2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

M&A戦略でグループ躍進の礎を築く(中)

西部ガス(株)(元代表取締役会長) 取締役相談役 田中 優次 氏

100億円規模の売上が見込める事業

西部ガスひびきLNG基地

 ――ガスの商社的なものですね。 
 田中 これは、LNGの基地をもっていないとできない事業です。幸い、ひびきには土地がたくさんありますから、タンクを最大4基までつくることができます。これをハブ基地化する可能性が見えてきました。

 ――これがスムーズにいけば、大きな売上が見込めますね。
 田中 今、流れは弊社にとって良い方向に動いていると感じています。北方領土問題は、政治マターですが、経済的にはロシアはLNGを売って利益を上げたいわけです。これをうまくやることによって、政治的な関係改善にも貢献することができるのではないかと思います。

 先日、私もロシアを訪問し、ノバテク社の幹部の人たちと話をしてきましたが、彼らも非常に乗り気でした。これから、詰めるべき課題はいくつもありますが、年度内には決着したいと思っています。MOU(基本合意書)は結びました。

 これがうまくいくと、つくり始めて約3年でタンクができますので、24年ごろには竣工します。稼働後の売上は50億~100億円規模になると見込んでいます。また、基地が稼働すれば、ノバテク社だけでなく、いろいろなところからオファーが来るでしょう。すでに、いくつかの話もいただいています。

 ――LNG買い付けの権利を得るための保証金はいくらぐらいですか。
 田中 具体的なことはこれからですが、いずれにしても、ロシア側は100万tでも200万tでも売り込みたいわけです。販売については、世界中にいろいろな会社がありまして、そういうところが売ってくれます。

 こちらのほうが発電よりも先に来るのではないかと考えています。発電所も決まってから着工となるので、完成、稼働までには数年を要します。そうなると、実際に発電による売上は、26年以降になるかもしれません。

北部九州は可能性がある場所

 ――今後のM&Aについては、どのように考えていますか。
 田中 いろいろなことをやってみようという話もありますが、エリアでは福岡、とくに北部九州はまだ可能性がある場所だと注目しています。

 太平洋側は30年以内に地震発生やそれにともなう津波のリスクがあるとされています。何かを行おうとするとき、そういうところには事業拠点などいろいろなものをつくりづらいという話もあるなかで、今注目されているのは北部九州、とくに日本海から東シナ海の沿岸地域で、これからまだまだ伸びていくだろうと思っています。

 人口も福岡だけが増えていくという傾向は、まだ続くとみています。

 ――西部ガスグループ全体でガスエネルギー以外の事業領域を広げているようですが、住宅関連についてはいかがですか。
 田中 マンションは飽和状態になりつつあり、今後は戸建需要が伸びるのではないかと見ています。08年に買収した九州八重洲(株)(旧・九州八重洲興業(株))では、戸建住宅と宅地開発を手がけています。

 私が手がけたM&Aでは赤字の会社はほとんどありませんが、あえていえば、九州八重洲は赤字が続いていました。ただ、赤字の内容を分析した結果、田地を買って宅地に造成するなど独自のノウハウをもっていましたし、コストダウンの余地もありましたから、買収によって何とか解決できると判断しました。その後、約3年で黒字化することができ、5、6年経つと、1億円の利益を出せる会社に成長しました。

 同社は、早い段階から海外展開も始めています。マニラでいろいろな事業を展開しており、うまくいっています。さらに、不動産関係の事業をタイでも始めました。今後はベトナムなどでの展開も視野に入れています。これから海外は有望な市場だと思います。

 実行してみないと、「何をやるべきか」ということは見えてこないと思います。失敗しても次のプラスになります。それが大事なのです。

 ――九州八重洲は潜在能力をもっていましたから、ここの買収は良かったと思います。
 田中 そうですね。この買収にあたっては反対の声もありました。しかし、「ぜひ」と言って、私が推し進めたという経緯があります。

 ――事業領域を拡大することで、人材が育つフィールドも増えますね。
 田中 さまざまな分野を経験することで、人材が幹部社員として育つ環境にもなります。加えて、今から新入社員を雇用して、専門家を育てる時間的余裕はあまりありませんから、専門的なことを身につけた人を外から雇うことで、求められるスピードに対応していく必要もあります。

(つづく)
【宇野 秀史】

<COMPANY INFORMATON>
西部ガス(株)
代 表:酒見 俊夫(代表取締役会長)
      道永 幸典(代表取締役社長)
所在地:福岡市博多区千代1-17-1
設 立:1930年12月
資本金:206億2,979万円
売上高:(18/3連結)1,966億2,100万円
U R L:http://www.saibugas.co.jp

<プロフィール>
田中 優次(たなか・ゆうじ)

1948年2月生まれ、青山学院大学経営学部卒業。72年4月西部ガス(株)入社、98年7月総務広報部広報室長就任。2000年6月同役職で理事就任、02年6月取締役、05年6月常務歴任。07年6月専務取締役、08年代表取締役社長、13年4月には代表取締役会長歴任。19年4月取締役相談役に就任、6月には取締役を退任して相談役に就任予定。

 

(前)
(後)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。

現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募はこちら(nagaue@data-max.co.jp)まで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事