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2019年04月08日 07:03

疫学研究、介入試験等で「食の予防効果」は証明されている 商品開発のポイントは「機能性+美味しさ」(中)

早稲田大学
ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所 ヘルスフード科学部門  研究院 教授 矢澤  一良 氏

 ―研究会では、QOL向上の観点から機能性食品の利用を啓発されていますが、QOLを高めるために欠かせない要素とは何でしょう。
 矢澤 まずは、消費者に機能性食品を利用してもらううえで欠かせないのは「食育」です。厚労省と農水省が策定した「食事バランスガイド」というものがあります。これは主食、副菜、主菜などを逆ピラミッドのコマのかたちで示していますが、菓子や嗜好品は食生活のなかで楽しみとして捉え、食事全体のなかで適度に摂る必要があることから、コマを回すヒモ(原動力)の役割があるとされています。食生活を楽しいものにする潤滑油といってもよいでしょう。これをもとに文科省が教育現場などで食育を行っているのです。

 食育基本法では、体育(体)・知育(脳)・徳育(心)を健康の三原則と位置付けて、それを支えるのが食(栄養)としていますが、海外ではブレインフードやムードフードという概念があります。たとえばムードフードは、情緒的なものを食事でコントロールすることですが、ギャバ、DHAなどを使って、うつ病などに対する疫学調査や介入試験が行われています。日本では臨床研究で、学生にDHAと大豆油を摂取させた後にストレスを負荷してキレやすさを比べていますが、DHA群は統計的に有意差をもってキレにくいことがわかりました。

 食品の機能性では、エネルギー源や生体構成成分を補給する一次機能(栄養機能)と、味覚や嗜好などに影響する二次機能(感覚機能)、生理機能を調節し、生体を防御する三次機能(生体防御機能)があることはご存知のことと思います。最近は健康ブームで、疾病予防が期待できる三次機能に注目が集まっていますが、食事を美味しく、楽しく食べるためには、二次機能の味覚、嗅覚、視覚などの五感の要素が重要になるのです。

 病院などでは嚥下機能や咀嚼機能が低下した高齢者に、とろみを加えた液状の食品を提供する場合がありますが、これだと味も素っ気もないものになってしまい、食べる楽しみがありません。同じ機能でも美味しく食べられれば脳に影響してリラックス効果がありますし、そのことで血行を良くして免疫力も上がります。つまり二次機能は健康においても軽視できないのです。これを「五感栄養学」と呼んでいます。

 ―五感に訴えるものとして、矢澤先生は企業に「機能性おやつ」の開発を呼びかけています。なぜ今「おやつ」なのでしょうか。
 矢澤 私は間食を勧めています。食事でご飯を食べると血糖値が急激に上がりますが、小腹がすいた時におやつを食べると血糖値の上昇を緩やかにします。ですから1日のトータルなカロリー量は変えずに、食事の回数を3食から4食、5食にした方が血糖値の急激な上昇、つまりインスリンの過剰分泌を抑えることができるのです。

 そのためにも間食を摂った方が良いのですが、人工甘味料や着色料が入ったお菓子を食べていたら元も子もありません。健康に配慮した太りにくい素材が入ったお菓子、血糖値が上がりにくいおやつなどの“機能性おやつ”を開発することがポイントとなります。

 ある調査会社が行った間食に関する消費者調査では、間食が良いことだと思っている人は1,595人中1,049人(65.8%)いましたが、良いと思っている人に「罪悪感があるか」を聞いた結果では、6割の人が「ある」と答えています。間食のプラス効果では、「ストレス解消」(63.3%)、「リフレッシュ・気分転換」(61.8%)、「小腹を満たせる」(57.6%)など。逆にマイナス効果では、「肥満の原因になる」(70.5%)、「つい食べ過ぎてしまう」(58.1%)、「カロリーの過剰摂取になる」(57.5%)などが上位に挙がっています。

 この結果からわかることは、食べたいと思いつつも健康に悪いという罪悪感がない交ぜになっている様子が窺えます。ですから健康に良い機能性おやつ、ヘルシースナッキングのようなジャンルをつくっていくことも、食品企業の商品開発の課題といえます。妊婦さんだったら葉酸やDHA、カルシウムが豊富なお菓子、高齢者だったら生活習慣病や認知機能を改善する栄養成分を入れたものなど、子どもから高齢者まで、その世代にあった機能性成分を添加したおやつ、惣菜などを開発するのです。

 スーパーやコンビニなどで機能性ふりかけ、機能性ドレッシング、機能性ドリンクといった商品が売られるようになれば、罪悪感なしに利用することができるでしょう。食べ物は、どの栄養成分を摂れば良いのか、どれだけ摂れば良いのか、という問題に加えて、いつ摂れば良いのか、というタイミングが重要です。夜に糖質を摂ると血糖値が急激に上昇して糖尿病になりやすくなりますが、夕食前におやつ(間食)を摂れば空腹感を満たし、血糖値を上げにくくします。また、その人の年齢、性別、体質、体調、季節や環境などの違いを考慮して必要な成分を取り入れるという考え方が重要になります。これを私は「知的食生活」と呼んでいます。

(つづく)

<プロフィール>
矢澤  一良(やざわ・かずなが)

早稲田大学 ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授。1972年、京都大学工学部工業化学科卒業。ヤクルト本社・中央研究所入社、微生物生体研究室勤務。 その後、(財)相模中央化学研究所に入所、東京大学より農学博士号を授与される。2000年、湘南予防医科学研究所設立。02年4月、東京水産大学大学院(現・東京海洋大学大学院)水産学研究科ヘルスフード科学(中島董一郎記念 キユーピー(株))寄附講座客員教授。その後、東京海洋大学「食の安全と機能(ヘルスフード科学)に関する研究」プロジェクト特任教授を経て、現在、ナノ・ライフ創新研究機構 規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 研究院教授。予防医学、ヘルスフード科学、脂質栄養学、海洋微生物学、食品薬理学を専門とする。

 

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