながらも、廃棄物の広域処理は定着しつつあります。それでも、福岡県内に最終処分場が必要なのかといわれると、それは必要です。北九州市のように、廃棄物処理を含めた環境ビジネス都市を標榜するのも戦略的で先進的だと思います。

 ――福岡の産業廃棄物処理費用が安いと言われますが・・・。

 森 市場の原理、企業経営者の裁量に関わってくる部分だと思います。一般的には考えられない安い金額で処理を請け負い、適正に処理しないまま逃げるという話もごくたまに聞かれます。それが事件になり、暗いイメージが定着してしまいました。ですが今は、そのような業者はほとんどいません。

 ――廃プラの受入停止など、中国の政策や方針転換による影響はありますか?

 森 あるはずですが、協会の理事会などではまだ声は挙がってきていません。これまでは、あらゆる種類の廃プラを混在させて輸出してきました。最近では、塩水による比重分離で種類別に分けてインゴットしたものを扱うようになった。単一品目のプラなら、それは「宝になる」というのを中国は知っています。昔はまるで中国をゴミ捨て場のように何でももって行っていた。それを止めたわけです。政権があれだけ環境を意識して動けば、それは当然の結果だと思います。

 ――被災地である朝倉地区の現状はいかがですか。

 森 廃棄物処理に関しては、もう終わると聞いています。流木はバイオマス発電へ利用され、道路の寄り付きの関係で次年度に回された分はあると聞いていますが、ほとんど終わったようです。住居の解体は2件ほど残っているとの話ですが、もう先が見えています。今回は福岡県から協会が受託して処理を行いました。協会としては初めての試みでしたが、協会員、そして取引業者に出動していただいて、速やかに処理できたと思います。

 ――鹿児島県で発覚した(株)北斗による不法投棄の相談が、協会にも挙がってきていると思います。

 森 協会としては扱っていませんが、(北斗の中間処理場があった)佐賀県の会長とは連絡を取り合って、情報共有はしています。不法投棄が行われた経緯、鹿児島県の対応も把握しています。現時点では、福岡県の協会としては会場を提供して、関係者の情報交換の場を提供するにとどまっていますが、鹿児島県の対応次第では、より大きな声が協会員から挙がってくることも想定しています。

 ――関係者からは、排出者責任の定義を問う声も聞かれます。建設業界でいえば、ゼネコンも排出事業者になるはずだと。

 森 ゼネコンが産廃の処理費用を下げ叩くわけです。長い間積み上げてきた取引関係もありますし、日銭を稼がないといけない状況もある。理想論になるかもしれませんが、「安い値段ではできません」というべきなのでしょう。「高くても、御社なら間違いない」と思われる状況をつくっていくべきです。

 ――400社の組織のトップとして、発信力が求められる立場にあります。

 森 たしかに発信力は重要な部分です。これが不得手な方は、向かない立場かもしれません。いつも意識しているのは、「神は細部に宿る」ということ。単に「一日無事故でがんばりましょう」というのは、何の効果もないと思います。それよりも「車両のバンパーの位置が白線を過ぎないように止まりましょう」と具体的にいうのが、細部まで徹底するということ。大義をもって、400数十社が同じベクトルに向かって進めば、良い方向に向かっていくと思います。かつての会長から、「今の会社規模なら、他人の世話ができることは積極的にしなさい」と言われて、役を引き受けました。業界の存在価値を上げていく。イメージを変えていく。その一助になればいいと思って、今後も活動を続けていきます。

【東城 洋平】

<INFORMATION>
(公社)福岡県産業資源循環協会
所在地 : 福岡市博多区吉塚本町13-47
      福岡県国保会館2階
電 話 : 092-651-0171
FAX : 092-651-1065

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