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2019年04月04日 10:00

「原発再稼働」に垣間見る『日本病』とは!(中)

元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授 村田 光平 氏

「原子力の安全そのものには責任をもたない」組織が認可

 ――先日、小泉純一郎元首相の講演会「3.11から8年 日本の歩むべき道」を取材しました。その際に、演者の1人である弁護士の河合弘之氏(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟幹事長)が「東海第二原発」(日本原子力発電(株)、以下日本原電)再稼働の危険性をとても熱く語っていたことが印象に残っています。私を含めてですが、その名前を初めて聞く読者も多いと思います。少し、解説をいただけますか。

 村田 メディアの方がそれでは困ります。(笑)都民はもちろん、日本国民は今、この再稼働阻止に全力を注ぐべきだと私は思っています。「東海第二原発」(日本原電)は別名「東京原発」とも言われています。その理由は東京からわずか110kmしか離れていないので、一度事故が起これば、最悪の場合は首都機能が麻痺し、日本の命運を左右することになるからです。(首都圏壊滅≒国家壊滅)

 この再稼働に関しては多くの問題点があります。しかし、最大のものは、再稼働を決めた「原子力規制委員会」というのは、「原子力の安全そのものには責任をもたない」ということを公言している組織だということです。このような組織に再稼働を認可する権限を与えるなど無責任・不道徳の極みです。

爆発後322分(約5時間)で、東京に放射能が到達します

 多くの問題点のうち、ここでは代表的なものを3つお話申し上げます。

(1)「あまりにも近い」:東海第二原発から東京駅まではたった116kmしかありません。爆発後322分(風速毎秒6mで約5時間)で東京に放射能が到達します。30km圏内に約100万人、150km圏内には3,000万人、250km圏内には5,000万人が少なくともいます。

 一方、福島原発事故の時に、近藤駿介原子力委員長(現・NUMO理事長)がさらなる事態の悪化が発生した場合、250km圏内を避難対象としたメモが明らかにされています。

(2)「あまりにも古い」:東海第二原発は、日本最古の沸騰水型原発です。原子力規制委員会は本来の寿命40年(原発寿命の世界基準は30年)を根拠が曖昧なまま、さらに20年延長することを認可しました。

 しかも、2011年3月11日の地震津波で被害を受けて傷んでいる恐れがあるのです。電源盤も非常用発電機もいまだに地下にある古い設計で、津波にとても弱いと言われています。

(3)「あまりにも貧乏」:日本原電は、安全対策を施す「工事資金」が自前で調達できません。再稼働にあたり、3,000億円(2019年3月5日付毎日新聞朝刊)の借金を予定しています。そのうち、東京電力が1,900億円を用立てることになっていると言われています。(東電は事実上の国策会社になっているので、そのなかには国民の血税が含まれる)それほど、日本原電は経済的に頼りない会社で、再稼働認可の要件である「経済的基礎」を満たしていません。もし万一事故が起きた場合、まともな対応ができる、経済的、人的基盤がまったくないと考えられています。

 さらに、東海第二原発の近くには原子力施設がたくさんあり、連鎖重大事故で放射能を大量放出する危険性が指摘されています。わずか2.8kmに「東海再処理工場」があり、大量の高レベル廃液、プルトニウム溶液が貯蔵されています。ほかにも、東海村には、JCO、原研、核燃サイクル研究所、三菱原燃などが集中しています。

 では、なぜこのような認可が行われたのでしょうか。それは明解です。日本原電には、東海第二原発しかもう残っていないからです。しかし、一企業救済のために、都民や日本国民の生命、首都圏壊滅≒国家壊滅の危険性を顧みないことは許されません。ここでも、無責任・不道徳がまかり通っています。本来、脱原発にともない、必要とされる関係者の生活権の保障には、原発を国策として推進した国の責任を度外視することはできないはずです。

民事・軍事を区別しない「地球の非核化」を急務の課題に

 ――ここから、少し原発問題そのものからは離れて、その背景にある「日本病」に入っていきたいと思います。先生には『原子力と日本病』(朝日新聞社)という名著があります。約17年前、福島原発事故を遡ること約9年前に出版されました。この本を読んだ多くの読者が、「福島原発事故は“想定外”などではなく“人災”だったことがわかった」との感想をもったと言われています。まず、この本を書かれた動機からお話いただけますか。

 村田 私は、スリーマイル島原子力発電所事故(1979年3月28日)やチェルノブイリ原子力発電所事故(1986年4月26日)などを通して、原発を初めとする原子力関係設備の存在がいかに危険であるかを強く認識しました。人類はチェルノブイリ原子力発電所事故を契機に原発廃止の決断を行うべきであったのに、その機会を失っていました。こうした観点から、私は民事・軍事を区別しない「地球の非核化」を急務の課題として捉え、その根底を支え、行動を生み出す「新たな価値観」を提唱しようと思いました。

 また、私は1973年に一等書記官として赴任していたエジプトのカイロでエネルギー問題に関心をもち(当事は石油不足で、産油国の鼻息が非常に荒かった)、その後、アフリカのセネガル大使(1989年‐92年)の時に太陽エネルギーのプロジェクトを立ち上げ、スイス大使(1996年‐99年)に赴任しました。太陽エネルギー先進国であったスイスでは、「未来の世代の代表」を名乗り、スイス国内およびフランス、ベルギー、イタリアなどの近隣国においても数多くの講演を行いました。それら一連のことが『原子力と日本病』を書く動機につながったのだと思います。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>

村田光平(むらた・みつへい)
 1938年東京生まれ。1961年東京大学法学部を卒業後、2年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授、現在、東海学園大学名誉教授、アルベール・シュバイツアー国際大学名誉教授。
 著書として、『新しい文明の提唱‐未来の世代へ捧げる‐』(文芸社)『原子力と日本病』(朝日新聞社)『現代文明を問う』(中国語冊子)など多数。

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