2024年05月03日( 金 )

「遊べる温泉都市」別府、交流人口続伸中!(前)

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 別府市が公表している「別府市宿泊者数」平成29年速報値によると、2017年4~6月の3カ月間の宿泊者数は56万3,251人を記録。前年同期の40万2,420人から16万人以上増加した。外国人宿泊者数も上昇基調で推移。別府市の観光産業への取り組みから、地方創生のヒントを探る。

温泉都市としての地力

有形文化財や近代化産業遺産にも登録された「竹瓦温泉(たけがわらおんせん)

 温泉都市として、別府市が持つ地域ブランド力は高い。1879(明治12)年創設で、登録有形文化財や近代化産業遺産にも登録された「竹瓦温泉(たけがわらおんせん)」。唐破風造(からはふづくり)の豪華な屋根をはじめとするレトロな雰囲気が魅力の市営の共同温泉だ。このほかにも、泥湯が有名な別府温泉保養ランドなど、多種多様な温泉を一度に楽しめるのも別府市の強みといえる。

 別府市HP上で公開されている最も古い観光統計は2008年のもの。08年当時の別府市への観光客数は1,151万8,360人。九州圏内からの観光客が最も多く、次いで関東圏からとなっている。15年になると、観光客数は879万7,440人と08年時と比較すれば減少しているが、前年(14年)比では63万2,375人の増加としている。08年と15年とを比較した際の大きな違いは、観光客の出身地。九州圏内からの観光客が最も多いのは変わらないが、次いで多いのが韓国を筆頭とする海外からの観光客だ。公表されている13~15年の外国人観光客の推移を見ると、13年は25万1,302人、14年は33万6,332人、15年は43万7,764人と年間8~10万人規模で続伸している。

 上伸する国内外からの交流人口。これを支えているのは、別府市が一丸となって取り組む「遊べる温泉都市構想」の実現だ。

積極的な企画立案と情報発信

 16年11月、「遊べる温泉都市構想」の取り組み第1弾として『湯~園地(ゆ~えんち)』計画が発表された。計画の概要は動画サイトYouTubeで公開され、市内の遊園地の協力を得て、本物の観覧車やジェットコースターに計12トンの温泉を張るなどしてつくり上げた、誰も見たことがない温泉遊園地―『湯~園地』のイメージ動画は、わずか3日間で再生回数100万回を突破した。

 これに先駆け、長野恭紘別府市長はYouTubeで「公約ムービー」を公開していた。市長が動画で公約したのは、『湯~園地』の再生回数が100万回を超えた場合、市が責任を持ってこれを実現するということ。
 こうして長野市長を筆頭に、別府市は一丸となって『湯~園地』の実現に向けて動き出した。課題は、温泉の確保と資金調達。
 世界一の源泉湧出量を誇る別府温泉で、温泉を確保すること自体は難しくない。各温泉施設で営業時間外に自噴し、使われずにそのまま捨てられる「廃湯」の量は相当なものになる。市内の温泉施設の協力により廃湯を活用することができ、これにより温泉の確保はクリアできた。

 これに対して容易ではなかったのが資金調達だ。市は『湯~園地』開園に際して、市税の投入は一切しない方針を立てた。その実現のために市が取った方法の1つが「クラウドファンディング」だ。より多くの支援に期待できる一方で、不特定多数から支援を引き出せるような高い提案力が求められる取り組みだったが、市が当初掲げていた目標1,000万円に対して、ニュースやSNSを通じて計画を知った世界中の人々から集まった資金は8,182万8,088円にも上った。 17年7月29日の開園から31日の閉園までの3日間で『湯~園地』を訪れた人は9,000人以上。市の掲げた「遊べる温泉都市構想」は多くの人たちから歓迎され、最高のスタートを切ったといえる。

(つづく)
【代 源太朗】

 
(後)

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